第4話 聖女
「…聖女様いかがなされましたか?お手が止まっているようですが」
聖王国王都の中心部にそびえ立つ教会総本部の広間にて、民の治療にあたっていた筆頭聖女に、背後に控えていた護衛騎士のひとりが囁いた。
「………すみません…大した事ではないのですが…少しばかり神託が降りましたので…」
騎士の問いかけに対し聖女が小声で応える。
「それは大事、本日の治療は切り上げますか?」
神託の言葉に驚きを浮かべ、騎士が中断を口にした。
「………行く末を揺るがすようなものではないのでこのまま続ける事と致します…勿論内容は後ほど伝えますので…」
聖女の応えに納得した護衛騎士は、改めて背後に控え直した。
それからはいつものように、待ち並ぶ民の列を治療と声かけでこなして行く事となった。
「時間だ、本日の治療はこれまでとする!」
広間の壁に掲げられた大時計が荘厳に時を告げると、背後に控えていた騎士たちがそう宣言した。
その宣言にざわつく残りの民達も、続きはそのまま明日の順番となるとの言葉に、大人しく広間をたちさってゆく。
「お疲れ様でした聖女様」
「………いえいえ…これがわたくしの務めなので…」
騎士たちが聖女をねぎらうと、聖女がそんな言葉を返した。
「………それよりも…こんな小娘に過ぎないわたくしの様子を…常に気にかけてもらえる事に…感謝しております…」
「貴方様を見守り守るのが、我らの務めでもあるので」
騎士の言葉に聖女である少女は、その赤い瞳をまんまると見開き、にっこりと微笑むのであった。
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