黒歴史ではなく白歴史
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
独自製法もふたを開ければ、結局、1度、2度と温度を無難なレベルでずらした程度であったり、秘伝や伝統と
「もうね、みんながおいしいって言っている味は、結局みんな同じ味なのよ。いきつくところは結局、同じ味なの。もう、おいしいと思えないし、食べることが苦痛で仕方がなくて、だけど食べないとお腹すくし、つらくてつらくて……」
あまりにも思いつめている様子に三浦は胸を痛めた。
彼女の主義主張が贅沢だとも思わない。食べることは生きることだ。
神の信仰と同様に、
おいしいものを食べたい欲求は人類が獲得した生きる意志の一つであり、健全の証拠だと三浦は考えている。
厄介なのは感情だ。特に負の感情は本能を塗りつぶし、最先端医療でさえ太刀打ちできない死に至る病を発症させるのだ。
「うーん。これは、深刻だわ」
三浦は
食べることが好きな田端の幸せそうな笑顔を知っているからこそ、つらい、と零す言葉の重さが深刻さを物語る。
なんとかできないだろうかと思い悩み、ふと、テレビが視界に入った。
番組は心霊特集の続きであり、ひな壇のアイドルたちが可愛らしい悲鳴を上げている。
「そうだ、葉子はこのアイドルたちを見て、名前を全員いえる?」
「んっ……」
今人気のアイドルグループ、マチナカ
「わからない、全部、同じ顔に見えるよ」
「そう、それなのよ」
「え?」
「私もね、学生時代シャイニーズ事務所のアイドルの追っかけをしていたんだけど、ある日、みんな同じ顔に見えちゃったのよ。あんなに好きだったのに」
「そうなんだ、結局アイドルも量産型なんだね」
「うん。売れると確定しているのなら、量産したほうが確実に儲かるからね。それでね……」
全員同じ顔にみえる状態なのに、追っかけていたアイドルが主演を務める映画を観に行った。
理由はチケット代がもったいなかったからだ。特になにも期待してないし、時間を潰せればそれでよかった。ただそれだけだった。
よくあるすれ違い、よくあるセリフ回し、よくあるボーイミーツガール。そこに絡まってくる大人の思惑とミステリー。
殺人の濡れ衣を着せられて逃亡する主人公と、そこへ真犯人を追うベテラン刑事が
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます