第213話 清水さんの過去

リヴァイアサン討伐と交易を終えてカケージ港へ戻ると、魔石機関車がルーガ帝国の帝都タミンスまで走っていた。


物凄く早い訳じゃ無いが、乗ってるだけで帝都まで着くのは楽だ。


マンジュウさん

「簡素な作りですが、部品を作るだけでも色々な機械が必要ですよね」

「相当前から準備してたか、凄い人が一気に作ったか、一部の部品にはオリハルコンが使われてるから、これはアイスさんが作ってますよね」


『頼まれた物に加工した物も含まれてたかもしれない、城壁造りの時に言われたのかな?覚えてないや』


センベーさん

「魔石機関車とか、山根さんや他にもリスタートしてる人が作ったんじゃない?」


確かに魔石を燃料にする技術はもしかするとリスタートして初めから知っている人が作ったのかな。

ルシーセさんが俺に色々な物を作っている事を説明しなかったのは、不信感が残るな。


帝都でルシーセさんに会うと交易の成功を感謝され、魔石を燃料にする技術を日本人が開発して、日本人が設計して色々な物を作っていると話してくれた。

開発した人達の名前を聞いたけど知らない人達だな。


スタンピードまでの残りの時間で、城壁を高くして欲しいのと、色々な機械部品を作って欲しいのと、城壁に設置してあるバリスタの部品をオリハルコンに変えて欲しいとか、時間があれば城壁を拡大して欲しいと沢山の事を言われた。


7月に入るまでは作業をするけど、最後の1ヶ月はやる事があるので手伝えないと言った。

スタンピードを撃退してもダンジョンを破壊出来なかったら、結局最後は物量で崩壊してしまう。

転移ゲートが沢山あるダンジョンの攻略を放置して、此処に居るけど、あのダンジョンだけはクリアした方がいい気がする。

なんで?と言われたら皆んなに理由なんて上手く説明出来ない。


帝都へ戻ったら清水さんが呼んでいると、アケミさんに言われた。

アケミさんの話だと大分元気になったそうだ。


清水さんはホワタと暮らす為に、倉庫で寝泊まりしている。

倉庫の中へ入るとホワタが俺を睨んでいる。


『お久しぶりです、清水さん』


清水さん

「お久しぶりです佐藤さん、あ、あの、お話がしたかったです」


清水さんと俺とホワタは、倉庫の床に敷いてあるカーペットの上で、丸いテーブルを囲んで胡座をかきながら紅茶を飲んでいる。


清水さんは俺が行った行為を見て、ショックを受けた事を話してくれた。

俺が楽しそうに人を殺している様に見えたらしい、いや俺は実際楽しんで人を殺しているかもしれないと話した。


魔力が上がると人格というか何かが変化するというのは、話してあったので清水さんは「理解しようと思ったけど怖かった」と。

俺も他の方法があったはずで、『あんなに人を殺す必要は無かった』と言った。

清水さんが自身の見た怖かった話を喋り続けている。


清水さんは、それから自身の生い立ちの話をしてきた。

俺は普段、日本に居た時の話は聞かない事にしている。

異世界に行きたいなんて人間は、実際に異世界へ来ても帰りたく人は、皆んな日本での生活が嫌だったり辛かったんだ、と思っている。


せっかく異世界に来て日本の辛い思い出なんて、聞く必要も無いし俺も話したく無いから。

でも清水さんは聞いて欲しそうにしているから、俺は黙って話を聞いた。

彼女はまだ学生だけど、辛い人生だった。


夕方から話していたが、気付くと次の日の朝になろうとしていた。


清水さん

「アイスさんと話せて良かったです、スタンピードを乗り越えて日本へ皆んなが帰れる様に手伝いますね」

「全てが終わったら、また話を聞いて下さい」


『うん、清水さんにホワタという友達が居て良かった』


清水さん

「ホワタは大親友です」


俺は何となく彼女が日本へ全員を帰したら、リスタートを望んでいる気がした。

やり直して異世界人を助けたいんだろう。



ただリスタートしたらスキルを1つ失う。

リスタートした彼女がホワタと出会ったら、その場で殺される可能性もある。

俺は彼女を日本へ帰すのは躊躇うが、リスタートもさせたく無い。

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