専外寺にたどり着く白無垢。
14年越しの訪問。
第6話 山奈円の失念。
年明けに山田満はある事を高尾
それは山奈円と高柳始の仲についてで、本来なら既婚者の高柳始と独身者の山奈円の仲を考えるのは間違っている。
だが高柳始と妻の藍乃は、高柳始が不幸を使い最愛の山奈円を不幸から救う為に、その身を差し出した際に最愛の山奈円を諦める為に、自らを愛さずに自らの不幸を受け付けない女性を妻に迎えると願った結果だった。
山奈円からすれば高柳藍乃も被害者で救いたいと言っていた。
その観点からすれば、決してこの考えは間違っていないと言い聞かせられる事ができていた。
山田満は定期的に山奈円と女子会をしている。
名目は山田満に不幸の影が見えないかの確認となっているが、実際には高尾一の不幸を公私共に最低限のものにする為の情報交換だった。
不幸は散る。
高尾一の場合、過激な言い方をしてしまえば、目にゴミが入ったところから失明の可能性すらある。今はまだそこまで不幸にするのではなく、生き地獄にさせたいので起きても結膜炎や、角膜に傷がついて医者通いで金と時間を浪費するくらいだが、いつどうなるかわからない。
予防の面から女子会をしている。
先日の女子会は寒い冬の日だったので、一番風呂で銭湯に行き、温まった身体で居酒屋で鍋を食べた。
銭湯では山奈円より少し若い女性が小さな子供と来ていて、子供は「ママ、ママ」と甘えていて、母親は少し面倒くさそうに接しているが子供はお構いなしに母に甘える。
子供は母に構ってほしくて母が洗髪している最中に逃げ出してしまう。
風呂場で駆ければ、思いがけず転ぶこともある。
山奈円は浴槽から出て、「ふふ。危ないよ?座って待っていたらママは喜ぶんじゃないかい?」と声をかけて、子供を椅子に座らせて見守ると、洗髪を終えた母は子供が座って待って居たことに喜んでいる。
そして風呂を出るタイミングが同じで、女湯の外では子供の父が待っていて、子供は「パパ!」と飛びつき、父親は「今度はパパと入ろうよ」と言ったが、子供は「ママがいい」と言って、母親は「パパと入ってよ」と言いながら3人で手を繋いで帰って行った。
その姿を見た山奈円は羨望の眼差しをしていた気がする。
確かに山奈は出産面から考えたら、もう行動をしなければその夢は叶えられなくなる。
それを聞いた高尾一は「でもなぁ…俺たちって助けて貰う側で、不幸に関して詳しくないんだよなぁ」とボヤいて山田満を見る。
山田満にはある確信があって「それで
「えぇ?それ、俺が聞くのかよ?」
「そうだよ!私はそこまで聞けないし、私が聞いたら怪しまれるもん!」
高尾一は週明け、相談客の合間に「山奈さんって法事とかやるんですか?」と声をかけた。
「ん?どうしたんだい?藪から棒に?」
「いや、去年…まあその前もだけど父さんの法事をやらなかったんですよね。あの頃は母さんの施設代とか、俺も仕事ができるか心配で出費を抑えていたからなんですけど、今年は母さんの法事をした方がいいかなって思ったら、山奈さんはどうしたんだろうって思って」
半分本気、半分言い訳の理由に、山奈円は「成程」と言うと、「私はやって居ないね」と言った。
「やらないんですか?」
「やれば始が気にするからね」
山奈円は少し困った顔で窓の外を見る。
高尾一は最近になってわかったが、高柳始の話をする時に窓の外を見ていて、それは高柳家の方を見ていた。
山奈円は「ふふ」と言ってから、「満ちゃんに聞いただろ?私の両親は私が言い訳に使ったことがメインだが、始の不幸をなんとかしたくて、私たちが噂で聞けるくらい有名な寺に相談に行った帰りの事故で失った。それにその事故で私は始を犠牲にしてこの身体を得た。始は罪の再確認、私は罰の再確認をしてしまうからね。どうしてもね…」と言う。
それ以外にも、高柳藍乃が参加しないこともあるだろうし、参加をされて目の前で見せつけられても困る。
高尾一はそこで今回の話の本題に踏み込んだ。
「そのお寺ってどうだったんですか?」
「気になるのかい?よくあるパターンの返しさ「今度直接その人に会いたい」と言われたよ」
「パターン?」
「そうさ、近場で初めは始を連れて行って会ったが、どの人も「気の持ちよう」「今だけ」「きっといいことがありますよ」だけだったのさ」
高尾一は山田満から聞いていた言葉を口にした。
「山奈さん、そこに俺を連れて行ってください」
「なに?」
「その話、満が引っかかるって言ったんです。本来なら山奈さんは死んでいた。ご両親と山奈さんが死ねば、その話は高柳さんの耳には入らなかった。勿論高柳さんを困らせたくて、不幸が起こした事故かもしれない。でも高柳さんなら山奈さんまで死んだら自死を選ぶ気がするんです。でも事故は起きた。それってそのお寺が当たりだったって思えませんか?」
山奈円は失念していた可能性の提示に手を震わせて、「え?そんな?まさか?」と言っていて、高尾一が「高柳さんを連れ出して、不発が辛ければ俺を使ってください!」と申し出ると、山奈円は一瞬の躊躇のあとで「頼めるかい?」と言った。
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