第6話 「いや~ん怖~い♡」的なギャップ萌えで男共をブッ潰せ♡ ……いやホラーは待てガチ無理系は違うやろってウオアァァア(※怖い話とかでは全然ないです)

「オトコはギャップや弱々しさに魅力を感じる愚かな生き物と聞く――というワケで今日はホラーでも見て見聞を広めつつ、アタシらのギャップ萌えという名の兵器ARMSを磨きマース♡」


「とんだジャバウォックだぜルナさんよ。まあ唐突なのにも慣れてきたけども」


 ルナとカヲリの対話から入るの始めやすいです(※私情)


 それはそうと、ルナは薄型テレビの設置を進め、それを手伝っていた花子が呆れ声を発した。


「全くもう……急に〝使ってないテレビとかないー?〟なんて聞いてくるから、何事かと思えば……そんなことに使うつもりだったなんて。まあ活動の一環ということで割り切りますけれど、いつでも用意してあげられるわけじゃありませんのよ?」


「ウスッ! あざッス! 最優良スポンサーの花子フローラちゃん! マジ感謝してるッス! さすが学園屈指のお嬢様オブお嬢様ァーッス!」


「さすがだぜ花子フローラ! 茶ぁ冷えてんぞ、ほれ飲んでけ飲んでけ!」


「こんな時だけフローラって正しく呼びやがって、ルナさんもカヲリさんも調子いいったらねーですわ! もっと褒め称えあそばせ!」


 調子のいい女・ルナとカヲリに、負けないほど調子のいい花子であった。


 さて、Blu-rayブルーレイレコーダーの準備まで終えたルナが、ディスクを挿入しながら邪悪な笑みを浮かべる。


「イーッヒッヒ……さあ、これから始まる恐怖の時間、耐えられるかしら……ギャップ萌え云々どころでなく、おしっこチビっちゃっても責任取れないわよ~……? そ・れ・じゃ……スッ、タァーット♡」


※『 』が映像作品の台詞と思ってくださいネ♡


『……ザザッ……窓の外、ザザッ……この世のものと……思えな……ザザッ』


「再生し始めは雑音ノイズが出やすいの、あるあるだな。てか接続ワリーのかもな……っと、ウチ便所いってくら、テキトーに進めといてくれ」


「あいよー、お茶飲みすぎるからよカヲリちゃーん。まあいってらー」


「全くもー、花も恥じらう年頃の乙女がお便所だなんて、お下品ですわっ」


 マイペースに退室していったカヲリを、ルナと花子がそれぞれ見送る。


 と、ルナは即座にリモコンを操作し、一時停止ボタンを押し――それを見ていたすみれが、今まで沈黙していた口を開いた。


「あ、一時停止するんですね……カヲリさんを待つんですか?」


「ん? ん~、そりゃまあね~。途中からじゃ面白くないだろし、みんなで楽しみたいじゃん、こういうのさー」


「そうですか……ふふっ、ルナさんのそういう気遣いできるとこ、素敵ですね♡」


「……へっ!? そ、そお? そっかな~、な、なんか照れるにゃ~!」


 ある意味、ギャップ萌えは既に成功している気がする。すみれに褒められたことで頬を赤らめて身振りするルナは、何となく仕草も愛らしい。


 さて、そこで花子が、ふとした疑問をそのまま口に出す。


「というか、突然ギャップ萌えを研究するだなんて……まさかルナさん、誰かしら想い人などでも……だ、男性の好みタイプとか……!?(※興味津々)」


「は? オトコの好みタイプとか別に全くこれっぽっちもないケド? 強いていうならニュータイプよりオールドタイプってくらい?」


「じゃあ何で始めようっつったんですのコレ! コレ今なんの時間ですのコラ!?」


「ウッフフ、言ったでしょ、イザという時のために兵器ARMSを磨くって……武器ってのは多いほうがイイじゃな~い? ……ってのは建前で」


 言葉を区切ったルナが、軽く鼻の頭を人差し指でかきながら、照れ顔で真意を明かす。


「なんてーか、こーやって皆でワイワイ楽しくやるのも、たまにはイイかなーって……まあもちろん、部活動だけどね? でも楽しくやってこそ、ってカンジあるじゃん? この……エロ研究部の仲間でさっ」


「る、ルナさん……エロ研究部じゃねーっつーの、ですのっ……でも、ええ、ええ……わかりますわ。良い采配ですわ、ルナさん……!」


「へへっ、そう褒められると照れるってばよ……花子ハナコちゃんっ」


「もうフローラじゃなくなってますわね、感謝が長持ちしねぇ燃費の悪い女ですわ……でも、今だけは………よくってよ!!」


 まあ結局のところ皆で遊ぼうというだけの話だが、ルナの主張を花子はいたく気に入っているようだ。


 と、そんなこんなで話している内に、便ッ……お花摘みからカヲリが戻ってきたようで。


「んお? 静かだな、もう終わったのか? で、どうよギャップ萌えとかは――」


「おっ、おかえりカヲリちゃん~。んじゃエロ研究部が勢ぞろいしたトコで、改めてっ……スンッ、トゥアーッ……ットゥオ♡」(※スタートの意)


