第23話 希望反転 ②

──sideアオイ──


(ミツキがロキ君と話している間は、他に警戒しておいた方が良いわよね! )

 一人離れたアオイは、二人の邪魔になりそうな人がいないか、周囲を見て回っていた。


「おい、そこの女止まれ! 」

 警戒していたアオイの背後に銃を突き付けながら、一人の男が警告する。


「誰!? 」

 アオイが少し驚きながら、両手を上に挙げてその人物の登場に驚くのであった。

(まさか、私がうしろを取られるなんて……失敗ね! )


「それは、俺が質問する事だ……」

 男がアオイのすぐ後ろ数メートルの辺りで立ち止まり答える。


「お前は、ナゼ向こうから来た? 」

「 ? 」

 男の不自然な問いかけに、アオイは疑問を持つ。

「言葉の意味が分からないわ? 」

「そのままの意味だ! 」

(──もしかして、ロキ君の知り合い? )


 アオイは目を瞑り一呼吸をしてから、考える。

「私が向こうから来たのが、おかしいの? 」

「オカシイさ──此処は俺たちが占領しているエリアだからな! 」


 男が一呼吸おいて続きを話す。

「お前のような、ゲヘナビスの兵士がそんな無防備に歩いているからこうやって聞いているんだ! 」

 その獰猛な怒気を含んだ言葉を吐き出す。


「 ──! 」

「お前の仲間が俺の家族や友人を殺した!ゲヘナビスなんて国が在るから、これからも奪われるモノ達がいる……だからこそ、お前達はこの世に存在してはならないんだ!! 」

 その声音は静かだか、含まれている闇は深い重さを感じさせられた。



「そう──、アナタも大事な人を殺されたのね……」

 アオイは気付かれないように目線を下げて、小さく呟いた。


「答えろ!何が目的でココにいる! 」

 それは疑問の提示ではなく、疑心の確認のように感じる言葉……アオイは一瞬目を瞑り考えると、話し出す。


「その前に、顔が見えない相手とこんな会話に意味がないと思わないかしら……私はこの状態のまま振り返るからそれは、容認してくれる? 」

「……」

 アオイの言葉に相手の男は何かを考えるかのように何も喋らない。



「どう? 」

「わかった……、ただし、両手は拘束させてもらうオカシなマネをされたら困るからな! 」

「アナタの質問に答えてに解放させてくれるなら、了解するわ」

 相手がどのような意図があるかわからない以上、刺激しないように言葉を返す。


 アオイは、後ろ手に男が持っていたロープ状のモノで縛られてから男の方を向く。


「アナタの質問に答えたいのだけど、最初にこれだけは聞かせて欲しいわ」

「……」

 アオイは、男の無言を了承と思い言葉を続ける。


「アナタは、の仲間? 」

「 !? ──答える必要性がないな」

 アオイの質問に男は眉を一瞬だけ動かした。

 アオイは、男の些細な動きが質問の答えを物語っていると感じた。

「……そう……」

「……」

 男の回答による沈黙が続く。


「いいわ、アナタの質問に答えるわ。私もあんな国なんて消えて欲しいと思っているから──だけど全部は答えないわ、答えられる範囲なら答える、それでどうかしら? 」

「お前が真実を話しているという保証はないだろう? 」

「そうね……敵対しているのだから信用されないのは当たり前ね、ならどうすれば良いのかしらね? 」


 男の言葉にアオイは困ったように眉を下げて答える。

「……」

「……」

 二人の間に流れる沈黙は続く──。


 そして──時を同じくして、物陰から眺めている人物がいた。



               続く

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