第28話 道中の勇者パーティー
新たな仲間を受け入れた僕たちは、一日お世話になった村を出て馬車で森を進む。
その新しく仲間になったフブキとユキなんだけど。
「はわ~っ、エリオスの身体モッフモフで気持ちいいゾ!」
僕はこのモフモフボディーをフブキにモフられまくっていた。
余談だけどフブキたちにも僕のことはエリオスと呼ぶようにしてもらっている。
モフられるのはパールで慣れてるからいいんだけど、ちょっと触りかたが乱雑じゃないかなあ?
痛っ、羽根が一本抜けちゃったよ。
いい加減ちょっと辛くなってきたかも。
そう思っていたところでフブキをたしなめたのは、双子の片割れであるユキだ。
「姉さん、そんな乱暴に触ったらエリオスさんが壊れちゃいますよ」
「なっ、エリオスって壊れるのカ!?」
そう聞いてすっとんきょうな声をあげたフブキが僕を解放する。
「ありがとうユキ。キミのおかげで助かったよ」
「礼には及びません。姉さんはちょっと力の加減が苦手なものですが、そこはちょっと大目に見てもらえたらと」
「ユキぃ、フブキだって力の加減はできるゾ!?」
フブキが不満げに口を尖らせると、彼女を含めた一同はどっと笑いだした。
「やっぱりみんな仲良しが一番だよね、エリオス」
「そうだねパール。あの二人も早速馴染んでるみたいで何よりだよ」
パールの華奢な肩に止まった僕は、こんな感じでほのぼのと語り合う。
しばらく馬車を進ませていた時だった、突然ジーニーさんが馬車を止めた。
「「はわっ!?」」
「姉さんっ」
急停止した馬車の上でみんながよろめいた――フブキだけはユキに抱き止められていた――ところで、ジーニーさんが杖を取り出して身構える。
「みんな気をつけて、何かいるわ!」
牛の耳をピクピク動かして警戒するジーニーさんと同調して、僕たちも警戒の糸を張った。
すると藪から飛び出してきたのは、二本足で立つトカゲのような奴らだ。
「リザードマンだ!」
「リザードマン?」
「見ての通りトカゲのような魔物だよ、パール」
「だけど武器を持ってるわ、みんな気をつけてっ」
ジーニーさんの言う通り、五人のリザードマンは皆大振りの鉈みたいな刃物を手にしている。
「ムシュルルル!」
「シャーーーーッ!!」
一方リザードマンたちは僕たちを見るなり、鉈を振りかざし襲いかかってきた。
「ここはわたしに任せて!」
まず前衛に出たのは、剣ジークフリートを抜いたパール。
「てやあっ!」
リザードマンの振り下ろした鉈を、パールが剣の一振りで弾き飛ばして。
「とりゃあ!」
丸腰になったリザードマンの一人を、パールが斬りつけて倒した。
「やったねパール、いい立ち回りだ」
『さすがですマスター』
「えへへ~」
「ちょっとパール! 照れてる暇なんてないよ!?」
僕の叱咤で我を取り戻したパールに、リザードマンが二人がかりで襲いかかる。
「――リヒト・ブレッシング!」
そこをすかさず後衛のジーニーさんが、パールに祝福の魔法をかけて強化。
「ありがとうジーニーさん! てやあああ!」
祝福の魔法で金色のオーラをまとったパールが、剣の一閃でリザードマン二人の胴をまとめて真っ二つにする。
「ムシュルルル……シャーーーーッ!」
残った二人のリザードマンが、パールを素通りして後衛のジーニーさんに向かい始めた。
「ジーニーさん!」
「ここはフブキたちに任せるんだゾ!」
「行きますよ、姉さん」
目配せしたフブキとユキがお互い手を握り合うと、フリーの片手から冷気を放つ。
「「
息ピッタリな二人のコンビネーションで放たれた冷気に、リザードマンたちはたちまち動きが鈍って氷漬けになった。
「おお、すごいじゃないか二人とも!」
「えへへっ、フブキたちのコンビネーションは最高なんだゾ!」
「姉さんとボクが揃えば最強」
ワイワイとハイタッチを交わすフブキとユキに、僕はほんわかとした気分になる。
僕の出る幕もなかったなあ。
「どうやらこれで全部みたいね」
「いやー、思ったより楽だったね~」
ジーニーさんの言葉で剣を納めて余裕綽々なパールに、フブキとユキが二人誇らしげに言った。
「これもフブキとユキのおかげなんだゾ!」
「これからもボクと姉さんも力になりますよ」
「うんうん! 二人とも強くて、わたしビックリしちゃったよ~!」
そう言ってパールは、フブキとユキに抱きつく。
「へへっ、くすぐったいゾ」
「…………」
あれ、ユキの様子がちょっと変。
なんていうかちょっとだけ戸惑ってる感じ?
リザードマンの死体も僕のアイテムボックスに収納したところで、僕たちは改めて馬車で進みだした。
仲間が増えたこの心強さ、勇者として仲間と共に旅をしていた頃を思い出すよ。
……そっか。パールが勇者である今、歴史は繰り返すんだ。
そんな風に想いを馳せて僕は、パールの肩でウトウトするのだった。
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