スライムのお嫁さんとの休日(2)
「あれまあ!随分時間がかかってると思ったら、こりゃあすごいじゃないかい!」
「ありがとうございます!ソグ婆様がすぐにポーション作りに取り掛かれる様に、薬草の選別や下処理なども終わらせてきました!」
「いやぁ、プルルちゃんは大した娘だよ!ミュカも良いお嫁さんをもらったねぇ」
えへへと照れながらも誇らしげなプルルが、とても可愛い。
二人での先程の行為を思い出してしまい、その姿をどうしようもなく愛おしく感じてしまう。
「ミュカ?どうしたんだい?そんなに顔赤くして」
「ミュカ様?ミュカ、さま?どうしてしまったんでしょう……?まさか、お身体に何か不具合が?!」
「……ああ、なるほどねぇ。気にしないで大丈夫だよ、プルルちゃん。年頃の男にはよくある事さね」
「そ、そうなのですか……?」
「そうだとも。それより、よかったら一緒にポーション作りを手伝ってくれないかい?プルルちゃんがいれば、ずっと作業が捗りそうだ」
「は、はい!喜んで!……ではミュカ様、また後ほどですす」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
気がつくと、居間に一人で座っていた。
どうやら裏山でプルルを構い過ぎたのを思い出した所為で、しばらくボゥとしていたらしい。
そのままでいたらまたボゥとしてしまいそうだから、身体を動かして気を紛らそうとする。
……そう言えば、ポーション作りは今どうなっているかな?
作業部屋に向かってみよう。
「おおおお!!このポーションの具合はまさに『ハイ・ポーション』!すごいじゃないかプルルちゃん!!」
「えへへ、恐縮です!ソグ婆様、他に作ったポーションの量や品質等は問題無さそうですか?」
「もちろんだとも!まさか、プルルちゃんが魔法まで使えるなんてねぇ。おかげ様で作業がものすごく捗ったよ!」
お婆ちゃんとプルルは作業部屋で、和気藹々と二人賑やかな雰囲気でポーション作りをしていた。
「あ、ミュカ様!その後のお加減はいかがでしょうか?」
「うん、もう大丈夫だよ。ありがとう、プルル」
「おお、調子は戻ったみたいだね。……ちょっとミュカ!プルルちゃんすごい娘なんだよ!」
お婆ちゃんはとても興奮した様に、僕に話しかけてきた。
「プルルちゃんはね、ただのスライムじゃなくて『マジックスライム』つまり、魔法が使える珍しいスライムの娘なのよ」
「え?そうだったの?!」
「しかも、その魔法の技能は超一流!下処理してくれた薬草を使って抽出した成分で作ったポーションの出来栄えは完璧!質の良い薬草を使ったポーションは『ハイ・ポーション』と言って問題無いレベルのクオリティ!オマケに、割れたり欠けたりヒビが入ってしまっていたポーションの入れ物まで直してくれたのよ!!!」
「そ、それは本当にすごいな……!」
「もう本当、プルルちゃんさまさまよ!」
プルルの方を見るといつの間にかスライム形態で、部屋の端っこを陣取っていた。
恥ずかしいからか、ぷるぷる震えながらうーうー唸っている。
恥ずかしがってぷるぷるしているプルルも大変微笑ましくて可愛らしいが、せっかくなのでゆっくりと近づいて、両手で優しく抱き上げる。
「……お疲れ様。ポーション作り手伝ってくれてありがとうね、プルル」
「は……はいぃ……」
ぷる……ぷる……と震えながら照れているプルルがまたしても堪らなくて、その可愛いさから思わず抱きしめてあげたくなる。
………………お婆ちゃんのニヤニヤした視線を感じたので、自重したが。
「そこのお二人さん。残りはあたしがやっておくから、二人で夕方の散歩にでも行ってみたらどうだい?」
「散歩か……良いね。プルルにも家の周りを見てもらいたいし」
「は、はい!是非一緒に行きたいです!」
「今回プルルは抱っこで行く?それとも歩いていく?」
「では、ミュカ様と歩きたいです!」
そう言って、人型形態になるプルル。
夕陽に映える人型の服装も相まって、どこか幻想的ですごく可愛い。
そんなプルルと手を繋いで、まずは家の辺りを当てもなく歩いていく。
やがて足を少し遠くに伸ばすと、プルルと出会った竹藪近くまでたどり着いた。
「まだ一日しか時間は経っていない筈なのに、何だかすごく懐かしい気がするね」
「そうですね……穴に落ちて動けなくなってしまった時は、もうダメなのかもってすごく不安な気持ちでした」
「そうだったんだね。そう言えば……なんで竹藪の穴に落ちたの?あそこの近くに用事でもあったの?」
「実は私……爆発に巻き込まれて遠くから吹き飛んできたんです」
「爆発?!そうだったの!?」
爆発って……最近この近くでそんなニュースあったっけ??
「魔法関係の施設の近くにいたんですけど、何だかすごい爆発から始まって空飛ぶ鳥とか建物にバウンドしながら、最終的にあそこに落下したって感じです……衝撃に耐える為に、身体を硬化して落下したら穴とかあんな感じになってしまいまして………………」
「そうだったんだ……そんな大変だったプルルを、無事に発見できてよかったよ……」
「ありがとうございます。爆発に巻き込まれてからここまで飛んだり踏んだり蹴ったりでしたけど……それでも、悪い事ばかりじゃなかったんですよ?」
「え?そうなの?」
聞いてるだけでも散々な状況だったみたいなのに……良い事もあったんだなぁ。
「ミュカ様に、出会えましたから」
「……へ?」
「ミュカ様に助けていただいて、恩返しさせていただいて、ソグ婆様にも受け入れてもらえて」
「何より、ミュカ様のお嫁さんになれて……私、今とっても幸せです!」
その時の僕に向けたプルルの笑顔は、今まで見てきたどんな夕焼けよりも綺麗で、輝いて見えた。
「……そうだね。僕もプルルがお嫁さんになってくれて、今ホントに嬉しい…………これからも恩返しとか関係無く、ずっと側にいてほしい。そして、僕と一緒に幸せになってほしい」
もう、自分の気持ちを抑えられなかった。
思えば初めて会った時からスライムとか関係なく、この娘の事が好きになっていたんだと思う。
そこから先の事は多分、一生忘れられないと思う。
敢えて言うならその時、二人の距離はゼロだった……とだけ言っておこうかな。
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