第25話 お料理するよ☆ ……待ちなよ、料理は女子の仕事とか前時代的なコトでも言うつもりかい? ……お舐めでナイよっ! スパーン!(`˘ω˘⊂彡☆))ω˘`)<なんも言ってないジャン

「というわけで☆ 学園の調理実習室を借りて料理をする――エロ研究部で~す☆」


「ホント、ウチら色々やるなァ~まあでも食えるなら大歓迎だぜイエーイ!」


 ルナとカヲリが口火を切ってくれるいつもの流れ、助かる(私情)。


 さて、流し台と調理台が長机に一体化した、お決まりの設備の前で、三角巾とそれぞれ自前のエプロンを付けた(重要)エロ研究部文芸同好会ですぞの面々。


 きゅっ、と後ろ手にエプロンの紐を縛るすみれが、ぼんやりと呟いた。


「カヲリさんも言ってましたけど、私達、本当に色々やりますねぇ……というか何でこう、スムーズに使用許可が出ちゃうんでしょ……あ、そっか、顧問の鬼河原おにがわら先生が、確か教員の中でもやたら一目置かれてて……生徒会長の美々香みみかさんも私達をしてくれてる、とか他の先生から聞いた気が……その辺が原因ですかね。何だか申し訳ないですね、う~ん……」


「あうう……すみれさん、すみれさん~。エプロンの紐、後ろ手だと上手く結べませんの~。たすけてですわ~っ」


「ああ、はいはい、大丈夫ですよ花子フローラさん。動かないでくださいね……(そういえば花子さんのご家族も、この学園の最有力出資者の枠組みとかだったな……だから多少の要望なら簡単に通るのかも。……ただの文芸同好会にやたらと集まってくる権力、良いんですかね本当……)……はい、できましたよ~」


「あ、ありがとうございますわっ! うへへ……」


 お嬢様的にはちょっぴりアウトなとろけ顔だが、まあでも幸せそうならいいじゃない(いいじゃない)。


 ……と、そこで耐えかねたかのように、ルナが声を上げてきて。


「――すみれチャン! アタシも、エプロンの紐とってた髪と制服とブラ紐と紐パンがズレちゃってるんですケド!?」


「爆撃にでもったんですか? というか紐パン、確か校則違反だったような……さすがにチェックしない所でしょうけど、ダメですよ?」


「そらホントは紐パンとか穿いてないけども!(校則は守る系エロ研究部員) うう、でもでも……だったらアタシもエプロンの紐、結んでぇ~!」


「え、ええ……まあそれくらい、全然いいですけど……じゃあ、はい。……ん、できましたよ~ルナさん」


「わーい♡ アンガトすみれちゃん♡」


 安上がりな女ね……何だか分からんが、とにかくヨシ!(ヨシ!)


 と、そうこうしている内に、調理台の上に多種多様な食材が並び――早々にカヲリが作業を始め、ルナが感心の声を上げる。


「おっ、カヲリちゃん早いネッ。意外って言っちゃ失礼シツレーだけど、もしかしてお料理とか得意なカンジ?」


「んにゃ、全然。まあでも、肉とタマネギを醤油と一緒にいためて、んでどんぶりごはんの上にぶっかけりゃ、細かいこたぁともかく味はそこそこで腹もふくれるからさ」


「おおう……予想以上に豪快ご~かいってか、いっそ男飯おとこメシってレベルで……逆にカッケーわねカヲリちゃん。で、花子ハナコちゃんはダイジョーブ? ていうか庖丁ほーちょーとか持ったことアル? 教えよっか?」


 ルナが喋りつつ、ツルツルと玉ねぎの皮をむいて両端頭のトコを切り落とし、花子へと尋ねると――彼女は自信に溢れた表情で答えた。


「ハナコでなくフローラですケド。……まあ、お舐めでないですわっ。今時イマドキはお嬢様とて、いえ令嬢たる者こそ、〝他の人がやるから自分は出来なくても良い〟など恥を知れというハナシっ……ゆえにこそ、教育くらいは受けておりますわっ! 学園にワンちゃんとか入ってきて、遠巻きに傍観ぼうかん決め込むよーな真似はお嬢様失格ですものねぇ!」


「おぉ……根に持ってんねぇ☆(第23話参照) ちなみにナニ作るのー?」


「ええ……ここに、粉末にお湯を注いだらコーンスープが出来るという不思議なアイテムと、お湯注いで三分経ったらラ~メンが出来るという魔法のグッズがありましてねェ……」


