応募条件は『配信者』で登録者10万!?
俺は途方に暮れていた。人生最大のピンチかもしれない。何故ならば、再就職先が決まらないからである。正直なところ、最初は会社をクビになってもまたどこか拾ってくれるだろう、なんとかなるに違いないとタカをくくっていた。異世界で無双した直後だったからだ。しかし、現実はそんなに甘くはなかった。もう生活費もだいぶなくなってきた。今では自動販売機で130円の小さめのドリンクを買うことすら躊躇するありさま。もちろん、食事は1日3回も摂ってはいられない。このままいけば、家賃も払えなくなるだろう。このような不安が俺を押し寄せる。そんな時、俺を奮い立たせてくれるのが、異世界時代の思い出だった。ほとんど武勇伝といってもいい。あんな成功体験をしたら、自分に自信を持ってしまうのも無理はない。そうして楽観的に物事を考えるようになった結果がこの惨状なのだけど。
あの時みたいな大活躍が現代日本でもできればいいのに、と思った。ひょっとしたら俺は、現代日本で生きるのはあまり向いていないのかもしれない。そう思った。異世界の時は天国。今は地獄だ。しかも、まだ下がり目がある。もはやため息しか出ない。
「はぁ…」
「はぁ…」
「はあ…。はあ…」
部屋に誰もいないのをいいことに、俺はほぼ3秒おきくらいにため息をつきまくった。
「このまんまぼーっとしていても仕方ないし、テレビでもつけるか」
相変わらず俺はブツブツと呟き続ける。そしてテレビの電源を入れた。すると、先週見た例のオーディションをやる予定の『ダンジョン番組』が放送していた。しかしながら、番組は既に最終盤だった。
「はい! おめでとうございます! 第1回『ダンジョン配信者オーディション』優勝は地雷系アイドルのリサさんでしたー!」
「リサさん、おめでとうございます!」
「うるせえ、タコ」
「うおー!」
よくわからないノリ。よくわからないギャグ。何ひとつ意味がわからなかった。ただ、ひとつ言えるのはこのリサって配信者が超絶俺の好みのタイプだったということだ。やばい、一目惚れしたかもしれない。何故なら、リサが俺の異世界での恋人、アルネに似ていたから。ただそれだけのことだ。
「リサさんには、来週から『ダンジョンアシスタント』として番組に参加していただきます! では、また来週〜!」
俺はこの番組を録画登録した。理由はふたつ。ひとつは、リサが可愛かったから。そしてもうひとつの理由は、第2回のオーディションを観てみたくなったからだ。もっともあくまで興味本意だけれど。
インターネットやSNSでこの番組のことをリサーチしてみる。やはり、トレンドになっているようだ。そんな中、俺はとある衝撃的な情報を見つけた。
「えっ! 優勝者は賞金1000万なの?」
お金。欲しすぎる。しかもこの方面なら、俺の異世界での経験が無駄にならない。経験とスキルを活かして、活躍することができるかもしれない。そう思った瞬間、俺の心は、ぐいっと傾いた。
「よし。ちょっと、出てみたくなってきたぞ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます