私立・聖コープル女子高等学園「エロ研究部へようこそ♡ ……オイようこそっつってんだろ。ナニ引いてんだよ来いよ、良識なんて捨ててかかってこい! このスケベ共がー!」「下品だなぁ……」
第1話 エロ研究部・始動! ……えっ、部じゃない? え……どゆこと、じゃあ何なの……?
私立・聖コープル女子高等学園「エロ研究部へようこそ♡ ……オイようこそっつってんだろ。ナニ引いてんだよ来いよ、良識なんて捨ててかかってこい! このスケベ共がー!」「下品だなぁ……」
初美陽一
第1部・4月から7月中旬までの彼女たち☆(一学期)
第1話 エロ研究部・始動! ……えっ、部じゃない? え……どゆこと、じゃあ何なの……?
「エロ研究部♡ 爆誕しました~っ、イエーイ!」
「ウェ~~~イ!」
ここ、私立・
欧州系の血統を連想させる金髪は室内にあっても煌びやかで、照明の光を反射して輝いてさえ見える。
肌の美白は言わずもがなで、透き通るような繊細さだ。
あえて言おう。美少女の無駄遣いである、と。
そんなルナの〝エロ研究部・爆誕宣言〟に先程追従していた、抜群のスタイルと長身が特徴的な
「いやー、ついにヤッちまったな……エロ研究部だぞオイ? お嬢様学園って有名なココで、こんなヤベー部、設立しちまうとか……ウチら完全にイカれてんだろ……!」
「ねっ、ねっ、ヤバイよね~っ……こんなんもう前代未聞っしょ! アタシたちの存在が、この学園に間違いなく大きな爪痕を残すっしょ……!」
「いやもう今の時点で
「もはや
アホ……もとい二人の女の子が仲良く盛り上がる、心温まるワンシーンである(配慮)。
と、今やニコニコ笑顔でテンション上昇が止まらないルナが、この部室に存在する三人目の少女へと声をかけた。
「ね、ね、すみれちゃんもそう思うっしょ? ねーねー、どうどう今の心境は
「………………」
声をかけられたのに気づいていないのか、簡素なパイプ椅子に座って黙々と本を読み続ける少女。
彼女の名は
フレームがウェリントン型の眼鏡は上品な印象で、ただそこに座っているだけで絵になる、まさに文学少女と呼ばれて恥じない装いだ。
そんな彼女――すみれが少しばかり遅れて反応を返す。
「……え? あ、私ですか? す、すみません、集中してて、すぐ気付けなくって」
「ウェイウェ~イ! ちょも~っ
「あ、はあ……江神さん今まであんまり喋ったことないのに、いきなり名前に〝ちゃん〟付けしてくるって距離の詰め方エグいなって思ってますけど……」
「いやアタシへの感想じゃなくてね!? てか寂しいコト言わないでよ
「は、はあ、圧がすごいですね……じゃあルナさん……って、エロ研究部? いえ、あの――」
すみれが何か発言しようとするも、やや乱雑な言葉遣いのカヲリが先ほどのルナの発言を拾う。
「おいルナ、
「えっマジ? アタシ無意識にエロ部活動ヤッちゃってる? エロの
「ヤベーよ、間違いねーよ! さすがこのお嬢様学園でエロ研究部とか言い出したイカれた女だな……しかもミッション系だぞココ。逆に尊敬するよ」
「ふへへ、いやいやそんな……カヲリちゃんだってお嬢様学園とは到底思えないヤンキーじみた口調、パンクでシビれるわー♡」
「褒められてンのか微妙なトコだが、まあまあ
「……ちょっとアンタ何言ってんの、ホンットそれさぁ…………エロいよ! なんだか名器じゃん……! カヲリちゃんもイイカンジにエロ研究部してんじゃん……!」
「へへっ、かたじけねぇな……何かウチもテンション上がってきたっつーか、悪くねーかもなエロ研究部――」
「(下品だなぁ……)ってあの、待ってください、お二人とも……待って、本当に待って、聞いてくださいって。だから、あのですね?」
アホ二人(配慮ムリです)が好き放題に盛り上がる中、すみれがおずおずと手を挙げながら話に割り込み、指摘する事柄とは。
「ここ、部じゃなくて同好会ですよ?」
「「……………は?」」
「いえだって、今日きてない一人を入れても、四人しか所属してないですし……うちの学園、部としては最低でも五人は必要ですし。……まあ五人以上だったとしても、同好会スタートで様子見みたいな感じになると思いますけど」
「「………………」」
思いがけぬ事実に沈黙する二人――だが、ルナが慌てて(無駄な)抵抗をすべく反論を始める。
「ちょ、ちょちょっ……それはヤバイ、同好会はダメだってー!? だってさ……〝研究部〟ならさ!? まだ知的好奇心とかそういうのでイケるじゃん、
「あ、そういう恥じらいはあるんですね……基準がよくわかんないな……ていうか、その……エロなんとかっていうのも、違いますよ?」
「は? ……ちょ、待って待ってすみれちゃん、怖い……コワイよお! なんなの、何を言おうとしてんの!? アタシら何だっていうの――」
「〝文芸同好会〟ですよ」
「イヤーーーァ!? ナンデ!? ブンゲー、ナンデ!? 言ったじゃんアタシ、エロ研究部やろーよって言ったじゃーーーーん!?」
「受理されるわけないですよ。どう考えても棄却されますから、書き直して提出しましたよ、申請書。ていうか承認のプリント、コピーして渡したじゃないですか。文芸同好会って書いてましたし、他にも詳細事項とか書いてましたよ」
「見てねぇーーーっ! 活字、読むの苦手ぇーーー! 頭イタくなるのーーー!」
