第6話 歴史は既に動いていたようです ②


「ハッ ハッ ハッ ! 今度こそ勝ったぞ、左近 」


 勝ったと思い込んでいる徳松さんを見た後に盤面を見てから、パチリと指すと盤面が白から黒へと変化した。

 呆気にとられている徳松さん。

 仮にも遊戯の女神ウッセイナァーだったわたしに勝とうなんて、十年早いわ。

 がっかりしている徳松さんに再び聞いてみる。


「徳松さんは元服したら何て名前に成るの ?」


 ストレートに聞いてみる。

 女は度胸 ! ……今は男だけどね。


「父上からは『綱吉』の名前を頂いている。

『義』の字が無いから、跡継ぎにするつもりが無いと云うことだな 」


 ……まだ、不確定要素あり と云うことね。


 盤面を睨んだまま動かない徳松さんに、


「たまには、街にくり出さない ? 」


 討ち入りされた時に、運動不足だと逃げられないから少しは身体を動かさないとね。


 徳松さんを置いて先に外に出ると、


 おっかなそうなイケメンが居た。

 ちょっと、若い頃の千葉真一さんに似ているわね。

 だけど……

 何で睨んでいるのよ、わたし無実なんですけど !


 わたしが動かないで居ると、やっと徳松さんが来た。


三厳みつよし、待たせたな 」


 三厳と言われたイケメンは黙って黙礼した後、わたしをジッ と見ている。


 わたしの様子を見て愉快そうな顔をした徳松さんが、


「そういえば、ふたりは初対面だったな。

 今川家の剣術指南役の息子の柳生十兵衛三厳だ 」


「えっ……両目がある。 柳生十兵衛って隻眼じゃなかったの ? 」


 わたしの言葉に、ふたりはキョトンとしている。


「知らなかった。 三厳は隻眼だったのか !? 」


「若、それがしの両のまなこは付いているでござる 」


 わたしの教育のお蔭で、わざとボケる徳松さんに対して真面目に応える十兵衛さん。


 あれぇー、山田風太郎先生の十兵衛だと、茶っ目毛がある素敵なオジサマだったのに、これも今川義元が歴史改ざんしたせいかしら。


 あまり、沢山の人で街にくり出すと周りの迷惑に成るから、わたしと徳松さん、十兵衛さんの三人で出かけることにしたわ。


 十兵衛さんは、わたしが調教……もとい教育すれば良いよね。


 わたし達はテクテクと街に向かうも会話は、わたしと徳松さんのふたりだけで、十兵衛さんは会話に混じってこないのが気になるので話しを振ってみるんだけど、一向に積極的に話してこない。 ……真面目くんか !


 まずは、この堅物をやわらかくすることを考えましょう。



柳生十兵衛のイメージイラストです。


https://kakuyomu.jp/users/SHIGEMI/news/16817330666406140633


イメージが壊れると嫌な方には、おすすめしません。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る