「ウン、教育を受けてても出来るようになったとは言ってないモンね☆ いっそ清々すがすがしいので……とにかくヨシ!」


 ルナが納得しつつ鶏肉を一口大ひとくちだいに切り分け、塩コショウで下味をつけ――次いで、底が深めのフライパンで何かを煮込んでいるすみれに声をかける。


「んでんで、すみれちゃんはナニ作っちゃう系? てか既に、お醤油ショーユのイイニオイしてるんですケド~……さっき牛肉と、あとジャガイモとかニンジンとか炒めてたし……ま、まさかコレって……!?」


「あ、はい。肉じゃがです~」


「ヤッタァァァァ! 文学少女だァァァァァ!」


「〝文学少女=肉じゃが〟なんて概念がいねん、あります? 和風ってことかな……と、良ければルナさん……味見、いかがです?」


「ワオ! するする~、めっちゃ味見する♡ ん~っ……みりん軽くいてて、お砂糖も適量テキリョ~……めっちゃ上品でイイ味でてるぅ~♡」


 すみれが小皿に注いだ肉じゃがの汁に、ルナは幸せそうに舌鼓したづつみを打ちつつ、大きめのオーブントースターのタイマーをセットする――と、花子がその類稀たぐいまれなる手腕で作り上げたコーンスープ(インスタント♡)をすすりつつ、すみれに語り掛けた。


「ウググッ……ルナさんばっかりズルイですわ~! わたくしとてすみれさんの肉じゃが食いてぇですの! すみれさ~ん!?」


「もうすぐ出来るので、待ってても良いと思いますけど……ま、まあせっかくなので、味見どうぞ」


「わーいですわー♡ んん……ほどよい甘辛あまがらさがたまりませんわ~……これぞお袋の……あいえ、ママンの味……すみれママン……♡」


「こ、これくらいで大げさすぎる気が、フフ、しますけど……(何だか、餌付えづけしてるような気分に……ハッ、い、いけませんね、お友達にそんな……)」


 ちょっぴりイケない気持ちが芽生めばえかけたすみれが、軽く頭を振って気を取り直していると――自作の特盛牛丼(豪快♡)を口いっぱいに頬張っていたカヲリが、不意にルナへと尋ねる。


「もぐもぐもぐもぐもぐ、……ゴックン。……んで、ルナはナニ作ってんの?」


「ン? あ~、アタシはね……おっ、できた♪」


 ルナが言うより早く、〝チーン♪〟と音が鳴り(おっ、何の擬音だと思った? ねえねえナニ? チーンって何だと思ったのか言ってみてくださいよォ!)


 大きめのオーブントースターから、ルナが取り出した四人前のは――


「ほいっ。ルナちん特製とくせぇのグラタンと~……あとついでに、タマゴ加えた特製オニオンスープと……またまたついでにあまったタマネギ油で揚げてチップスみたいにしてっから、塩でも付けて食べちゃって~☆」


「手際イイなオイ!? ……んでスゲーウメーなコレ!? 喋りながらコレ作ってたんかよ!?」


「まあ多少、趣味みたいなトコあっかんね~。あ、ちなみにグラタンのホワイトソースは、チーズ隠し味でちょい加えてみました☆ ちょいクリーミー感が出てる気するっしょー、好きなんだチーズ♡」


「ハフッ、ハフッ……や、やべっ、マジで……ウメッ、ウメッ……♪」


「フフ、そんなにガッツいちゃって、はしたないわねカヲリちゃん……おかわりもあるぞ! エンリョするな、育ち盛りなんだから、タクサン食え……」


「くっ、こんな、ウメーもんイッパイで……ウチ、食いすぎちゃう~~~っ♡」


「ククク、さすがエロ研究部の育ち盛り……サカってんねェ……☆(大丈夫? 意味変わってくるぞコレ?)」


 ルナとカヲリは、変な人達だな!(少しはオブラートに包め)


 まあそんな彼女達を――特にルナの手腕を目の当たりにして、すみれと花子が対話する。


「……ルナさん、歌だけでなく料理も上手なんですねぇ……すごく手際よかったですし、実際すごく美味しいですし……もぐもぐ」


「わたくしはすみれさんも凄く上手だと思いますわー! ……でも確かに、ルナさんも上手いですわねぇ……ホント、何でエロ研究部とか言い出したんでしょーね、あの子……マジ謎ですわ」


「それはそう……」


 納得のすみれ、彼女も肉じゃがをそれぞれ四人分を取り分けて持ち寄り――その日は和やかに食事し続けたし、カヲリはただひたすら幸せなデイズ♡だった。


 あと、後に黎ちゃん先生にも差し入れた。気ぃ利くじゃない♡(よかったな♡)


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