第19話 月明逢瀬

 ライに湖まで運んでもらったロキは、一人辺りを見歩く事にした。

「あれから、二週間が経ったけど……!」


 そこには、月明かりに照らされた一人の人物が立っていた。

「!あら、もう出歩けるようになったの……バカロキ?」

「バカロキはひどいなwwそれに、まだ完全じゃあないけど此処に来たらミツキに合えるかなって思ってね、友人に頼んで運んでもらったんだ」


 ミツキの軽口に笑ってロキは返した。

「先日の貴方の行動を見直してみなさい。……それより、なんで私の名前を知ってるの?」

 ミツキは眉根を吊り上げてロキに詰め寄る。

「この前の女性兵……たしか、アオイって人が呼んでたのを覚えてたんだよ」


「ヘンタイ……?」

「ミツキ……真顔でその言葉は例えクビを傾げても、さすがにキズ付くよ……」

 ロキは、困ったように眉根をさげる。

「フフフ……ハハハ!ごめんなさい!」


 ひとしきり笑ったミツキが真剣な眼差しをして右手を差し出してきた。

「改めて、私の名前は『ミツキ』と言います、よろしくね」

「こちらこそ、俺の名前は『ロキ』です、こちらこそよろしく」

 俺も右手を差し出してミツキの手を握る。


「あの後どうなった?」

「アオイが言うには、何とかなったらしくって休養している状態かな?」

「そうか……よかった!そうだな、こんどアオイさんにもお礼を言っておきたい!」

「それは、難しいと思うよ……」

 ミツキは目線を下げて困った顔をしてしまう。


「何かあったのか?」

「正直……ナニかあったかまではわからないんだけど、アオイがナニか隠してるのは感じるんだよね……」

 そう言って、湖の方に視線を向ける。

 いや、目線は湖なのだか湖を見てないような感じだ。


「何か出来ることがあれば良いんだが、俺は見ての通りの一般兵だから何も出来ない、だけど俺はあのクズ国……ゲヘナビスの在り方は俺には赦せない」


「私も同じだよ……家族が人質になってなかったら、あそこの兵士になんかならなかったもん……」

 ミツキもゲヘナビスを嫌っている、だが弱味を握られていては離れることも出来ない現状を、嘆きたい心情もしていた。


「ミツキ……いつか……」

「なに?」

「いつか、この戦争が終わったら……俺と──」

「!?止めて!!」

「!?」

 ロキが言おうとしている言葉がナニか理解してしまったミツキは、続きが紡がれる前に慌ててその言葉を遮った。


「お願い、それ以上その続きを喋らないで……」

「ごめん……ミツキ……」

 お互いに泣きそうな顔を隠すようにしながら、顔を逸らした。

「今日は、ここまでにしよう……」

「えぇ、そうね……」

 その言葉と共に、お互いの顔を向かい合わせて名残惜しむように別れの言葉を口にする。


「またな、ミツキ」

「またね、ロキ」

 そして、お互いに各々の帰路に向かって行った。


               続く

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