第2話 オイ「チョコ」の真ん中を伏字にすんじゃねーぞ! いいか絶対だぞ、絶対だかんな!

「とゆーわけで♡ 差し入れにチョコのお菓子、いっぱい買ってきましたー♡」


「何が〝とゆーわけ〟なのか知らんが、でかしたルナ。食っていい?」


「まあ待ちたまえカヲリちゃん。大事な話があるわ……いいかね。心して聞くがよい」


 かなり詰め込まれた買い物袋に手を伸ばそうとするカヲリを、ルナがなぜか厳かに制止する。


 椅子に座ったルナが机に両肘を立てて両手を組み、ふう、と一息ついて、いっそ荘厳な雰囲気を醸しながら言い放ったのは。




「今から……チョコの真ん中を伏字にするコト……!」


「……貴様ッ……!」




 カヲリは激怒した。かの誨淫導欲かいいんどうよくの女をシバかねばならぬと決意した。

 ゆえに、ルナのあまりにもあんまりな提案に対して、カヲリはこう答える。



最高サイコーにイカれてんじゃねーかッ……! なあオイ、もう待ちきれねーよぉ……早くチ〇コ出してくれよぉ♡」


「さすが我が心友〝即ノリのカヲリ〟(今つけた異名)ね、話が早いわ……ね、ね、どれにする~? おいしそ~なチ〇コいっぱいで迷っちゃうんですケド~♡」


「ちょっオイッ見ろルナこれ、これっ……ミルクチ〇コじゃねーか! 最初からクライマックスだぞオイ! どーしてくれんだコレェ!」


「ちょっカヲリちゃん、こっちのっ、コレッ……ビッグサイズのチ〇コよ! 当社比で2倍だって! ナニ測ってんのよ当社! いやチ〇コだっつーね!?」


「お、おめーそんな大きいチ〇コ、お口に入りきんねーだろッ……♡ ちょっとずつペロペロするしかねーじゃんッ……♡」


「ヤ、ヤバイじゃんチ〇コ……思いのほかエロ研究部してんじゃん! 可能性の獣じゃんチ〇コ!」


(下品だなぁ……)


 自分ルールで騒ぎまくるルナとカヲリに、少し離れて座っていたすみれが黙々と読書しつつ呆れる……が、同じ室内という閉鎖空間では、我関せずを貫くことなど出来ず。


 大盛り上がりのチ〇隊長コマンダールナの毒牙が、すみれにも襲いかかる。


「ゴクリッ……ね、ねえねえ、すみれちゃんも……差し入れ、おひとついかが~? ここに、ほら……甘くて美味しい~のがあるんですケドぉ~……?」


「……あ、はあ。じゃあ……」


「「……ヒュ~~~ッ……!」」


 意を得たり、とルナがカヲリと共に、固唾を呑んで見守っていると。


 ついに買い物袋へと手を伸ばしたすみれが、中から一つ取り出しつつ一言――!


「ありがたく頂きますね……ショコラ」


「な、なにィ!? ちょっすみれちゃんズルイんですけど、それは……それは、だってさぁ!?」


「おや、別にルール違反ではないはずですが……あ、美味しいですね、新作ですか、このチコラァタ」


「な、なにィ!? もはやナニ語かもわかんないし~! チックショー!」


「トルコ語ですけど……というかさっきからサッカー漫画で必殺技を喰らったようなリアクション気になるんですが……ん? サッカー漫画で必殺技を? ……私も何かおかしなこと言ってますかね……?」


