第2話 母(秀ノ)の苦労

冬に入るとトタンで出来た小屋の中は想像を超える寒さに震えあがった。


小屋には堀コタツはあったものの、炭を買う事が出来なかった為

柴木(山野に生える小さい雑木)を燃やしては暖を取っていた。


一夫「うわぁぁんっっ目が・・・イタっ・・」

長女(綾子)「しっ静かにすーだわっ、かか(母)が可愛そうだけんっ」

長男(輝夫)「・・・」

秀ノ「すまんのぅ・・・すまんのぅ」と下を向くばかりだった


柴木で作る炭は部屋中が煙で充満し煙たさから目からは涙がボロボロと流れ

目が開けてられない程だった

柴木を燃やし燠が出来ると、それを掘コタツに入れ炭代わりにしてていたが

最初のうちは温かいが、燠はすぐ灰になり暖が取れるのも僅かな間だった。


生計はというと農家さんから貰う稲藁で藁草履を売り生計を保っていた。

食事をする事だけで精一杯の生活だった為、柴木を炭代わりにする日が続いた。


寒さが厳しいおりには、夜更けになると秀ノは裏山から獣道を歩き続け

炭焼き小屋まで行き、そこの主人に炭を分けてもらっていた。


主人「こっちゃー座ってごいたい、まぁお茶でも飲むだわ」

「だんだんだんだん・・・(ありがとうありがとう)」秀ノは静かにお茶を飲む


主人「先に部屋にいっちょうけん、後でゆっくりくるだわ」


炭を貰うと、山を下り家に着くと早速、暖をとった


「かぁさん・・・ありがとう。」長女(綾子)は母に声を震わせお礼をいった。

秀ノは、長男(輝夫)と一夫に目をやり下を向いた。


「極寒の中、真っ暗な獣道を歩き子供の為に大変な苦労をしてきた母の姿が今でも脳裏に焼き付いている、元気だったら幸せにしてあげたい……」母へ(一夫手記より)


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