第2話 淡褐色/ヘーゼル
「アースアイだ」
彼女の目の色が美しい。日本人ではないのか?その目がとても印象的だった。
この色は
虹色とでも言うのか?ブルーにブラウンの要素が混ざった色。まるで、地球のようだ。
「綺麗だな・・」
思わず言葉にしてしまう。するとその言葉と
同時に彼女の目が俺を捉える。
やべぇ・・聞こえたか?
慌てふためいてると、彼女がニッコリと微笑む。しかし、彼女の目線はすぐに本の方に向けられた。その後も彼女がこちらを向く事はなかった。
気づけば1時間くらいは経っていただろうか?
久しぶりに満喫した。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「ありがとう。また、おいで」
「いいんですか?ここの雰囲気とても
気に入りました」
「ははは、それは嬉しいね」
「この店は自家焙煎って言ってましたけど
季節によって変えてるんですか?」
今日頂いたコーヒーはとても飲みやすく、豆にこだわりがあるんだと感じた。
今、流行りのcafe
それもいいけれど、昔ながらで何かこだわりがあるお店は悪くない。
いや、きっとのんびりと生きている俺に合うのだろうなと思う。
「そうだよ、僕はねどの季節にも合うようにしているんだよ」
コーヒーを抽出しながら俺に話してくれる
「自家焙煎は僕のこだわりでもあるからね」
マスターの言葉と緩やかに流れるJAZZが
とてもマッチしている。
先程、のんびりと生きてるいると言ったがこの雰囲気はまた違った感じだ。マスターの人柄の良さが表れているんだろう。
「そういう君もコーヒーにはこだわりがあるようだね」
「え?ああ・・実は親父が喫茶店を営んでまして・・こことはまた違う雰囲気なんですけど
同じように自家焙煎をしているので」
「そうなんだね」
マスターは驚いていた。まあ、そうだろうな
こんな学生が詳しいんだから無理もない。
「よかったら、このお店の名刺渡しておくよ」
マスターから渡された名刺
喫茶 leisurely
裏にはお店の電話番号とSNSのアドレス
それにマスター個人のスマホの番号が
書かれていた。
「あまり渡すことはないんだけどね」
ニコッと笑うマスター
「水曜日は定休日だけど、時々、別の曜日に
お店を閉める時もあるから、何かあったら
ここに電話してくれるといいよ」
「ありがとうございます」
初対面だけどコーヒーの話で意気投合したと言う感じだった。
今年の夏は悪い事だけでもないと思った。
それに・・ふと、窓側に目を遣る
そこには先程の彼女が読書をしていた。こちらの事も気にせず本に集中している。
まあ、きっと常連だろうし、そのうち話す機会もありそうだな。
「それじゃあ、失礼します」
マスターが軽く会釈をする。
「暑い・・」
お店を出たらまだまだ日差しが照り返していた。ここは地獄か?
お店の空間が居心地が良過ぎて、この地獄のロードを再び歩き出す。
それから何度か俺はあのお店に足を運ぶ。マスターのおすすめのコーヒーを味わい、ゆっくり流れる空間に俺は堪能していた。マスターとの関係も常連とまでいかないが、コーヒーの話などで話せるようにはなった。
一つだけ変わらないのは彼女だけ
彼女は毎日このお店の窓側の席で読書をする優しく微笑んで会釈はするが、いつものように
本に目を遣り集中する。
名前も年齢も知らない。
「マスターごちそうさま」
「はい、気をつけていってらっしゃい」
「っす!」
俺はカウンターにコーヒー代を置いて
バイト先に向かう。
「・・・。」
彼女がこちらを見ていたなんて・・
恋人にフラれて最悪な夏休みだと感じていたが、それなりにやっていけるんだと思うようになった。新たな出会いも助けになってそれなりに充実してるかもな。
「お先に失礼します」
バイトを終え、帰る途中反対側の方を見ると
そこには喫茶店で会う彼女がいた。
月明かりに照らされる彼女の目はとても綺麗で
本当に地球のようだ。
その姿はやはり美しく、その言葉がよく似合う
彼女の前には一人の男性が話しかけていた。知り合いか?それとも・・。
「おっ・・」
思わず声を出してしまった。何故なら、彼女が
その男性に話しかけている。だが、その途端
男性は
すると、彼は逃げるようにそそくさと歩いて行ってしまった。
彼女は悲しむこともなくむしろ、またかって感じで反対方向に歩いていった。
翌日、いつものように俺は喫茶店に来ていた。彼女は窓側の席で読書をしている。
「・・・。」
昨日の事、話す事でもないけれど
見かけた事は話す方がいいのか?いや、
親しくもないしそう考えながらも彼女の方
チラチラ見る。
相変わらず、集中していて見向きもしない。
「
「はい?」
マスターが声を掛けてきた。
「僕、今から奥で作業するから
少し店番お願い出来るかい?」
「いいですよ」
「ありがとう」
マスターはそう言って奥の作業室に
入っていった。
「あ・・」
窓側の席を見る。今、この空間にいるのは
俺と彼女だけだ。
つまり、2人きりだと言う事
いざとなったら、言葉に詰まる。何て話しかけたらいいのだろう?
いつも読書している事、この辺に住んでいるのか?色々聞いてみようか?
いや・・警戒されるのでは?
自分の腕を組みながら、あーでもないこーでもないと悩ませていると何か、気配のようなものが感じられた。
「ぬわっ!?」
思わず声を上げてしまった。
それもそのはずだ。
何故ならそこには彼女がいたからだ。
彼女は俺の顔をジロジロと見ている。怒ってるようでもない。
かといって喜んでるわけでもない。
ただ、言えるのはあまりにも整え過ぎている
顔立ちと美し過ぎる目の色が俺を捉えている
その美しさに思わず、目を逸らしてしまう。
「何故、いつもワシの方を見るのだ?」
「ワ・・ワシ?」
俺達以外に誰かいるのか?
周り見回す。
「どこを見ているのだ?」
「え?」
その言葉は紛れもなく、彼女が発した言葉だ
「お前に一言物申す!何故!いつもワシを見るのだ!この店に居座ってからそうじゃろ?こちらを見て声をかけるのかと思えば何も発しないではないか?昨日もだ!反対側の道でワシを
見ていただろう?」
彼女のマシンガントークに呆気に取られる
何が起きたのだろうか?
「ワシに言いたいことでもあるのか?」
その言葉に
「お名前は?」
彼女の動きが止まる
「あ・・いや」
咄嗟に出てしまった。
「・・・だ!」
「え?」
「ワシの名前は
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