レギュラー出演!?
「ダメですか?」
アリサは身を乗り出して、俺の目を覗き込む。俺は思わず目を逸らす。でないと、アリサのあまりの可愛さに、2つ返事でOKを出してしまいそうだったからだ。とりあえずは理由を聞いてみないことには、何も始まらない。
「どうしてそうなるの?」
「あ、はい。そうですよね。私にはちゃんとした考えがあるのです」
アリサは得意気に胸を張ってそう言った。変な子。
「今って、『ダンジョン』というものが何たるかを、世間がまだ正しく理解していないと思うんです」
「アリサも理解していないしね」
「あ、はい。そうなんです。だから私の動きに視聴者は共感を覚えると思うんです。私も、多くの視聴者もまだダンジョンよくわかってないので」
「ほうほう」
「だから、『ダンジョン有識者』が私のチャンネルに出演していればいいんじゃないかと思うんです。私のことをサポートしたり、私に色々教えたりしていれば、結局間接的に視聴者の教育に繋がると思うんです」
何を偉そうなことを。お前もど素人だろうが。ただ、言っていることは割と論理的だと思った。確かに、配信の戦略を考えていく上で、ひとつの形式を確立することは大切だと思った。それに。
俺はこの子と自分が楽しくダンジョン配信をしている姿を想像してみた。かなり楽しそうだった。せっかくだからやってみるか。それでも、俺には勇気が足りなかった。結局そんなちょっとの工夫で収益化できるほど、配信の世界だって甘くないに決まっている。一か八かの勝負に敗れて収入が0になるよりかは、大変な道でも、汗水垂らして懸命に働いた方が100倍まともな人生を送れる。それは間違いない。ただ現状の問題として、就職先が決まらないのも事実だ。
「どうですか?」
アリサはますます身を乗り出し、俺の返事を待つ。
「考える時間が欲しい」
「あ、そうですよね! 気が利きかなくてすみません! じゃあ連絡先交換しましょ! やりたくなったら連絡ください」
「了解。猶予はどれくらい?」
「う〜ん」
アリサは考えた後、割と早めに答えを出した。
「1ヶ月くらいでいかがでしょうか?」
「わかった。よろしく」
俺とアリサは、連絡先を交換して別れた。時間にして1時間くらいだったと思う。
よし、この1ヶ月間が勝負だ。スパンが決まっていれば、より頑張れる気がする。
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