「くううっ、おのれーここぞとばかりに知的メガネキャラをアピールしおってー! 許さんっ……絶対に許さんぞぉー! でもそんなすみれちゃんのコト、アタシ結構好きさ!」


「あ、どうもです。……ちなみに中国語ならチャオコォリィとかありますよ。あ、これも新作……いただきますね。……ン゛ッ!? ッ、ケ、ケホッ……ケホッ!」


 口に入れた瞬間にせてしまうすみれを、さしものルナも慌てて気遣う。


「えっ、ちょっ、すみれちゃん、だ、大丈夫? 気管とか入っちゃった? なんか飲む?」


「コホッ……す、すいません、大丈夫です……ちょ、ちょっとビックリしちゃっただけで。その、これ……」


 どうやら先ほど食べたものが原因らしく、すみれは咳き込んだことが恥ずかしいのか、薄っすらと頬を赤らめてはにかんだ顔で言う。



「すっごく……苦かったです、このチ〇コ」※カカオ99%


「「ぶふーーーーっ!!」」



 文学少女、おまえもか。

 思いがけぬ伏兵すみれの一撃に、思わず吹き出してしまったルナとカヲリが、両手で腹部を抑えながら言葉を交わす。


「そ、そりゃあねっ……苦いのもあるよね! そのっ……チ〇コだもんね!?」


「バッカおまえ、チ〇コなら苦いのが普通だろ! 〝あなたのチ〇コおいしい♡〟とか幻想だから、チ〇コ本来の味じゃねーから! あっ成分的な意味でな? ぶふっ」


「す、すみれちゃん、カヲリちゃん、コレ……チ〇コの中から、うっ、くっ……トロッとしたのが、で、出てくるって……み、ミルク味なんだって……ぶふっ!」


「お、オマエそれもう紛うことなくチ〇コじゃねーかっ……どこに出しても恥ずかしくない、間違いなく大人気のチ〇コだっつーの……!」


「あ、アタシとしては、どこに出してもってんなら……ふぶっ、お口の中に出すコトをオススメしたいわっ……こう、チ〇コを口いっぱいに頬張ってね……!?」


「で、チ〇コから出てくるミルクをたっぷり味わうっつう――」



「―――あなた達! 何て話をしてるんですのーーーっ!!」


「「!!!?」」



 大声が響いた瞬間、勢いよく音を立てて開かれた扉に、ビクッと身を強張らせるルナとカヲリ。


 飛び込んできたのは、時間をかけて整えられたのだろう金髪が麗しく、いかにも〝お嬢様〟という風体の学園生。

 ただ、その品の良い顔立ちは、今や真っ赤に紅潮しており、明らかな怒りが見て取れた。


 そんなお嬢様に、ルナは慌てて弁解しようとする。


「い、いやいや、違うんだって! アタシたちは、この――」


「っ、外まで聞こえるような、そんな大声で……そんな、そんな話を……そんなっ!」


 しかし弁解など聞こえていないようで、お嬢様は大いに糾弾の声を上げた。



「―――おチ●チ●の話なんてして良いと思ってるんですの!?」


「「………………」」


「なんですの、この無言。なんなんですの、この空気」


 お嬢様の発言に、完全に神妙な面持ちになってしまったルナとカヲリが、ぽつぽつと呟くのは。


花子ハナコちゃん……今のはさすがにナイわ」


「オイ……いい加減にしろよ花子ハナコ。下品だぞ」


「おおオマッああアナタ方にだきゃ言われたくないのですけれど!? アナタ方がしていた話でしょ!? ふざっけんじゃねーですわよぉ!?」


 もっともではあるし、詳しい事情を知らない花子なので仕方ないかもしれないが、彼女には他にも不満があるようで。


「……つーかわたくしの名前は花子フローラ! 花子と書いてフローラと読むんですけれど!? 花の女神の意を冠するわたくしの名、間違えないでくださいまし!?」


「あ、うん、わかってるよ。ゴメンネ花子ハナコちゃん」


「ややこしいよな、初見じゃ絶対わかんねーだろ。おまえも苦労してんだよな花子ハナコ


「殺すぞ! じゃなく……ぶっ殺しますわよコラ!?」


花子ハナコちゃんそこ訂正する必要あった?」


 ルナがツッコみつつ、花子(ご自由にお呼びください)へと更に言葉を投げかける。


「ていうか花子ハナコちゃん……いきなりヤバイって。もし仮に初対面の人が今いたとしたら、花子ちゃんの第一印象〝チ●チ●お嬢様〟だよ? 耐えれる?」


「だっ、だから、何を訳の分からないこと言って……そもそも、その、チ……ンンッ! お下品な話をしていたのは、あなた達でしょーに!」


「いや~知りませんな~? アタシたち、花子ハナコちゃんの言うような話とかしてた覚えないですな~? いやホント、さすがにエロ研究部といえど、お嬢様がそんなお下品でイイんざますかな~?」


