S&B

 眠れない午前二時 苛立ちが以下略。天丼ネタですまないがまた腹が減った。


 大台を遥かに越える体型から勘違いされるかもだが、常時腹が空いている訳ではない。そもそも夕食を午後6~7時頃摂る為に翌午前二時は7~8時間後、腹が減って然りである。まあその前に寝てしまえばいい話だが。

 ともあれ何かしらを生体燃料タンクに給油せねば収まりつきそうにない。僕は興奮した娼婦が如く下半身を掴んで離さない電気毛布を無理やり引き剝がし万年床から這い出る。

 茶の間のマジカルブラックボックスを開け、中から宝石ゲフン、袋麵を取り出す……此処迄は前と同じだが、今回はラーメンではない……ホンコン焼きそばである。


 袋麺の焼きそば自体余り馴染みはないかもだが、僕の地方では割と一般的、だと思う。販売会社は香辛料の超大手だが袋麺関係は其処迄出してはいない、どころかホンコン焼きそば以外は少なくとも僕は見た事はない。

 昔は全国販売していたようだが、今は僕の地方及び九州の二県でしか販売していない。ホンコン焼きそばとはいえ販売会社は東京で、製造は栃木らしいが。

 何気にパッケージを見る。ステレオタイプのコック帽に糸目、泥鰌髭、黄色い中華服なコックらしき男が中華鍋とお玉を持つイラストが描かれている。鍋は透過されており中の麺が見える。初めて知った小中学校の頃から変わらないイラストだ。

 ファーストインパクトは友達の家で出された。巨大な中華鍋に一度に5袋程を投入し作られた其れを食べた時のインパクトは今も忘れられない。

 其の割に当時北海道ではほとんど売っていなかった某有名カップ焼きそばの会社だと割と最近まで誤信してたのだが。


 慣れた手付きで袋を開け、中から黄色いパッケージに入った粉末ふりかけを取り出す。滅多にしないが取り出し忘れて麺と一緒に水の中に入れてしまうと悲しい気分になる。

 袋ラーメンを作る時と同じ手鍋を用意し、計量カップ一杯200mlの水を入れ火にかけ蓋をする。本来フライパンで作る事を前提としている料理なのだが、この10数cmの手鍋は丁度いいのだ。

 そして強火にかけ蓋をし沸騰するのを待つ。僅かな水とはいえうちのへっぽこコンロでは2分以上かかる。電気ポットでもあれば全然違うが生憎うちには現在ない。

 その間手持無沙汰気味に冷蔵庫を開けたり、台所の内窓を開けて外の雪の様子を確認したりする。時間的に外はほとんど見えないが隣の家の車の上に積もる雪の厚さで明け方除雪せざるを得ないか否かの判断程度は出来る。


 沸騰した……早速蓋を開け麺を投入する。其の侭湯に半分ほど浸った麵を一度裏返し、全体をなじませる。一度蓋をし、ぐつぐつと全体が泡に包まれるのを待つ。頃合いを見て蓋を開け、中火にして麺を解しながら水分がなくなれば完成だ。搔き混ぜ続けないとすぐ鍋にふっついてしまうので袋ラーメンの様に放置しててもいい時間が短いのは面倒ではある。

 このホンコン焼きそばは既に麺自体に味が付いている。イメージとして有名メーカーの卵を真ん中に落として完成のあのラーメンを思い浮かべるといい。


 相変わらず麺を他の容器に入れる事などしない。手鍋のまま出来た焼きそばに先程のふりかけをまんべんなくかける。青海苔と白胡麻の他スパイスも入ってるのかな?

 茶の間のテーブル代わりの壊れた炬燵上に手鍋を無造作に置き、早速戴く……うむ、今日もいい感じの硬さだ。

 味は何というか、焼きそばというよりはジャンク菓子って感じかな? 香ばしい匂いと相まって一度食べれば病み付きになる事間違いなしと言い切りたいが、味は各人の好みだから判らん。とはいえこの地域(と九州の二県)の味覚には合ってるのだろう。

 HPを見ると様々なアレンジレシピもあるみたいだが、僕は今迄具材無し調理しかした事がない。何も入れないのが一番美味い、というつもりはないが少なくとも其れに耐えうる味だとは自信を持って言える。


 食べ終わって何時もの用にシンク内で鍋に水を入れ朝迄放置しておく。

 口内にはまだ焼きそばの風味が残る。本来は歯磨き等した方がいいのだろうがこの幸せな感じを暫く味わっていたい。

 欲を言えば二袋分作りたかったが生憎一袋しかなかった。一袋だと調理時の水が少なく面が固過ぎたりするので二袋以上をお勧めしたい。

 偶に全国区の番組に取り上げられる程の地域を代表するB級フードだが、此の侭全国に広がり過ぎもせず、且つ何時までも生産を続けて貰いたいものだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る