第73話 処刑人 ⑤
【十兵衛side】
売れない浮世絵師 雪士朗……
奴の目を見た瞬間に単なる絵師だとは思えなかった。
あの目は人を殺めた奴の目だ。
左近様は『良い似顔絵師が見つかった ! 』と喜んでいたが、無闇矢鱈に左近様に近付けるのは危険だと思い半兵衛に頼み光矢忍者の腕利きを借り雪士朗を見張らせた。
「まさか、処刑人だったとはな……
当たって欲しく無い勘に限って当たるものだな 」
ため息まじりに半兵衛からの報告に思わず愚痴を漏らしてしまう。
「引き続き監視はしますが……本当に奴の仕事を妨害しなくて良いのですか ?」
「……監視だけでよい。 幕府や左近様の害に成らないのなら静観しておくのだ」
左近様が人々の光なら、某が闇を引き受けよう。
◇◇◇
【
公儀隠密の伊賀忍者から報告を聞いている。
あの雲のように掴みどころのなかった十兵衛が左近の為とは云え裏の仕事をするとは想わなんだ。
左近に出逢わなければ、剣の修行と称して流浪の旅にでていただろう。
しかし、まだまだ未熟……
「
そして、
氏直は既に人に非ず、魯西亜の怪人ラスプーチンに寄って人魚の肉を食べて化物に成っている。
これまで、伊賀者に暗殺を命令したが いずれも失敗した。
斬っただけでは、傷が修復されて死なぬと報告を受けておる。
殺れるな、義仙!」
「はい、父上。 拙者の部下の中にいる一番の使い手である
儂と側室の間に生まれた息子、十兵衛の弟である柳生烈堂義仙。
十兵衛の知らない弟に裏柳生を任せている。
いずれは、左近に任せようと思っていたのだが、
烈堂に裏柳生の総帥を任せた方が良さそうだな。
◇◇◇
【
父上より重要な任務を
一刀は儂の良き友であり切磋琢磨する剣士でもある。
剣士としてはもちろんだが、奥方と息子 大五郎を愛する優しい一面もある。
裏柳生の剣士たちと一緒に北条の居る小田原に行ってもらわねば成らぬのは、子煩悩な一刀には申し訳なく思うが相手が化物なら普通の剣士には斬れぬであろう。
それにしても、兄 十兵衛が心酔する吉良上野介と云う男に興味が出てきた。
いったい、どういう男なのだろうか ?
一応、報告があがっているが、どうにも要領を得ない。
やはり、自分の目で確かめるべきか……
「潮来一刀、参りました 」
「うむ、よく来てくれた 一刀。
実は、父 宗矩から密命がくだった。
カクカクシカジカコウコウ と云う訳で、北条氏直を斬ってもらいたい 」
相手が化物と云うことで、
生きて帰ってこいよ、一刀 …………
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