第3話 不幸の所在。

翌日、昼に東野蒼子が住む街の駅で待ち合わせをした山奈円と高尾一。


「行くまでに情報を整理させてくれ」と言い、歩きながら顛末を聞いて納得をした山奈円は東野家のチャイムを鳴らす。


出てきた東野蒼子を見て高尾一は「あ!え?」と言ってしまう。


「高尾君、失礼だ」と注意をした山奈円が東野蒼子に謝ってから、「ですが、昨日うちの高尾が東野さんを電車で見たと言っていまして、その姿が今とは違っていた様子なのでご確認に来ました」と説明をすると、合点のいった東野蒼子はリビングに2人を招くと一冊のアルバムを見せた。


中には東野蒼子と並んで写るもう1人の東野蒼子が居た。


東野蒼子は嬉しさと恥ずかしさの混じる顔で、「恐らく見かけたのは妹の藍子ですよ。年子なのに双子に間違われるんですよ」と言った。


この瞬間に山奈円にはどこか確信があった。

真剣な表情で東野蒼子を見て「荒唐無稽なお話に聞こえると思いますが、その藍子さんに会えますか?」と聞いた。


「え?」

「信じる信じないは後ですが、私には不幸の願いを感じれる直感力が、助手の彼には数奇な縁を引き寄せるものがあるのです」

流石に不幸の受け皿と不幸の具現化は口にできないが、今回のように不幸の受け皿をもちいれば、働く羽目にはなるが偶然の出会いで話が前進する可能性がある。


山奈円が放つ圧力に負けた東野蒼子は「多分大丈夫ですけど、ただあの子は私の不幸を願うような子じゃ…」と言った。


「いえ、可能性を見逃したくないのです。これだけ似ているのです。万一その藍子さんに行くべき不幸が、手違いで蒼子さんに向かった恐れがあります。それに、放置をして藍子さんに被害が出てはよくありません」

山奈円はなんとかして藍子に会おうとしていて手段を選んでいられなかった。

東野蒼子の優しさにつけ入ってでも今日会おうとしていた。


東野蒼子は妹思いの優しい女性なのだろう。

心配そうに妹に電話をするとすぐに「アイちゃん?起きてた?今平気?」と言い、東野蒼子の電話からは「ん〜?ソウちゃん?どうしたの?」と返ってくる。


東野蒼子はなんとか会おうとするが、藍子は「寝たの朝」「まだ眠い」と言って誤魔化そうとしている。


普段の東野蒼子なら諦めていたはずだが、山奈円はそれを決して許さずに「ごめんね。行ったら話すから、私と私の事を相談してくれている人と、その助手の人と行くから駅まで出て来れる?家まで行く?」と聞くと、「男の人いんの?ならウチは無理だなぁ。下着とか散らかってるんだよね。駅に行くよ。駅前の喫茶店に居てよ」と言われて電話は終わった。


東野紅一が車を出してくれる事になり、駅まで出向くとほぼ同時に藍子は現れた。


藍子は未婚の26歳で、苗字は西田だった。


東野蒼子と西田藍子の仲は見た感じ悪くない。

「ソウちゃん!」「アイちゃん」と呼び合って、仲睦まじく話していて西田藍子は東野蒼子の体調を心配していた。


高尾一に聞くと昨日山田満と見たのは西田藍子の方だった。


山奈円は西田藍子に昨日の事を聞くと、確かに友達と飲み会があって電車に乗り込んできていた。


心配そうに「ソウちゃん、飲み会で朝まで起きてたの?」と聞く東野蒼子に、「違うよ〜。ちゃんと終電で帰ってきたよ」と言うと、「そのままやりたい事ができて起きてたの。降りてきたって奴だよ」と言った。


山奈円は自己紹介をして、山奈相談所の話をして東野蒼子は知人の紹介で来ている事なんかを伝えた。


オカルトに興味はないのだろう。

訝しげに詐欺を疑う西田藍子の顔を見ていて、高尾一は一つの事が気になった。


「あの…」と言って割り込んだ高尾一は「携帯電話がずっと鳴ってますけど、いいんですか?」と聞いた。


東野蒼子が「ソウちゃん。電話?平気?」と聞くと、西田藍子は「平気平気。通知をオンにしてるだけ。朝の反響だね」と言った時、山奈円は「あった…。不幸の願い」と言った。


山奈円の言葉を聞き間違いかと思った東野蒼子だったが、山奈円は首を横に振って「東野蒼子さん、あなたの周りに漂う不幸の原因だと思われます」と言って西田藍子を見て、「西田藍子さん。あなたの事を教えてください」と言った。

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