第76話 オリハルコンの船

最後に作る船には食料や物資を積まない。

俺が通販スキルで必要な時に出していくので、人が乗る場所だけを確保していく。


最後に残ってる2万人近い人達は、戦闘をある程度出来る人だけ残っているから退避しながらも上手く戦えてる。


『俺が前に出て一度魔物を殲滅します』

『先に船を出航させて下さい!殲滅し終わったら足下の海を凍らせて船に乗り込みます』

『近くに来たらロープを投げて俺を引っ張ってくれたら助かります。』


リベルさん

「任せろ、船が出たら直ぐに戻って来い」


センベーさん

「船が遠くに行き過ぎたら、船までの海を凍らせて船を止めていいからね」


船に全員が乗り込むまで、城門を開けて魔物を俺に引き付ける。

魔物はスタンピードのせいか元からなのか、殆どは俺を見つけたら一直線に襲ってくる。

一部の魔物だけは俺の戦いを見ると他の場所や人を襲い俺を避ける。

避ける敵の対処が一番難しい、空飛ぶドラゴンやガーゴイルが居ないか確認して、居たら俺が襲われるまで先に手を出さない。

空中を移動出来る敵に逃げられると船が襲われる。

ドラゴンは居なかったけど、ガーゴイルが3匹居たので逃げられる前に凍らせて炎の槍で殺す。


他に船が危険になりそうな敵が居ないか確認してから、最高温度の炎の海を周辺に出す。

オリハルコンで出来た物以外は敵も物資も溶けていく。

遠くの一部敵は逃げるけど放って置く。


皆んなでオールを漕ぎ、船は魔物が近付けない距離に離れたみたいだ。

俺も船に全力で戻る。

足下の海を凍らせて、その上を走って追いつこうと思ってたけど意外に滑る。

凍らせた足場に凹凸を付けて転ばないようにしたけど、転ぶ。

運動神経の低さは改善されないか、諦めてボートを出してオールを漕いで船に近付く。


波が凄くて、船が沖合で俺を待っててくれなかったら追いつけなかった。

甲板が高いのでロープ梯子を出して貰って登ったら、やっと皆んなに会えた。


センベーさん

「海を凍らせて来るなんて言うから、どんなカッコいい魔法で来るかと思ったら転けまくってましたね(笑)」


リベルさん

「転けた恥ずかしい姿を甲板から皆んなで見てたぜ(笑)」


素直に初めからボートで近づけば良かった。

ほんと恥ずかしい。

挨拶を交わす全員から、ありがとうと転けてたね、を一緒に言われる。



安全な位置まで船が離れたので、

今まで居た大陸がだんだんと小さくなるのを、甲板の上からずっと見ていた。


ジャガイモ村に残った五十嵐村長達は無事なんだろうか。

山口さんが調べに行ってからの消息は分からない。

村から避難した何万人という人達は長山さんが率いていた人達以外は見ていない。

地下室から船に戻った9人は無事なのか。

猫人族の人達とは、もう一度会いたかったが船は手に入れられたのかな。


マンジュウさんとアケミさんの墓は何年も過ごした、もう小さく見える大陸にある。

2人に向けて、俺が殺した人、目の前で死んでいった人達、目を閉じて亡くなった人を思い合掌する。


俺1人なら密閉されたオリハルコンの部屋で寝て、あのスタンピードの凄い大陸を探索できると思う。

地下室で見つけた謎の金属の塊は周りに誰も居なかったら、回復魔法を使っていたかもしれない。



センベーさんやナチャチャさん、船には2万人の人達が乗っている。

彼等が南の大陸で安全に暮らせるようになるまで、離れる訳にはいかない。

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