第63話 そして世直し旅 ⑤

【左近side】


  赤穂藩に入り情報収集する為にお茶屋さんに入ったのだけど、 ホッちゃん堀部安兵衛カンちゃん神崎与五郎の人相が悪いから、お店の娘さん店員が怖がって聞けなかったの。


「ちょっと、ホッちゃん堀部安兵衛カンちゃん神崎与五郎とおじさま達 !

 ムスッ としてないで、笑顔でいないと幸せが逃げていくわよ !」


「ホッちゃんとは儂のことか ? 」

「カンちゃん……」


  他の赤穂藩士の四人は笑いを堪えているわ。

  わたし、おかしい事を言ったかしら ?

  とにかく邪魔だから離れてもらった。

  そして、あらためてお茶屋さんのお品ちゃんに聞いた。

  やはり噂話は、若い女の子の方が詳しいものね。

  それに女の子同士だから左近は男だろう、気を使う必要も無いのだから。


  お品ちゃんが云うには最近、花嫁泥棒がいるとのこと。


「呉服店さの屋の娘 おきぬちゃんが、花婿である酒屋 加賀屋 純一郎さんの元に向かう花婿行列。


  夜に出発して花婿の家に向かう途中、賊に襲われたの。

  仲人を含めて行列に参加した人は斬り殺されて、花婿が乗っていた駕籠かごごと消えてしまって、運良く生き残った加賀屋の奉公人が花婿の純一郎さんに知らせたのだけど……

  その純一郎さんも天狗面を被った賊に拐われてしまって大騒ぎだったのよ。


  その事件を皮切りに、次々と花嫁と花婿が拐われているの、天狗面の賊に !」


  赤穂藩士のおじさま達が俯向うつむいていると云うことは……


「浅野内匠頭の仕業か、噂通りの女好きにしても酷すぎるな !

  これは看過できぬぞ 」


徳ちゃん徳松が、わたしのセリフを取ったぁ~ ! 」

「とっ 徳ちゃん…… 」


 

 激おこぷんぷん丸でいると、呆れたように見ているお爺さん達宗治、如雲斉


「茶番劇は、それまでだ !

  いかに剣の達人だろうと、鉄砲にはかなうまい ! 」


  声のした方を見ると、火縄銃を構えている浪人が居た。


「我が名は道明寺鉄斎 ! 柳生新陰流やぶれたり !」


ずっるーーいズルい、それでも武士なの !」

  わたしが叫ぶと桜餅みたいな名前のおじさんが、


「勝てば良いのだ、勝てば ! 」


  兵助如雲斉お爺さんが前に出てきてしまった。


「それでは試してみるか、鉄砲使いよ 」

  兵助如雲斉お爺さんが挑発すると、桜餅侍道明寺鉄斎が、


「おい爺、土下座して負けを認めるなら勘弁してやるが、どうする ? 」


「儂の方は、いつでも結構だ……撃つなら早く撃て 」


「そうかよ……そこまで抜かすなら、こっちも爺を撃ち殺すのに遠慮はしないぞ ! 」


  騒ぎを聞きつけ町民が集まってきた。

「おい 何だよ、これ ! 」

「決闘だとよ 」

「決闘ったって、相手は鉄砲だぞ 」

「そんな無茶な ! 刀と鉄砲かよ。

  勝てるわけねえだろう 」


 桜餅侍道明寺鉄斎兵助如雲斉お爺さんを狙いを定めている。


『銃は剣より強し』って、ジョジョの漫画で言っていたけど、兵助如雲斉お爺さん 大丈夫かしら ?

 緊張するわ !


 お互いがにらみ合いをしている中、わたし達は固唾を飲んで見守っていた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


  👼教えて、ユリリン女神さま !(会話劇です)



 左近「どうして、治安の悪い夜に花嫁行列なんてしたのかしら ?

  昼間にやれば、人の目もあるし安全なのに 」


 ユリリン「それはじゃな、江戸時代の婚礼はほとんどの場合、夜に行われたのじゃ。


 これは男性を陽、女性を陰とする陰陽道おんみょうどうの考え方にもとづいて、陰である女性を迎えるのには夜が適しているとされていたからなのじゃな。


 そのため、花婿の家が差し向けた駕籠かごが花嫁の家に到着するのは日が暮れるころだったのじゃ。



  花嫁は駕籠に乗り、仲人に導かれて花婿の家に向かい、花嫁行列をするが、実家の両親は同道しないのが決まりだったのじゃな。


  花婿の家に着いた花嫁は、家の門をくぐる前に『入家式』をする。

  入家式は花嫁が花婿の家の人間になるための最初の儀式であるのじゃ。


  ここでは花嫁が花婿の家の水を飲んだりしたのじゃ。

 このあと花嫁の両親も到着して婚礼の儀式、祝宴と続くのじゃ。

  これが現代の結婚式と披露宴ということになるじゃな 」


 左近「……めんどくさ ! わたしが花嫁さんに成る時は白いチャペルでブーケトス💐をするのが夢なんだから !

  これも改革が必要ね 」


 ユリリン「……左近ちゃん、お主はだから花嫁さんは無理じゃろ !? 」


 左近「ユリリン、『あきらめたら、そこでゲームセット』だって安西先生も言ったじゃない ! 」


 ユリリン「…………幸運を祈るのじゃ。 頑張るのじゃな、左近ちゃん 」


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