私立・聖コープル女子高等学園「エロ研究部へようこそ♡ ……オイようこそっつってんだろ。ナニ引いてんだよ来いよ、良識なんて捨ててかかってこい! このスケベ共がー!」「下品だなぁ……」
第23話 お、オイどうすんだよ……学園に犬、入ってきたぞ……この作品、始まって以来の大ピンチだぞ……(学校あるあるエピソードが?)
第23話 お、オイどうすんだよ……学園に犬、入ってきたぞ……この作品、始まって以来の大ピンチだぞ……(学校あるあるエピソードが?)
その日の昼休み、聖コープル女子高等学園の中庭は、騒然としていた。
「……る、ルナさん。あ……アレは……」
「あー、うん。すみれちゃん……ワンちゃん、入ってきちゃったね~」
迷い込んできたのだろう、見たまま大型犬に分類される体躯を持つ、恐らく犬種はシェパード。鼻筋が長く通った精悍な顔立ちは普段なら見惚れてしまうだろうが、しかしリードも付いていない現状だと話が変わってくる。
すみれなどは怖がっているのか、ルナの手を引こうとする手が震えていた。
「る、ルナさん、少し下がりましょう……噛まれでもしたら、大変ですし」
「んおー? そだね~。ってもしかして、すみれちゃん犬苦手っぽい?」
「いえ、普段はそうでもないですし、小型犬とかはむしろ好きなほうですけど……あれだけ大きくて、リードも付いてないと、やっぱり怖いですよ……」
「あ~確かにね。でもまーダイジョブだよ。なんかあったとしても、すみれちゃんはアタシが守ったげるからさっ」
「だ、ダメですよっ。ルナさんだって、怪我しちゃイヤですから……そんな無理とかしないでくださいね、絶対っ」
「うぐうっ!? ……くっ、すみれちゃん、ヤサシイ……愛を感じるわー♡」
危機感ありありなすみれに比べて、ルナは随分と余裕のあるご様子。
……と、その時、たまたま通りすがった花子も、学園に犬が入ってきたことに気付いたようで――
「――あら? ワンちゃん入ってきちゃったんですのね、どうしましょ――」
「――うおお
「だっだからフローラじゃつんですわ! というかルナさん、何をそんな慌てて……べ、別に近づくつもりもなかったですし……」
「あ、いや何か
「やらんわ何ですのその具体的すぎる寸劇! 不覚にもありありと目に浮かんじゃいましたわよコチラこそ! 全くもう……」
(……正直、私もルナさんの言う通りな感じに考えちゃってたから、呼び止めてくれて助かりましたね……)
結果、
「フッ……ここはウチがいこう」
「な、なに――っ!? お、おまえはカヲリちゃん――!?」
「し、知ってんですのルナ公!?」
「ええ
「ハナコじゃなくフローラですけどわたくし。……まあとにかく、恐ろしい女ですわ……ヤツが敵じゃなかったこと、神に感謝するばかりですわね……」
(ミッション系の学園とはいえ、こんなことで感謝されるとは思わなかったでしょうね、神……)
心の中ですみれがツッコむ中、カヲリは自信に満ち溢れた笑み――というかワンワンを前にしたニヤけ顔で進み、まだ少し離れたところから声をかけようとして。
「ククク、さあ……どっからきたんでちゅか~♡ だいじょーぶだいじょーぶ、怖くないでちゅよ~♡ ほら、おいでおいで――」
『ガルルルルルルル!』
「ちょっと一時撤退なんだぜ」
カヲリちゃんは
さて、ルナ達の傍に戻ってきたカヲリが、腕組してウインクしつつ言うのは。
「ちょっち興奮しすぎちゃってるみたいですね……どうにか落ち着きを取り戻してくれるとイイのですが……」
「か、カヲリちゃん……退き際がよかったのは安心だけど、ギャップどころか豹変ってレベルのアップダウン激しすぎて、色々心配なんだケド……」
「そう言ってくれるなルナ。……まあ、あのワンちゃんシェパードだろ。賢い犬種なんだけどデリケ~トなトコもあるから、多分怖がって緊張してんだろな。尻尾が股に挟まるくらい下向いてて可愛いだろ? だから下手に刺激しないほーがイイだろーな、今は」
「可愛いのが必要な情報か判断に困るトコだけど……ま、まあカヲリちゃんの言う通りね。てか動物好きが高じてか知識エグいわよね、意外にも」
「まあ、他の生徒が近づかないか不安だけども……そこは、ほら」
カヲリが顎で示した先には、他の女子生徒が数名かいた――が、しかし。
『あらあら犬さんですわ、可愛いですわね~でも近づかんときましょオホホ』
『君子危うきに近寄らずですわね~遠巻きに眺めるが吉ですわオホホホ』
「やっぱすげえよお嬢様は。自分の身を守る術は重々承知してるっつか、ぜってー近付いてこねーんだもん。危機回避の意識が根付いてるっつーかな」