「へっ? あれ、まだ――」


 再生ボタンを押し、一時停止から解き放たれた映像は――瞬間。


『う゛ぇろろぉごぉろろろぉあ゛あ゛あ゛あ゛ァ゛ァ゛!!』

『ギャアアアアアア!!』


「も、もんじょわぁぁぁ! ですわっ!?」

「きゃあっ!?」

「わっ、音量が大きいですね」

「ヒューッ♪ やっぱ迫力あるゎ……ん?」


 それは、些細な違和感――けれど確かに、混じっていた。

 その違和を聞き逃さなかったルナが、そのまま言及する。


「……今、〝きゃあっ〟って言った? ……ん、でも……誰?」

「………………」


 沈黙――だが、そこでカヲリがいつもの軽い調子で言う。


「……花子ハナコじゃね? ほら、お嬢様だし、可愛いトコあるしな?」


「ハナコじゃねーっつのですわ。でも……えっ、そ、そうだったかしら……いやでも、可愛い、か……そうかな……そうかも……」


 満更でなさそうな花子――だが、ルナは首を横に振る。


「いや花子ハナコちゃんは〝もんじょわーですわ〟でしょ完全に。なんなら一番デカかったわ、声。お下品でしてよ」


「い、いえモンジョワーっておフランス的には掛け声ですし! ゆえにお上品ですわよ!?」


「フランス=上品とか言い出しちゃうと、なんちゃってお嬢様感が強まっちゃうよ花子ハナコちゃん。でもまあ、アレね……花子ちゃんじゃないわね。てことは現状、次のようになるワケよ」


・も、もんじょわぁぁぁ! ですわっ!?←花子ちゃん。もうちょいお淑やかにね?

・きゃあっ!?←?

・わっ、音量が大きいですね←ゼッタイすみれちゃん♡ 落ち着いてるし上品♡

・ヒューッ♪ やっぱ迫力あるゎ……ん?←ア・タ・シルナ


「となると~、消去法で、残ったのは~……?」

「………………」


 ルナが視線を向けると、押されたように、ついっ、と顔をそむけるカヲリ。


 ……ちなみにこの間も、映像は流れ続けていて。


『っうぅわあぁ~~~ぁあ!!』


「ひんっ!? ……ぅ」


 今度は完全に、聞き違いではない――悲鳴は、カヲリのものだった。


 身長はいずれ180に届くのではないか、普段から粗野な言動で、運動神経抜群で時には運動部の助っ人に駆り出されることもある――フィジカル無双・呂波ろなみカヲリのものだった。


 そんな彼女が、辛うじて言い訳を紡ぐ、が。


「……アレだ、しゃっくり」


「あんま引っ張りすぎると逆に深手になっちゃうよカヲリちゃ~ん? ……ね、ホントは? どーなの?」


「……っ、っ……!」


『恋のお話? ザザッ聞かせて……』


 ルナの言う通り、長引かせても苦しいだけ――それを理解して観念したのか、カヲリは自棄やけっぽい調子で勢いづけようとした。


「だっ……誰だって苦手なモンくらいあんだろ!? そっ、それに別に、そんな怖いワケでもねーし! 音デカいと、つい反応しちまうだけ――」


『誰!? ねえザザッ誰なの!? 怖いよお!!』


「やっ! んっ……ん゛、ん゛ん゛~っ……! うぅ~っ……」


 微妙に接続が悪いのも味になってしまっているのか、どうにも耐えがたい様子のカヲリ。


 そんな彼女を見て、ルナは何となく納得した表情で頷いていた。


「そいえばアダルトVRの話の時(※第4話参照)、ホラー苦手なら見なきゃイイ、みたいなコト言ってたもんね……結果的にだけど、被害者役がハマっちゃってたのね。オッ、予言者かなアタシ。……にしても……」


『そうだチカザザッ……勃ザザッだ!!』


「ひ、ひやぁぁ……あぅ」


「「「………………」」」


 いつもの粗野な言動と違い、弱々しい声を漏らす、そんなカヲリを見て――ルナ・すみれ・花子が思うのは。


(……カヲリちゃんカワイーわね……)

(可愛いですねぇ……)

(可愛いですわ……)


『独特なニオイザザッするな……ホントにザザッ食べられるの? ラッコザザッて……』


「ひ、ひん……ら、ラッコさんがぁ……」


(可愛い)

(可愛い)

(可愛い)


 仲間内ではあるものの、ギャップ萌えには成功している気がする。


 ……ちなみに流れている映像作品について、すみれが軽く思うのは。


(……ま、まあサイコホラーって御本家さんも公言してましたし、ホラーということで良い……ですよね。……うん)


 細かいことは置いといて。全力で置いといて。お願い置いといて。

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