第21話 三日天下 ②

柳生但馬守宗矩やぎゅうたじまのかみ むねのりside】


 吉良の小倅こせがれわしが指導することに成った。

 松平伊豆守信綱まつだいら いずのかみ のぶつなとのの勝負に勝った為なのだが、あやつ伊豆守わざと負けおったな !

 必然的に徳松さま……綱吉さまの指導を伊豆守が担当することは仕方なしといえども、ニコニコ笑っている吉良の小倅の顔を見ていると頭が痛く成ってくる。


 十兵衛とは、別の意味での問題児だ。


「左近よ。 ところで、一つ質問なのだが、最近 透破すっぱ(忍者)を雇ったようだが、大それた事を企んではいまいな !? 」


 左近は『どうして、それを知っているの ?』と云う顔をしておるわ !

 此奴こやつには腹芸は無理そうだな。


「お前たちには、護衛と監視を含めて伊賀者を付けておったわ。

 そのうちの一人から報告があった!」


 伊豆守が、 柳沢吉保やなぎさわ よしやす此奴コヤツに付けたのを利用させてもらおう。


「これから何かする時には、弥太郎柳沢吉保に相談してから行動するように。

 お主の行動は、謀反と疑われても仕方ないのだぞ。

 弥太郎よ、しっかり左近を補佐するように 」


 左近の隣で儂の話を聞いていた弥太郎の顔色が悪い。

 おおかた、伊豆守から優遇されて出世の道が確約されたと喜んでいたのだろう。


「ところで、根来衆に何をさせておる ?」


「宗矩おじさま。 根来衆では無くて『光矢衆』て呼んでね。

 わたしが考えたのよ、良い名前でしょう。

 光矢衆には、『かくかくしかじかこうこう……』を調べさせているわ 」


 あらためて、左近に聞いて驚いた。

 左近め、自身の為では無く、幕府の為に透破を使っておったか !


 ── 盛大な勘違いをしている柳生宗矩、左近のことをかなり見直してしまったのであった。

 それは、弥太郎もいえることで…… ──


「左近殿 ! 拙者、弥太郎は感激しました。

 弥太郎は、全力で左近殿を補佐しますぞ !

 共に殿家綱をもり立てて、幕府と民の為に粉骨砕身頑張りましょうぞ ! 」


「よろしくね、弥太郎さん。 一緒に頑張りましょうね 」


 いろいろ問題があるが、根は良い奴だから、しっかり導けば良い幕閣ばっかくになるであろう。


「左近、それとな。 根来衆……光矢衆は幕府で召し抱えることにするぞ。

 一家門が透破を召し抱えると、要らぬ誤解を持たれるからな。

 正直、伊賀者たちは、北条氏直ほうじょう うじなおを始めとした北条氏を監視させているので、もう一つ透破すっぱの一族が欲しかったのだ 」


 北条氏には風魔一族が居るから伊賀者どもも手こずっておる。

 他の大名の動向を探らせたいと思っておったが、透破が不足していたのだ。

 しかし、赤穂藩か……盲点だったわ。





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