「なっ、ぐっ、ぐぬぬ~っ……お、おのれー、ですわー……!」


 握り拳をぷるぷると震わせる花子が、うるっ、と瞳を潤ませて、座って成り行きを見守るすみれの膝に泣きつく。


「ふ、ふえ~~~ん! すみれさん、あの変な人たちが、わたくしをイジめますの~!」


「あ、えと、ハナッ……花子フローラさん、大丈夫ですよ。よしよし(どうしよう、チ○コの説明とか、事が事だけに面倒だなぁ……)」


「ていうかさっきエロ研究部とか、よう分からんこと言われたんですけど、マジなんなんですの~!? 文芸同好会でしょ!? ふえ~ん!」


(そういえば、そこからか……説明めんどいなぁ……)


 なかなか困り顔のすみれに、ルナがなぜか悔しそうに親指の爪を噛む。


「あっ、あっ。くっ……いいな、すみれちゃんのお膝……スベスベのヒッザァ……」


「ピッツァみてーに言うな。しかし独り占めですなぁ。どーすんだルナ?」


「ええい、捨て置けぬわー!(ぬわー!) ちょっと花子ハナコちゃん! コッチ、コッチ見て!」


「う、うう、ハナコじゃねーし……なんなんですのぉ~……」


 すみれの膝からは離れず、顔だけを動かす花子に、ルナが買い物袋を見せながら言う。


「ゴメンゴメン! ほらほらコレでも食べて機嫌直して♡ いっぱい買ってきたからさ……チ○コ♡」


「はっ……はああああ!? 買ってきたって何ですの!? 女子高生がそんなモノ買って許されると思ってんですの!? ……ん? いや、まずどこで売って……ん!? ちゃ、着脱可能!? 世界にはまだまだわたくしの知らない不思議が!?」


「……んっ? 何を……いやナニを買ってきたって? ねえねえ、アタシがナニを買ってきたと思ってるの?」


「えっ。や、だから、お、チン……ン゛ン゛ッ! だ、っから……そんっ……!」


「え~、ナニナニ~? さっきあんな大声で言ってたじゃ~ん! ほらほら、教えてよ花子ハナコちゃん~。アタシが買ってきたのは……ナ・ニ?」


「だっ……お、ち……ちが……だ、せ……ぺ……っ!」


 なぜか追いつめられた形になった花子が、先ほどの言葉だけは口にすまいと、あらゆる単語を思い浮かべ――そして最後に絞りだしたのは。



   「ペ   ニ   ス  !!!!」



 その声は非常に、非常に大きく轟き、今日一番、よく響いたという―――………。



 あと花子は暫くの間、敬意をもって〝おチン夫人〟とか〝ペニスの商人〟とか呼ばれた。




―――――――★★★――――――――


 余談ですが作者はコレいちいち単語を入れてから、真ん中を伏字に修正して「チ○コ」と書いていたのですが、最初は真ん中の文字「ョ」と「ン」のどっちのほうで打っていたでしょうか☆


 あとついでに読んでくださった皆様に〝チ○コ占い〟です♡

「チ○コ」って単語を見るたびに、○の中に↓↓


「ョ」を思い浮かべていた方、その純粋な心に敬意を表します。

 なので是非とも★とか♡とか押してってくださいね♡


「ン」を入れていた方。貴様は立派なエロ研究部員だ。さ、★と♡を押していけ……遠慮するな、我々はもう同志だ……。

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