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 ため息がこぼれた。扉1枚隔てた向こう側に何が待っているのか、まったく想像がつかない。

 話し声1つでも聞こえてくれば。なんて思って耳を澄ませてみるけど、まったくの無音。ただ不安が募る。

 意を決して、扉に手をかける。開くまで数秒とかからなくて、すぐに中の様子を知ることができた。

 戸棚に挟まれるようにして、4人。逆光で顔は見えないが、男子生徒2人に女子生徒2人に間違いはないだろう。


「あれ? もう、みんな居るの?」


 背中を軽く押されて、つんのめる。振り返ると、そこには松木まつきみつるがいた。押しのけようとした腕を、軽くかわされる。至近距離に、吐き気を覚える。


「遅刻だよ~? 松木君」

「松木君? まさか時季外れの転校生?」

「いつまでも待たせよって」


 開口一番に聞こえた言葉たちに、思わず眉根を寄せる。

 

「はい、自己紹介しようねー。西尾にしおくんに、槇村まきむらくん。それで、こちらの美少女は美樹みきちゃん。よろしくねー」


 そんな空気を取っ払うような陽気な声で、手紙の主は一人一人を指示した。


「あなたは? あなたの名前」


 自己紹介というのなら何より肝心な自分の名前を名乗りもせずに。


「この学校で私のこと知らない人なんていたんだね。すっごく珍しい」


 知らないわけない。いわくつきの生徒会長・煤原すすはら あおいのことを知らないなんて、そんな奴もぐりに違いないだろう。


煤原すすはら あおい。生徒会長やってます」


 無垢な笑顔で名乗る煤原 葵は実に満足げで、腹立たしい。

 

「君たちを集めたのはほかでもない。やってほしいことがあるの」

「それ、俺たちやないとあかんのか」 

「君たちにしかできない大事なこと。それで、誰にも言えないこと」


 生徒会長は実に楽しそうに、いやらしい笑顔で唇に人差し指を当てた。表情豊かな彼女に、西尾のため息が続いた。

 

「学校の七不思議の証明。〈奈落の底につき落とす幽霊を明るみにして欲しい〉の」


 嫌そうな顔が2つ、訳が分からないという顔が1つ、そして我関せずな顔が1つ。


「分かってると思うけど、拒否権はないよ?」

 

 実に楽し気な顔に、燃やしたはずの紙面の文字が、脳内を埋め尽くした。


 

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