「読んでくださいよ、それくらい我慢して」
「そらご
「だから、そういうことになっちゃうんですよ」
「うっ……うぉあぁぁぁ……恥ずい、恥ずすぎるうぅ……」
冷静に考えれば当然すぎる話だが、ルナはガックリと膝を突いてうなだれ、煩悶する。
……が、ついでとばかりに、すみれは追い討ちの言葉を。
「あとちなみに私達以外にも、第一文芸部と第二文芸部ってありますからね」
「ウボァーーーーー! じゃあもうアタシら三軍じゃん! 第三野球部じゃん! いや誰がクズの雑草じゃい! うわーーーーーん!!」
もはや駄々っ子のようにジタバタするルナ、「うーん」と呆れ気味なすみれ。
……だがここで、抜群の運動神経と長身という恵まれたフィジカルを現在進行形で無駄遣いしている女・カヲリが、ルナへと意見を放つ。
「……いや待て、ルナ……考えてもみろ。ウチらが百歩譲って〝文芸同好会〟だとしても、だ」
「いえ百歩譲るまでもなく、その場で文句ナシの〝文芸同好会〟なんですよカヲリさん」
「すみれは黙ってな! この座れば牡丹の文学美少女が! ……で、だ。第一・第二文芸部があるのは
「! カヲリちゃん……それって、つまり……アタシたちは……!」
ハッ、と床から身を起こしたルナに、カヲリが述べる決定的な結論とは。
「そう、ウチらのポジションは……言うなれば〝独立遊軍〟……!」
「……飛信隊じゃん……! マジか……マジかぁ……!」
「ウチらまだまだ負けてねーかんな……いつかは天下の大将軍だぞオイ……!」
「いやあの、待ってください。色々と待ってほしいですけど、うーん、とりあえず……」
再度、サイドから切り込んでストップをかけるすみれが、指摘するのは。
「第三野球部とかキン〇ダムとかの話が飛び出すのは、女子高生の話題としてはどうかと……エロ研究とかそういうのが無いのは、まあむしろ良いんですけど……」
「なっ、すみれちゃん! 第三野球部、は、まあともかく……キン〇ダムは現役でしょーが! 実写化もしてるし! た〇お様の大活躍、見てないワケ!?」
「女子高生的にはせめてヤ〇ケンさんとかハ〇カンさんとかじゃ……いえまあ、好みを否定するわけじゃないですし、良さも分かりますけど……って、その話はもう良くって――」
「あっちなみに第三野球部を否定するワケじゃなくて。名作だけどね、名作だけどでもホラ、女子高生の話題としちゃどうかなって、さすがに思っちゃっただけってかね――」
「いえもう良いんですよ第三野球部の話も。掘り下げなくて良いですって。何なんですかもう、ここまで結構、第三野球部の話ばっかですよ。エロ研究とか何とかはどこ行ったんですか。いえまあ、しなくて良いんですけど、一貫性っていうか――」
大人しく見えて結構つらつらとツッコむ、そんなすみれに、ふと思いついたようにカヲリが尋ねる。
「ていうか……すみれこそ、よっぽど文芸部とか似合いそうなんだけどよ……何で第一だか第二だかのほうじゃなく、コッチ入ったんだ? ルナに誘われたのは知ってっけど……意外と付き合いイイ感じ?」
「え? ああ……いえ、気楽なので。第一文芸部は〝小説や創作に本気で取り組みたい人〟が所属して、第二文芸部は〝第一ほどじゃないけど創作したり、皆で読み合いしたりワイワイ楽しみたい人〟が所属する感じで……私は〝
「ほーん、なるほどねー……でも話してるカンジじゃ、結構マンガとかも知ってるっぽいし……意外とさっきから読んでるのも漫画とかだったりすんの?」
「いえ、普通に小説ですよ。ほら」
すみれが読んでいた本を反転して適当にページを見せると、なぜか怯えるルナとカヲリ。
「ヒイッ、フツーにショーセツ! 活字イッパイ! アタシ、アタマイタイ!」
「やべーぞブンガクショージョだ! チックショー頭よさげなムーヴしやがってー! 調子に乗んじゃねーぞー!」
「うぐぐ、なになに……? 秘めた、あー、なにこれ……
「ハハハ……お二人とも、元気ですね」
つい失笑するすみれだが、敗北感を禁じ得ないルナとカヲリが「ムムム、こりゃたまらん」とばかりに退散しようと捨て台詞を吐く。
「お、覚えてなさいよね! この、このっ……メガネが似合う知的美人~!」
「次は負けねーかんな! このインテリキャラがー!」
「やーい、すみれちゃんの美白の殿堂入り~! 珠のお肌~!」
「チッ、落ち着いた風情してんじゃねーよ! 美人女将かっつーの~!」
「今日のトコは見逃してやるだけだかんね! 今度ゴハンいこーね♡」
「エロ研究部(言い張る)の設立記念だなァ~オイ~~~! じゃーなァ!」
「あ、はーい、お疲れ様ですー」
捨て台詞だか褒め言葉だか良く分からない言動を残し、そのまま部室……部室? 会室? とにかく部屋を出ていくルナとカヲリ。
残ったすみれは、ふう、と息をついて本のページを自分の側へ向け直し、小さく呟く。
「まだ時間ありますし……もう少し読んでから、帰りましょうか。続きは、と……」
落ち着いた動作で、静かな光を湛えてさえいるような大きな瞳を向け、並ぶ文字へと眼鏡越しに視線を走らせる。
名実ともに文学少女に相応しき、清廉ささえ感じさせる面立ちで、彼女が頭の中に反芻する物語とは。
(―――〝秘めた
官能小説だし、何なら一番エロ研究部してた。
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