第31話 空からの襲撃

「ヒュイーーーーッ!!」


 甲高い声をあげながら急降下してくるレッサーワイバーンに、僕たちは身構えた。


「てやあああああっ!」


 パールが剣を振り下ろすも、空飛ぶレッサーワイバーンにひらりとかわされてしまう。


「あれぇ!?」


「ヒュイーーーーッ!」


 一撃をかわされて目を白黒させるパールに、レッサーワイバーンが口から火の玉を吐いた。


「パール、危ないっ!」

「うわっ!?」


 僕の声かけでパールがすんでのところで火の玉をかわす。


 だけどレッサーワイバーンは再び上昇して、今度は上空から火の玉を投下し始めた。


「危ない! リヒト・シールド!」


 町の人々を逃がしたジーニーさんが頭上にドーム型の光の壁を展開し、投下される火の玉を防ぐ。


「ありがとうジーニーさん!」

「ええ、だけどこれじゃあジリ貧だわ……!」


 両腕を掲げて光の壁を維持するジーニーさんの言う通り、上空から一方的に攻撃されては手の出しようがない。


 ……ちょっと危険な賭けだけど、僕がやるしかない!


「ちょっと、エリオス~!?」


 パールの肩から飛び立った僕は、翼を羽ばたかせて上昇する。


「レッサーワイバーン! 僕が相手だ!」

「ヒュルル?」


 よし、レッサーワイバーンたちの注意が僕に向いたぞ。


「ヒュイーーーーッ!!」


 空飛ぶフクロウの僕を捕らえようと、レッサーワイバーンたちが大口を開けて突っ込んでくる。


 それを僕はひらりひらりとかわしつつ、ウィンディカッターで着実に攻撃を加えた。


 確かに僕のひ弱な魔法ではレッサーワイバーンを倒す決定打にはならないかもしれない、だけど奴らの気を引くことはできる!


「それっ、ついてこい!」

「ヒュイーーーーッ!!」


 僕が急降下すると、レッサーワイバーンたちもまとめてついてくる。


「みんな、今だ!」


 そしてパールたちの前までレッサーワイバーンを惹き付けたところで、僕は地面すれすれで再び急上昇した。


「ヒュイイッ!?」


 僕の急速な飛行についてこれなくなったレッサーワイバーンが、勢い余って地面に叩きつけられる。


「地上でならフブキたちは負けないゾ!」

「はい、姉さん」

「「せーのっ、氷塊強打!!」」


 フブキとユキの二人が手元に形成した氷のハンマーで、レッサーワイバーンの一体を力一杯ぶっ潰した。


「わたしも! ブレイブスラッシュ!!」


 パールも赤い闘志をまとった剣ジークフリートで、レッサーワイバーンを三体まとめて切り裂く。


「ヒュイーーーーッ!!」


 これに恐れをなしたのか、残りのレッサーワイバーンたちが一目散に飛び去っていった。


「よくやったね、みんな」

「エリオスのおかげなんだゾ!」

「ありがとうエリオス!」


 フブキとパールにわしわしと撫でられて目を細める僕に、ジーニーさんがきゅっとくびれた腰に両手を添えてこんなことを。


「だけどエリオスさん、少し無茶だったんじゃないかしら?」

「これでも元勇者だからね、僕は」

「そう言われると敵わないわ」


 そして僕たちの周りはどっと笑いに包まれた。


 だけどこの襲撃、違和感を感じるな……。



 パロットシティーでの襲撃を遠隔で様子を見ていた者が一人。


「ちっ、しくじったか」


 手元の画面を引っ込めて悔しげに舌打ちをする、背中に翼の生えた鳥頭の男。


 そこへ同じように翼の生えた鳥頭の部下が飛んでくる。


「イカロス様! レッサーワイバーンたちが戻ってきましたが、いかがいたしましょう?」

「雑魚は適当に始末しておけ、ライズよ」

「はっ!」


 ライズがその場を引いたところで、イカロスと呼ばれた男は顔を歪めた。


「魔王様亡き今が新たなる頂点に立つチャンスだと思ったんだが……まさか邪魔者が!」


 魔族の頂点を目指すイカロスの私怨が向きつつあることを、エリオスたちはまだ知るよしもなかった……。

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