第49話 魯西亜 ⑧
【十兵衛side】
まだ、一番大事なことが解決していない。
泥沼藩が南蛮商人から大量の武器の買い漁りをしている件だ。
ただ、この様子だと 若殿あたりは何も知らない可能性がある。
なにもかもが、家老の
このタヌキ親父は、とんでもない曲者だからな !
聞き出すには知恵を絞らないと真相を知ることは無理。
残念だか、某(それがし)以外は脳筋ばかりだからアテにはならない。
「よう、砂糖の旦那。 南蛮商人から武器を買い揃えて、幕府に謀反など、戦争でもするつもりか ?」
「
主水のバカめ、素直に答えるワケがないだろうが !
「誤解をしているようだが、泥沼藩は仲介をしたに過ぎないでござる。
本当に南蛮商人から武器を買ったのは、隣の
ムッ、確か
「幕府に謀反など、とんでもない話です !
どちらの家が藩主に、ふさわしいかを相手に見せつける為に武装を充実させているのでしょう 」
このタヌキ親父、他藩の争いに目を付けて 一儲けするつもりだな !
「鱈場家には、
魯西亜に可児炒藩が乗っ取られても良いと言うのですかな ? 」
御家争いで、可児炒藩が取り潰されても泥沼藩は痛くも痒くも無いからな。
中抜きでもして儲けているのだろう。
まあ、俺たちに出来ることは限られているから、後は帰ってから
しかし……
「許せんですな。 南蛮人にいいようにされるとは !」
「おう、十兵衛 ! 俺たちで、なんとかしてやろうではないか !」
「南蛮人の武器なぞ、なにするものぞ !
この十文字槍のサビにしてくれるわ !」
かぁぁぁ ! どうして、こう血の気が多いかねぇ。
おかげで、俺は冷静でいられるが本来なら俺もあっち側の人間なんだよな。
だいたい、御坊が年配者として、皆を止めるのが本当だろうに、コイツらの手綱を掴まないと暴走するのは眼に見えている。
報告は半兵衛に頼むとするか……
◇◇◇◇◇
── 可児炒藩 鱈場家 ──
「もう、勝ったも同然ですな !
魯西亜から買った新式火縄銃
「ウム、火縄銃と言っても火縄を使わないとは、南蛮の技術には恐れ入るな。
しかも対価が、銀とアノ干物で良いとは…… 」
「確か、人魚のミイラとか言っておったな。
我が藩の漁師が叡山の寺で供養すると云うのを横取りしたワケだが、……
あんな物を欲しがるとは、南蛮人も酔狂よな !」
── 二人の家老は知らなかった……八百比丘尼の伝説を ──
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