第4話

「まさか、呪ってきた相手をパシリにするつもり!?」

「人聞きが悪いなぁ。“協力”しようよ。僕もキミも、映画版の“スーパーデイズ”が見たい。目的は一緒だろ?」 

 

 環は眉をしかめ、しばらく考えたあと、「……仕方ない」と呟いた。

 そして、「協力者は多いに超したことないよね」と言うと、壱悟に向かってニヤリと笑った。



          ◇


 

 “立ち入り禁止”の看板が建てられ、バリケードされた道路。

 その隙間から見える、奥に続く細い道は周りの草木に覆い隠されている。昼間でも闇に近い暗さだ。

 そんな封鎖された道路の前まで、壱悟は環に無理やり連れてこられた。


「じゃあ、行くわよ!」

 環はバリケードを当たり前のように通り抜ける。

「……やっぱり?」

 壱悟はため息をきながら、バリケードの隙間を縫うようにして、奥へと進んだ。


 ──バリケードを突破した先のカーブを一つ越えると、すぐにトンネルが見えた。

 “裏ヶ面うらがめんトンネル”だ。


 この場所で死んだ、と環は言っていた。


 壱悟と環は トンネルの前に立った。

 ──異様、という言葉がしっくりと当てはまる。まるで、時間が止まったかのように静まり返っている。

 トンネル入口には改めて“立ち入り禁止”の看板が、入口を塞ぐように建てられている。


「キミ……此処にずっと一人でいたの?」

「一人……ではないわね」

 環はそう呟くと、“立ち入り禁止”の看板をすり抜け、トンネル内部へと入っていく。

「アンタはこの中には入らなくていい。他の二人も連れてくる」

「──他の二人?」


 環は一人でトンネルに入った。少しの時間、待った後。

 現れたのは、二人の若い男女。

 二十歳ハタチそこそこだろうか?


 女性の方が口を開いた。

「この子、人間でしょ? こんな所まで連れてきちゃって……恋人?」

 この場に似合わない、やけに明るい声音だ。

「そんな訳ないでしょ!」

 環はムキになって言い返す。

 

 若い男女はカップルなのだろう。腕を組みピッタリとくっついている。

「……ん? この場所にカップルの幽霊……?」

「──そう。私が呪い殺してしまった二人よ」


 壱悟は頭を抱えた。

 何故、一人でも厄介だというのに、それが三人に増えるのか。

 それにしたって、ずいぶん仲が良さそうだ。一体、なにがどうなって、そうなるのか。

 追い打ちを掛けるかのように、環はこう言葉を続けた。

「もう一人、いるわよ」

 

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アイと呪いの推し活事情 鹿島薫 @kaoris

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