第40話 魯西亜 ②
【十兵衛side】
いやはや、左近殿と一緒だと退屈している暇がないですな。
泥沼藩に行く為に正成と主水、胤舜殿が支度をしている。
左近殿と弥太郎、上様は留守番をしてもらう。
さあ、いよいよ出かける算段が付いたところで、半兵衛が現れた。
左近殿に報告かと思っていたら、
「泥沼藩に出立する前にお耳に入れたい情報が入りもうした。
泥沼藩 藩主 鮫脳田喜一郎が密かに南蛮商人から武器と麻薬を買い入れているようなので、ご注意してくだされ 」
その話を聞いていた徳松……綱吉公が、
「ほう~、南蛮商人とな。
エゲレスかメリケンかイスパニアなのか ?」
「……
おろしや、聞いたことが無い国だな。
「日の本の北、蝦夷地より北にある大国よ。
遥か昔から未来に渡るまで、世界征服を企む欲深き国だから油断しないでね 」
ほう~、左近殿は物知りでござるな。
「泥沼藩
一見、人懐こい態度を取っていますが、油断出来ない人物だと見受けられます 」
「かたじけない。 肝に命じておくでござる 」
男 四人の旅も面白きものになるか、楽しみだ。
◇◇◇◇◇
道中、胤舜殿が居るせいか、旅人が皆 避けて通りよる。
俺の視線に気がついた胤舜殿が、
「何を言いたい、十兵衛。
怒らぬから申してみよ 」
絶対に嘘だ。
父、宗矩と同じことを言っている。
正直者が馬鹿を見る、に決まっているではないか !
「いやぁ~、胤舜殿の人相が、あまりに凶悪なので旅人が怖がって避けているのでしょう。
ほら、見てみなされ!
あの幼子など、泣きそうに成りながら父親の陰に隠れているでござる !」
空気を読まない主水が言い放ってしまった。
ニコニコぎこちなさそうに笑っているが、青筋が坊主頭に浮き上がっているぞ、胤舜殿 !
「ほう~、そういえば、旅のせいで鍛練が
主水殿も正成殿、十兵衛も一緒に鍛練をしましょうぞ !」
胤舜の目は『絶対に逃がさない』と物語っている。
俺と正成は無言で主水を責めた !
余計な事を言いおって、『口は災いの元』だと知らぬのか、馬鹿者めが !
── 半刻後(約1時間後)──
ズタボロにされた俺たちが居た。
御坊、やり過ぎですぞ !
俺や主水は、それぞれの流派の剣術を修めているが、正成は師範に成ったばかりだと云うのに、自信が砕けてしまったのではないか。
これから大仕事だと云うのに、どうしてくれるのだ !
とりあえず、今晩の主水の晩酌は抜きで決定だな !
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