第188話 カケージ港の雨

プロトマト国が何か理由を付けて物資や日本人の輸送を遅らせている。

時間に余裕があったら交渉して粘り強く説得する方が、犠牲者も出ないし良いんだろうけど、輸送や準備の時間を考慮したら、待つ事は出来ない。


俺はカケージ港へ馬に乗って途中まで行き、馬で近くまで来たら降りて、歩いて港町に入る。

今の服装は見窄らしく汚い格好だ。


カケージ港は大雨が降っていて、冬なので寒そうだ。

寒いというのは分かっても反射スキルを使っている時は、寒くて手が凍えるとか足が震えるとかは無い。

見た目は、ずぶ濡れになった薄着のボロ布に裸足という、ストロングスタイルだったからか、男の子が近寄って来て俺に厚手の布を渡してくれた。


男の子を見て涙が流れてしまった。

ナチャチャさんだ、懐かしい若いなぁ。


ナチャチャさんはプロトマト語しか喋れないみたいで、ニコリとした笑顔で布をあげるというジャスチャーをしていた。

「ありがとう」とルーガ語で言いジェスチャーで感謝を伝えて、ナチャチャさんに無理矢理プロトマト国の金貨を50枚だけ渡した。

滅茶苦茶驚いた顔をしている、俺は普段お金を使わないから今の物価は分からないけど、何年か余裕で暮らしていけるだろう。


まさかナチャチャさんに会えるとは思わなかった。

本当は今直ぐ保護したいが、今は家族と平和に暮らして欲しい。

プロトマト国の市民を移動させる時は絶対保護する。



カケージ港を支配している商人は居住している屋敷を転々と替えているみたいで、居場所の特定が難しい。

隠蔽スキルを持っている警護の人間も居るから、余計探すのが困難だ。

ただ彼の家族は特定の城のような屋敷に住んで居るので、そこへ向かう。


塀の高さが15メートル以上ある屋敷には警護の人間も沢山居るようだ。

屋敷の塀の外装は煉瓦だけど、中には鉄板が何枚も重ねてあるみたいだ。

ここの塀であれば中で火魔法を使っても、外に飛び火しないから好きに出来そうだ。


屋敷の出入口は前準備で調べて貰ってた数は4つだったけど、やっぱり隠し通路が有りそうな雰囲気だな。

商人本人、その家族に船で別の国へ行かれたら今の段階だと追うのは難しい。


俺は屋敷の裏門にいる門番へ乞食の振りをしてお金を要求する。

プロトマト語が喋れないので、言葉は話さずジェスチャーで恵んで下さいと、しつこく何度も頼む。

プロトマト語で罵られた後に、棍棒で体中を殴られる。

反射スキルを使っているとマズいから、殴られる時だけ反射スキルを使わない。


雨の寒さと全身の痛みがダイレクトに来る。

久しぶりに痛みを感じるが、骨が折られているはずなのに結構冷静に受け止められている。

痛いけど、耐えられない痛みじゃ無いな。

シャルパック国での虐待の方が余程痛かった。


全身を殴られて動けなくなった俺を担いで、門番は少し離れた川に俺を捨てる。

雨で流れの速くなっている川に落とされてから、俺は回復魔法と反射スキルを使う。

周りの水を凍らせてオリハルコンの階段を造り川から出る。


暫くして門番が交代したら、また俺は物乞いをしに屋敷の裏門へ向かう。

また殴られて同じように川へ捨てられる。


4度目に裏門に居る2人の門番に物乞いをしたら彼等は俺に銅銭を1枚渡してくれた。

俺はルーガ語で「ありがとうございます」と言った。


「おまえルーガ語を喋るのか?この港の物乞いじゃないのか?」


『私は全て金品を騙されて港に捨てられた商人です、此処が何処かも分かりません』


兵士さんはルーガ語を話せるみたいで、俺は船が難破して近くに漂着した人間で、それからルーガ語が喋れる人達に、こき使われて数年暮らしてたと話した。

俺は南の大陸にあるパパレ国の出身だと言ったら、兵士がビックリして詳しく話を聞いてきた。


「南の大陸から遭難して来た人間は、客人として丁重に扱ってくれるんだ」

「ちょっと確認を取ってくる待っていろ」


20分程、待つと身なりの良い男が流暢なルーガ語で質問してきた

「パパレ国から来たと聞いたが、場所は何処ら辺なのか分かりますか?」


俺はシャーザ国の西側にある国で西には砂漠が広がっているとか、色々な話を昔に見た記憶を頼りに説明した。


身なりの良い男

「間違いないですね、この方は南の大陸から来られた人のようだ」

「この街の頭領様は少し離れた場所に居ますが、直接貴方の話を聞きたいと思われますので紹介します」


マジか屋敷の中に入れて貰おうと思っていたけど、直接会えるなら家族を捕縛しなくても良いのかな。

作戦と違うけど、街を支配してる商人に会った方が良いよな。


身なりの良い男

「南の大陸からプロトマト国に人が漂着して来るのは40年以上振りですね」

「頭領様は、いつも南の大陸の話を聞きたがっておりました、いつか南の大陸と交易が出来ればと夢を語っていたのですよ」


一般人は使うのが許されていない馬車に乗せて貰って、俺は頭領という港を支配している商人の所へ向かっている。

頭領に直接会えるなら水魔法で捕縛出来そうだ。


桟橋から近い、思ったより小さな邸宅に到着した。


「鑑定だけ先にさせて貰いますね、場合によって魔法とスキルを遮断する枷を付けさせて貰います」


「魔法もスキルも持って無いんですね、魔力は、、、80000!?」


魔力を測られると隠せないから厳しいな。

警戒されたら会わせて貰えないかな。


捕縛したいけど、場合によって周囲も被害を受けるが屋敷を消滅させるか?

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