『あら、あそこにいらっしゃるのは……運動神経抜群と有名な
『じゃあなんか大丈夫そうですわね。彼女達が……彼女達がきっと、何とかしてくれますわ……!』
「そんなお嬢様共の目がウチらにプレッシャーかけてくるんだ。あの目は裏切りてぇ……他人任せもお嬢様の特権かっつーの、ガハハ。その点、
「ンだからフローラだし、チョコな、たっぷりなのはチョコ! いやそれもおかしいですけども! 何で今その話したんですの!?」
花子はツッコミも元気一杯で結構なことです(済ますな)
さて、とはいえワンちゃんの興奮はいまだ治まらず、下手をすれば怪我人の恐れもある――事情を知らぬ者が通りがからないことを祈る中、不意に現れたのは。
「……ふむ、ここか。おお、確かにいるな……さて、と」
「! れ、
救いがきた――というより、むしろ危機に慄いた様子のルナとカヲリが守ろうと立ち塞がる。ただし守るのは、騒動の原因である犬クンの方だが。
「れ、黎ちゃん
「そ、そうだぜ黎先生! 今はちょっと怖がって、それで興奮して、唸ってるだけだから、だからっ……殺さないでやってくれェ!」
「うおお守るのよワンちゃんを! アタシらエロ研究部の防御を見せてやるわ!」
「オウヨ! 任せとけ! 合わせろルナ、隙間を空けんなよ!」
「ディーフェンッ、ディーフェンッ!」
「ハイヨー、ハイヨーヨイセッセー!」
「カバディ! カバディカバディカバディ!」
「ワッショイ、ワッショイ! エンヤコーラセッセー!」
「………………」
ルナとカヲリの必死のディフェンスを前に、黎は――ぷっ、と噴き出して。
「ぷっ、ふふっ……ははは! おいおい江神、呂波、何を勘違いしている? 木刀も持ってきていないし……それに、あたしは犬好きなんだ。手荒な真似をするつもりなどないし、安心するといい」
「へ? れ、黎先生も、犬好きなんスか?」
「うむ♪ 実際……扱いとて、手馴れたモノだぞ? まあ、見ていろ――」
「―――み、皆さん、危ないですっ!」
突如、割り込んできたのはすみれの声――何と
何が原因かと問われれば、ルナとカヲリの必死の
だが、危機――明らかに興奮した様子のシェパードが、その鋭い牙を剥きだすと、カヲリが咄嗟にルナを庇い。
「っ、下がってろルナ!」
「か、カヲリちゃんだって、危ないじゃな……えっ。……黎ちゃん
今にも飛び掛かろうとする大型犬と、ルナとカヲリの間に――更に割り込んだのは、黎。そんな彼女の自己犠牲とも呼べる行為に、ルナの目頭は熱くなった。
「っ。黎ちゃん先生……アタシ達のために、そんなっ……イヤッ――」
『――ガアッ!』
「………………」
ついに、その牙が黎に向けられた――瞬間。
黎は動じることもなく、一言。
「
――お す わ り――
」
『………………ヒンッ』
「「「ヒエッ……」」」「ですわ……」
黎の放った声は、重く、重く響き――もはや言霊を纏ったかのような、聞いた者を震わせ、支配せんばかりの威圧感を孕んでいた。
『……きゅぅ~ん♡ わんっ、わぉんっ♡』
「しぇ、シェパードのこんな媚びたカワイー声、初めて聴いたんですけどー!?」
ルナがツッコむのも当然、おすわりどころか、もはやお腹を見せて絶対服従のポーズを見せた大型犬は、ワンちゃん♡ の面持ちである。
それを成した絶対支配者たる黎は、シェパードのお腹を撫でながら相変わらずの落ち着きで言う。
「まあシェパードは賢いからな、ああして怖がっているのが原因で興奮していた時は……人間側で毅然と命令して、安心させるように導いてやるのが良い。とはいえ、心得の無い者は真似するな。近くの大人を呼ぶのだぞ。ま、あたしが近くにいれば、どうとでもしてやれるがな。ワハハ」
「アッハイ。……あ、ありがとーございました、黎ちゃん先生」
「なに、気にするな江神。興奮させてしまったのは失策であったとて、皆を守ろうと対峙しただけでも勇気あるぞ。何なら武術でも学ぶか、教えてやるぞ?」
「えっ、守ろうとしたワケでも……あっ、イエその通りス。アッス。そ、その、武術は追々で……追々で、おねがいしまアッス……」
いつもは快活なルナでさえ圧倒されっぱなしの中、〝ワハハ〟と豪快に笑う黎。
その後、シェパードのク~ちゃん(雌でした♡)は無事、恐縮する飼い主さんに引き取られていき、事なきを得た。
……結局、この事件で残った最大の印象を、すみれがぼんやりと思う。
(……とりあえず
何かもう黎ちゃん先生、全部持ってっちゃうし、パワー有りすぎなンだわ。
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