第22話 美容革命 ?

【左近side】


 努壺屋どつぼやの主が亡くなり、廃業してしまった為に駿河では化粧品が不足に成り、ちょっとした騒ぎに成っているわ。


 弥太郎さんが、京から化粧品を駿府に運ぶ話があったので、


「ダメよ。 精製されているとは云え、京の白粉おしろいは有毒な鉛や水銀が入っているの。

 すぐには症状が出ないけれど、長い期間をかけて中毒を起こすわ。

 特に、女の子は顔から首筋、胸から背中にかけて塗るから、鉛や水銀が身体に徐々に吸収されちゃうから大変なことに成るわよ。

 それに、赤ちゃんも白粉が塗られた乳房を吸うから赤ちゃんまで大変なことに成るのよ ! 」


 弥太郎さんが驚いた顔をしているわ。


 転生した今川義元さんも、いろいろ内政チートをしたようだけど、女の子の化粧品までは気がつかなかったようね。


 ダメねぇ~、って。

 食べ物とかお風呂とか便利に成って感謝しているけど、少しは女の子の身の回りくらい考えて欲しかったわ。


「それでは、化粧品はどうしたら良いのでしょうか、左近殿 」


 無ければ造れば良いのよ !


「今まで化粧品を販売していた商会には、幕府で大量生産したものを駿河するがを中心に売ってもらいましょう。

 白粉おしろいは、オシロイバナの実をつぶしね。

 その中の澱粉質でんぷんしつを使ったものやキカラスウリの塊根をつぶして、何度か水でさらした後に乾燥させたものを米粉などの植物質の白粉に取り替えていきましょうね 」


 弥太郎さんは一生懸命に、わたしが言ったことを書き留めているわ。

 出来れば、お歯黒なんかも止めさせたいけど、一気に推し進めても良いことは無いから、じっくり取り組みましょうね。


「あの~う、左近さま。 わたし達、髪の毛を石鹸で洗うのですが、洗い終わった後は髪の毛が ゴワゴワしているので、良い方法がないでしょうか ? 」


 わたし達に御茶を運んできた奥女中のお絹さんと云う女の子が質問してきたわ。


 これは、もしかしたらに成るかも !

 徳川幕府もお金には困っていたようだから、今のうちに今川幕府でも『金のなる木』が欲しかったのよ。


「わたしに任せて、悪いようにはしないわ !」


 企業秘密にするから教えてあげられないけど我慢してもらいましょう。


 まずはリンスね。


 小さなたらいいっぱいのお湯に、おちょこ一杯のお酢を加えるだけで、ナチュラルなリンスが出来上がるわ。


 トリートメントは、炒りごまをすり鉢でよくすってから手ぬぐいで、くるみをしっかり結んで漏れ出てこないようにして、 頭皮や束にした髪の毛に軽く叩くようにポンポンと当てていく。


 こうすればゴマの油分が浸透して抜けすぎた油を補充するし、ゴマに含まれているビタミンEが頭皮を若返らせ、白髪や抜け毛の予防にもなるわ。


 さらに馬油を頭皮につけて頭皮マッサージをすると頭皮の血行も良くなり、髪にハリも戻るはずよ。


 あとは髪のパサつきを取りましょう。


 緑茶に含まれる成分のカテキンには、キューティクルを整える働きがあるわ。

 出がらしの茶葉を一度煮出して人肌くらいまで冷まして髪全体にかけると完成だわ。


 翌日、完成した化粧品を奥女中のお絹さんに実験になってもらい……石鹸でシャンプーして、薄めたお酢でリンスして、ごま油でトリートメントしたうえで、緑茶でピーリングしたお絹さんの髪の毛はとてもツヤツヤ髪になっていた。


 それを遠目で見ていた奥女中の女の子たちは、近づいて来て大騒ぎに成っていた。


「この新しい化粧品は売れるかしら ? 」


 それを聞いた奥女中の女の子たちは、太鼓判を押して『絶対に売れる !』と言ってくれたわ。




 ── 後に、吉良きら上野介こうずのすけ義央よしひさは『化粧品の父』と呼ばれることになろうとは、今の左近にはわからなかった ──



 ※ 化粧品の情報は、Wikipediaなどを参照しました。


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