第14話 懲りない男


 無事に吉良屋敷に帰ってきたわ。

 一緒に帰ってきた皆もぐったりしている。

 正成さんは、吉良家で預かることが決まった。

 浅野内匠頭のヘイトは増えたけど、仲間が増えたから良かったわ。


「次からは最初から誘えよ、左近 ! 」


 仲間外れにしたつもりはなかったけど、よほど寂しかったね、徳松さん。


 屋敷で下働きしている人に晩御飯を聞いたら、


「良い秋刀魚さんまが入りましたので焼いた秋刀魚ですよ、若さま 」


 オオー ! 令和の日本では高級魚だった秋刀魚が食べられるなんて、転生して良かったわ !


「秋刀魚、サンマ、明◌家さんまは~♬」


 わたしが小躍こおどりしながら喜んでいると、


「なっ、だから左近は変わっていると言ったろう 」


「本当に退屈しないお方よなぁ~ 」


「若は我らが守らねば !」


 徳松さん、十兵衛さん、正成さんが酷いことを言っているけど気にしないわ。


 醤油もあるし、すだちもある。

 今川義元さまの内政チート・ばんざーい !



 ◇◇◇◇◇


 皆で秋刀魚を食べた後、一緒にお茶を飲みながら反省会と云う名のおしゃべりをしている。

 なぜか、徳松さんも帰らないで、わたし達に混じっているのは、さみしいからかしら。


「宗矩おじさまには怒られたけど、良いことした後は気持ちが良いわね 」


 わたしの言葉に三人とも微妙な顔をしている。


「ハァ。 左近のことに、いちいちかまっていたら身がもたないぞ 」


 徳松さまの言葉にうなずく十兵衛さんと正成さん。


「なあ、正成。 なにか、面白そうな事件とかないのか ?

 どうせなら、最初から関わりたいからな 」


 徳松さんたら、全然反省していないのね。

 でも、わたしも期待しているから正成さんの応えにワクワクしている。


「あるにはありますが、よろしいのですか ?」


 心配そうにしている正成さん。


「大丈夫よ、正成さん。 十兵衛さんのように、廃嫡された方が好都合だから !

 偉く成らなければ討ち入りなんて、されないでしょうしね 」


 三人が、ギョ としてわたしを見ている。

 そんなに、おかしなことを言ったかなぁ ?


 三人が集まり、なにやらゴニョゴニョと相談している。


 ◇◇◇◇◇


「左近を野放しにしたら危険だと判っただろう !

 奴は自分の身分に執着が無いから、ほっとくとどんな無茶をしでかすか、分からないんだ」


「吉良家らしくない振る舞いは、そういう理由が有ったのですね。

 見ている分には面白いのですが、左近殿にお世話になっている身としては、堪りませぬな 」


「なんとしてでも左近さまを御守りせねば成りませぬ。

 あのお方は、今川幕府に取っても太平の世にもなくては成らないお方です 」


「正成。 なにか、適当な事件でも左近にてがって、懲りてもらった方が良いだろうから頼むぞ !」


 徳松、十兵衛、正成は、あらためて左近から目を離さない相談をしていたのだった。



 ◇◇◇◇◇


 三人が密談を終えた後、急にわたしに話しかけてきた。


「娘たちを救出してもらったばかりで申し訳ないのですが、実は駿河の城下町にある大店おおだな努壺屋どつぼやの件で、ご相談があります 」



 ── 長谷川正成から、あらたな問題をワクワクしながら聞いている左近に不安を覚えている徳松と十兵衛。


 次回 どうなる左近 ! ───


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