第171話 カケージ港

山口さんやヴァルガさん、彼等はルーガ帝国へ直接向かってスタンピードに対する準備と暫く定住する為の場所作りをする。


俺とマンジュウさん、後は素早く動ける騎兵5000人はプロトマト国へ向かっている。

プロトマト国はスタンピードに対しては懐疑的でも俺達の国と戦争をしたい訳じゃ無いので、騎兵の進軍に対しては攻撃してくる等の抵抗は無かった。

寧ろ、こちらがビックリするぐらい友好的だ。

プロトマト国は裕福な国らしいので、食料や物資の確保の為にも交渉は必要だ。


俺達も掠奪や市民を襲うような兵士は避けて、俺の命令を忠実に守る兵士だけ連れて来ているので、プロトマト国と争いも無く問題無く移動出来ている。


プロトマト国の首都へ向かう前に、前回の異世界で壊滅的に壊されていた港町のカケージ港へ向かっている。


マンジュウさん

「前回の異世界ではカケージ港の地下室に大陸を調査していた日本人の拠点があったんですよね?」


『あった、調査していた日本人を見ていないから、何人居たのか分からないし何をしようとしてたか知らない』

『けれど長山さんもプロトマト国に行ってから人が変わったらしいし、調べてないが地下室には沢山の資料があったんだよ、前回の異世界では重要な場所だったと思う』


カケージ港には1週間もしないで到着した。

歩くよりも馬に乗ると移動のスピードが全く違うな。

俺も多少は馬に乗れるようになったけど、下手なのでマンジュウさんと一緒に乗っている。


俺の知っているカケージ港は破壊されていて瓦礫の山だったが、

目の前に広がるカケージ港は沢山の桟橋に大小の船が何百隻も滞泊していて、倉庫も商店も所狭しと並んでいて1番活気がある街に見えた。


騎兵5000人はテントを街の外に張って野営を予定していたが、問題無く全員が宿に泊まれて馬も厩舎に入れる事が出来た。

町外れの街道の近くだが、5000人の騎兵を宿泊させる施設があるだけで凄い規模の街と分かる。


マンジュウさん

「異世界で今まで見た中で1番の街じゃないでしょうか?」


『何十万人も住んでるのかな?大陸で最大規模の港らしいよ』

『馬で街の中は移動出来ないそうだから、徒歩で地下室があった場所へ行こう。』


何時間も歩き続けているのに街並みが途切れないなんて初めてだ。

歩いていて思ったのは今まで殆ど見掛けなかった、動物の耳が付いてる亜人やエルフやドワーフっぽい人も普通に歩いている。

マンジュウさんは初めて見たからか少し興奮していた。


地下室の位置を覚えてたつもりだったが、街が瓦礫じゃ無いだけで場所が分からなくなってしまったかも。


『確か此処らへんだと思うんだけど』


マンジュウさん

「今日は諦めて近くの宿を探して泊まりましょうか、明日の朝からまた探しましょう」


俺とマンジュウさんの服装はそれなりに良い物を着てたし、お金もある程度は持っていたが、身分を隠して泊まろうとしてたからか汚い宿しか泊まれなかった。


宿で食事はお金を払えば提供してくれるそうだが、臭いも見た目も不味そうで他の場所で食べようと2人で決めた。


これだけ規模の大きい街なら美味しそうな物もありそうな気がする、散策をして食べ物を探すのにワクワクしてる俺達だった。

それにルーガ語がここまで通じる街も珍しい、知識人だけじゃなく一般の人も片言なら通じる人が多い。


マンジュウさん

「私もルーガ語を勉強しているんだけど、アイスさんの様に流暢には話せないよ」


『俺も初めは全然話せなかったよ』


俺とマンジュウさんが匂いに釣られて、屋台で買った美味しい肉串を食べながら日本語で話して歩いていると


「2人とも転移して来た日本人ですか?」


日本語で話し掛けられたので、そちらを見ると何処かで見た事ある気がするんだけど、思い出せない若い男の3人組が話しかけて来た。


「日本へ戻る方法を知っているんだ、一緒に日本へ戻らないか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る