第2話 夢か現《うつつ》か幻か ②


「うわぁぁぁー !」


 わたしが殺された夢を見て飛び起きた。


 いやぁ~、いくら何でも吉良きら上野介こうずのすけはないわよ。


 ── 残念ながら夢では無いのじゃ。

 女神は嘘をつかないのじゃ、吉良きら上野介こうずのすけに転生したのは間違い無いのじゃ ──


 なんですってぇー !


 じゃあ、またわたしは、赤穂浪士に殺されるというの !?


 ── それは、吉良上野介、次第なのじゃ !

 だって、この世界は、本来の世界線とは違う異世界なのだから ──


 それだと、『剣と魔法の世界』のファンタジーに転生したの、ユリリン ?


 ── もう、その世界は供給量がオーバーしているから、吉良上野介は足切り不合格に成ったので、妾が創造した世界の住人に成って貰うのじゃ ──


 ユリリンが創造した世界 ?


 ──ここは、徳川家康の江戸幕府では無く、今川義元の駿河幕府がおさめる世界なのじゃ !

 信長の桶狭間は失敗に終わり、今川義元が天下を取った世界なのじゃ ! ──


 信長、負けちゃったの !



「左近殿、左近殿は何処に ?」


 ── 吉良ちゃん、呼んでいるのじゃ !

 幼名は三郎。 通称は左近なのじゃ。

 一般的に義央よしひさは、忌み名いみなとして呼ぶのはタブーなのじゃが、この世界は妾が創造した世界だから、その辺りはユルユルだから気にしなくても大丈夫なのじゃ ! ──


「左近、徳松とくまつだ !

 父上から頂いた子猫の姉妹を連れて来たぞ !

 早う、顔を見せろ ! 」


 徳松 ? 誰よ、記憶に無いわよ、ユリリン ?


 ── すっかり記憶のダウンロードをするのを忘れていたのじゃ !

 徳松とは、後の徳川綱吉なのじゃ。

 だから徳松の言う父上とは、徳川家光のことなのだな。

 ただ、この世界では徳川家康は今川家に婿入りしているから、今川綱吉に成る予定なのじゃ ! ──


 その途端、大量の情報が頭に流れ込んできた。


「グワァァァァ ! 」


 あっ 頭がパンクする !


 ドタドタ ドタドタ ドタドタ !


 わたしの叫び声を聞きつけて徳松が部屋に入ってきた。


「どうした、左近 !

 誰か、ある ! 」


 徳松の声を聞いて、徳松の家来と吉良家の家来が駆け付けてきた。


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