第11話 ウィードタウンでショッピング
ギルドを出た僕たちが続いて向かったのは、この町の服飾屋だ。
さっき町の人に聞いたら、この先にあるって言ってたけど。
「わたしの服を作ってもらうんだよね?」
「そうだよパール。今の服じゃ戦いづらいでしょ?」
「確かにちょっと動きにくかったかも」
『勇者としてふさわしい服装がいいですね』
「うん!」
そんなことを話している間に、僕たちはちょっと洒落た感じの小さなお店にたどり着く。
「ここが服飾屋さんだねっ」
「そうみたいだ」
木の扉を開けると、お洒落なお姉さんが出迎えてくれた。
「あらいらっしゃい、可愛いお嬢ちゃんね~」
「あのっ、短いスカートで動きやすい服を作ってほしいんですけど」
「……その背中の剣、もしかして冒険者を目指してるのね?」
「はい!」
ハキハキとしたパールに、服飾屋のお姉さんはニッコリ笑って奥へと誘う。
「私はリップ、よろしくね。それじゃあおいで、しっかり採寸してあげるわ」
「よろしくお願いします! ――それじゃあちょっと待っててね、エリオス」
「あら、可愛いフクロウさんね。ペットかしら?」
「はい! エリオスっていって、とってもお利口なフクロウさんなんです!」
「ホロロッ」
パールに紹介されてフクロウの身体で胸を張った僕は、手近なところにちょこんと止まって待つことにした。
ちょっと待っていると屋根裏からネズミが落ちてきたので、早速捕まえて丸のみにする。
調理されたお肉もいいけど、やっぱり生きた獲物の味は格別だ。
そんなことをしているうちに、採寸を終えたパールが戻ってきた。
「明日になったらここへおいで、それまでにとっておきの服を見繕っておくからね」
「お願いします!」
リップさんのお告げでお店を後にした僕たちは、続いて町の市場に足を運ぶ。
「これが市場なんだね~。美味しそうな匂いがあちこちからして、お腹が空いちゃいそうだよ~!」
「これでもまだまだ小規模な市場だ、ルースシティーでならもっと大きいのを見られるからね」
「へ~! それは楽しみ!」
会話しながら進むパールは、一番香ばしい香りを漂わせる串肉の屋台へ自然と引き寄せられた。
「う~ん、美味しそ~」
「へいらっしゃい! お嬢ちゃん見ない顔だねえ、おまけしとくぜ!」
「え、いいの!? ありがとう、おじさん!」
気前のいい屋台のおじさんからおすすめの串肉を五本買い、それを食べながら次の屋台をはしごに行く。
「このお肉美味しい~!」
「僕にもちょっと分けてよ」
「いいよ~。ふー、ふー」
パールが冷ましてくれた串肉の一かけらを、僕は嘴でつまみとって食べた。
焼いた肉もやっぱり美味しい!
次にやってきたのは小さな果物屋。
「はわわ~、これが果物なんだ~!」
「あれ、パールって果物を食べたことがないの?」
「うん! だって果物は高いって、お母さんが全然買ってきてくれないんだもん!」
そんな食卓事情があったんだね……。
「気にすることないよパール、今のキミは自由だ」
「そうだね! ん~、どれにするか迷うよ~!」
色とりどりに熟した果物の数々に目移りするパールに、果物屋の主人が教えてくれた。
「今ならこの苺が美味しいよ! さあ買った買った!」
「じゃあそれにする!」
「あいよっ、毎度あり!」
今度は真っ赤に熟した苺を三つ、パールは買う。
「はむっ。ん~っ、甘酸っぱくてこれ好きかも~!」
「良かったね、パール」
苺を一口で頬張って顔をほころばせるパールに、僕まで心がほんわかと暖かくなるよ。
「エリオスも食べる?」
「僕はいらないよ。ほら、僕って肉食のフクロウだから。果物は食べないんだよ」
実際人間だった頃はたまらなく美味しそうに感じた苺の香りも、今では全く食欲をそそらない。
それがフクロウになった今の僕の本音だった。
「そっか~。残念だなあ、こんなに美味しいのに~」
「ごめんね、パール」
パールが苺も三つペロリと平らげたところで、続いて基本的な調味料と保存の利く食べ物を調達してもらってから、この日泊まる宿屋にやってきた。
「ここが一番いいと思うな~」
「ふむふむ、【星空のハンモック】か。値段も手頃だし、ちょっと古びてるけどいいと思うよ」
ここに決めたところでパールと僕が宿屋に入ると、早速恰幅のいい女将さんと娘さんが出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ!」
「うちには何泊するんだい?」
「んーっと、どうしよう……」
首を捻って考え込むパールに、僕が耳元で助言をしてあげた。
「とりあえず今夜泊まれば大丈夫だと思う。宿屋なら後から延長もできるし」
「そっか! ――じゃあとりあえず今夜一泊でお願いしまーす!」
「毎度ありっ」
宿泊の日にちを決めたところで、パールと僕は二階の部屋に向かう。
「ここが宿か~」
「パールは宿屋も初めてなんだね」
「うん! なんでも初めてで楽しいよ~」
それは良かったよ。
早速真っ白なベッドに飛び込んだパールから飛び立って、僕は片隅にある机に着地する。
「ここなら食事も用意してくれるだろうし、明日に向けてゆっくり休もうか」
「そうだね、エリオス」
こうして僕たちは宿屋で一夜を過ごすことにしたのであった。
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