第172話 異性体

俺とマンジュウさんがカケージ港を食べ歩きして、観光みたいに意外と楽しんでいたら日本人3人組に話し掛けられた。


元々3人はもっと東の地域に転移して来たが、今はカケージ港を拠点にして日本へ帰る仲間を集めているそうだ。


怪しい、日本へ帰る方法なんて転移して半年ぐらいで見つけるのは難しいよ、沢山の人が探し続けてた前回の異世界を経験して分かっている。

3人は自信満々で日本へ帰れると言ってる。


もしかすると本当に帰る方法を見つけたのかもしれないし、何故こんな勧誘をして来たのか知りたいから付いていく事にした。


「2人がどんなスキルを持っているか知りたいから鑑定させて欲しい」


俺とマンジュウさんは「鑑定するのは問題無い」と、鑑定スキルを持っている男に触れて貰った。

今の俺は触れないでも鑑定が出来るので、3人がちょうど近付いたので鑑定した。


鑑定、筋力強化、索敵、火魔法、闇魔法を持ってるな。

どれもレアで使い勝手の良いスキルだ、闇魔法とか持っている人が殆ど居ないスキルだ。


「筋力強化とスキル無しか、スキル無しで異世界は大変だろうオジサン」


俺がスキル無しと鑑定されたので、3人の若者は少しフランク、悪く言うと舐めた態度になった。


『最近落ち着いたけど、少し前は絶望してました』

マンジュウさんも、俺の言葉にはウンウンと強く頷いていた。


3人は近くに日本人だけで家を借りて住んでると、そこで日本へ帰る方法を教えてくれるらしい。

スキル無しの俺なんて勧誘してもメリット無いだろ。

それとも日本人は全員助けてるのかな。


3人が連れて来てくれた家を見て驚いた。

壁や建物だけを見ても、所々思い出せる壁の色合いや柱の形状だ、ここが例の地下室があった家だ。


俺はこんな偶然があるのかと思うのと、3人に対して警戒度を上げた。


「結構大きい家だろ?部屋数もあるし、建物に囲まれた中庭には井戸もあるから便利よ」


俺とマンジュウさんは広い部屋に通されて、暖かい紅茶を出されて、ゆっくりしてと言われた。

椅子に座って紅茶を一口飲んで、甘くは無いけど美味しいなと思って一息ついた。


「日本ではどんな仕事をしてたの?」


「異世界ではどうやって生活してた?」


色々と聞かれたが、日々生きるので精一杯だったと、特に異世界で役立つ技術は持ってないと話した。


「どうしようかー」


ああ、これは俺達を殺そうとしてるのかな、生き死にを経験してきたから見えない殺気が何となく分かるようになってるな。

スキルは手に入れてないのに。


3人以外の人が部屋に入って来た。

「山根さん、2人のオジサンを勧誘したんですよ」

「身なり良いですスキルは無いけど、どうしようかと思っていて」


山根さん

「バカッ!そいつが異性体だ!」

山根さんは俺を見るなり部屋から急いで逃げ出した。


異性体?

3人の若い男も部屋から逃げようとしたので、水魔法で凍らして動きを止めた。

山根さんを探そうとしたけど素早い動きで、もう見えなかった。

山根さん年齢も高いしスキルが無いはずなのに、速いな。


マンジュウさん

「ここが地下室のある家?彼等には聞きたい事が色々あるね」


3人の若い男達は顔面蒼白で、歯がカタカタと震えている。

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