スライムのお嫁さんとのお昼休み(2)
「「魔物研究会?」」
僕とプルルは二人揃って首を傾げた。
まず間違いなく、お揃いの?マークが二人の頭に浮かんでいることだろう。
僕も学校の全ての部活や同好会を把握している訳ではないと思うけど、そんなインパクト抜群の名前の部活や同好会は聞いた事がない。
その反応を待っていたとばかりに、アノマが口を開く。
「先程も言った通り、私は重度の魔物マニアでね。魔物に関する物は図鑑などの書物はもちろん、絵本だろうと大好きさ。無論、実物の魔物だってね」
そう言いながら彼女の家族と言っていたスカイフィッシュ達を撫でる彼女の表情は、とても穏やかなものだった。
「だが」と彼女は続ける。
「その書物に載っている内容ときたら、捕獲の仕方やどの部位がどう言う効果を持って、どう言う用途に適しているか……そんな内容ばかりだ!違うんだよ!私は、彼ら魔物達の生態や習性なんかが知りたいんだよ!」
アノマが机を叩いて立ち上がり、ヒートアップしながら喋り続ける。
「ドラゴンは高温の炎を吐き出し空を飛ぶので、非常に危険な魔物ですぅ……?そんなの誰でも知っとるわ!身体のどこがどう言う用途に最適かなんて、魔術書や錬金術書にでも書いておけ!私は、その魔物のドラゴンと言う生き物がどんな風な行動を取りながら生きているのか、どんな食事をしながら生きているのか、そう言う……魔物達の生き方が、詳しく知りたいんだよ!!」
そこまで言って、アノマは勢いよくこっちを見た。
「私は魔物と言う生き物達が、各々どんな生き方をしているのか知りたい。でも、魔物を素材の塊としか見ていない他の連中にはぜんぜん理解されないんだ!一人で調べ様にも、時間や質に色々限界がある……!」
彼女の顔は、悔しそうに歪んでいた。
「ミュカ先輩はプルル君を愛している。もちろん、私なんかと一緒にするべきではないと思う。でも、魔物を動く素材としてではなく、魔物と言う生き物だとミュカ先輩はキチンと認識している。そして、プルル君と言う愛する魔物の事を、もっと知りたいと考えている。私と似たような人間、ありのままの魔物の事を真剣に知りたいと思う人間……ずっと、ずっと探していた人材なんだ!お願いだ!私と一緒に、魔物の事をもっと知るのを手伝ってほしい……!」
最終的にアノマは両手をついて、机に頭を擦り付けて懇願してきた。
……そこまでされたら、僕としても返事をしない訳にはいけない。
「アノマ」
僕が声をかけると、アノマの動きが止まる。
「僕はプルルの事を、愛する魔物だから知りたいんじゃない。愛するプルルの事だから、知りたいんだ」
「……ああ、そうだと思う。……すまないな、せっかくの昼休みに迷惑な申し出を……」
「だから、その為には魔物としてのプルルの事も知らないとって思ってたんだよね」
「……へ?」
「魔物研究会、僕にも手伝わせてくれないかな?」
「……は?」
「『一緒に、魔物の事をもっと知るのを手伝ってほしい』だなんて、こっちからお願いしたいくらいだよ!僕はスライムについてがメインになると思うけど、もちろんアノマの調べる事にも喜んで協力させてもらうからね!」
「……ま」
「ん?」
「紛らわしいのよ!このリア充バカップル彼氏がぁー!!」
「ぎゃあああ!」
「いたた、おにぎりが顔面にストライクした……プルルぅー」
「えーと……今のはミュカ様に非があると思いますね」
「フンッ!飲み物を投げつけなかっただけ、ありがたいと思う事だな!」
「うぅ、おにぎり美味しい……そう言えば、魔物研究会ってどうやって活動するの?部活とか、同好会の感じで活動するの?」
「ああ、その通りだとも」
「……申請とか、大丈夫そう?」
確かどちらも顧問が必要で、部活動として認めてもらう人数は五人・その人数以下は同好会と言う扱いになるって、昔聞いた様な気がする。
「ふっ、私に任せておきたまえ。その辺りの関係も、もちろん抜かりはないさ」
んんー?本当に大丈夫なのか……?
現時点でメンバーとして確定なのは、僕とアノマだけの筈だけど……。(プルルは人数的に除外)
「さて、そろそろチャイムのなる時間も近い。ひとまず、この辺りでこの場はお開きとしよう」
「時間が経つのがあっという間です……。でも、楽しかったですね!ミュカ様!」
「うん、そうだね」
そう言われて壁に掛けられた時計を見ると、午後からの授業には移動時間を含めてある程度余裕を持って間に合う時間になっていた。
空になった湯呑みやお茶菓子が入っていた皿を返しにいく為に、それらをお盆に乗せて職員室に向かおうとする。
色々あったけど、校長先生、キンニ先生、アノマとも、たくさん話せて本当に良かった。
「ああ、そうだミュカ先輩。今日の放課後、何か予定などはあるかな?」
「ん?放課後?特にないけど……なんで?」
「善は急げと言うだろう?魔物研究会の事で、少し、時間をもらえるかな?」
「うん、僕は大丈夫だよ」
「私も大丈夫です!」
「よしよし……それなら、今の内に連絡先を交換しておこう」
僕達はお互いのスマホの連絡先を交換すると、それぞれ出口へと向かう。
「それではミュカ先輩・プルル君、また放課後に。集合場所については追って連絡する」
「うん、おにぎりとか色々ありがとう」
「アノマ様!また放課後に、です!」
アノマは僕達に軽く手を振ると、指導室を出て行った。
「……それじゃあプルル、僕らもね」
「はい!行きましょう、ミュカ様!」
そう言って僕達は、まずは隣の職員室に向かった。
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