第3話 古銭との出会い

時が経ち、小学生になった一夫は竹で編んだ茶碗かごを持ち出し

毎日の様に川の水路で魚取りに励んだ。


ジャバジャバジャバ(川の中を歩く)

竹籠を水面にくぐらせては

「あっちだっ」

「いやっこっちだっ」

「くっそっ逃げられたーーっ」

捕まえようとすると、岩の下に逃げ込む魚取りに無我夢中になった


「よしっ今日は三匹っこれだけあれば十分だっ」

「ん?」

透き通った川の水がジワジワと真っ赤に染まっていった

川底は茶碗の欠片等があり足裏が切れていたのだ。


一夫は慌てて水路から上がり

「ふんっ!こげほどの傷だいら、どげことないっ」

川岸のヨモギを摘み足裏にあて持っていた手拭で巻き止血をした。


三匹の魚を持ち帰ると家族四人だったが、魚は子供三人で食べ

残った部分を秀ノが食べた。

秀ノは心配する子供達に

「魚の頭と尾が一番おいしいけん、ごっそごっそ(ご馳走ご馳走)」

と言い心配させないように振舞っていた。


小学生高学年になると一夫は村一番のガキ大将になっていた。


ある日、友達と栗狩りに山に入った際、一夫は隣の村の子と鉢合わせた


隣村の子「おいっ!!!おみゃーさんっここはオイラの縄張りやけんっ!!!」

一夫「たわけぇいっ!!!誰の縄張りやゆうちょるが?!!このだらずがっ!!」

隣村の子「だらずは、おみゃーだわっ!!!」

一夫「!!!!!」咄嗟に殴りかかりった。


この様な出来事が日常茶飯事に続き、喧嘩負け知らずの一夫の噂は隣村まで広まっていた。



勉学にも真面目に励んでいた一夫は、ある社会の授業の際


先生「明日は古いお金の勉強をします、古銭がある家庭は持ってくるように」


翌日の授業で古銭を持って来た一人が机の上に自慢げに古銭を出していた、

一夫は初めてみる古銭に興奮のあまり椅子から立ち上がり古銭を眺めていた


先生「吉浦くんっ!!無くなったら困まーけんっ座って見てなさい」

一夫「は~い・・」(古銭・・・どげしても欲しい)

その時の授業をきっかけに古銭に興味を持ち出した。


どうしても古銭が欲しくてたまらず、古銭を持って来た友達に交渉へ


一夫「なぁ古銭一枚、10円で一枚分けてごせや」(今なら100円ぐらいの価値)

友達「ええ?10円で買ってごすの?」

一夫「待ってごいたぁ、5円にしてごせ」

友達「5円・・・」


交渉の末、5円で譲ってもらう事になったが、

一枚手に入れると、もう一枚、もう一枚となったが

家庭は貧しく稼ぐにも小学生だった為、三枚買っては二枚を鑑定所に売り工面していた。

時には駐屯射撃場に出入りし、資金を捻出しては大好きな古銭を集めていた。


            「駐屯射撃場」

当時の駐屯射撃場は自由に出入りが出来ていた為、落ちている弾を拾い集め、

家に持ち帰り釜戸の苦土に弾を投げ入れ、溶けて綺麗に鉛が流れ出た後、

冷めて固まった鉛をスクラップ屋に売りに行き、お金に換えていたのだ。








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