第4話 疑問




 千田さんと別れて自室に戻ったぼくはベッドに倒れ込んだ。


 人間レンタルサービスを利用し始めて、一か月が経った。

 その間に千田さんと会ったのは、五回。

 いつも午前十時から午後一時までの三時間でお願いしている。


 最初は、駅前広場から近くの公園をゆったり歩いた。

 二回目は、駅前広場から近くの廃校を利用した水族館に行った。

 三回目は、駅前広場から近くのゲームセンターで遊んだ。

 四回目は、駅前広場の近くの公園で待ち合わせて、公園をゆったりと歩いた。

 五回目は、駅前広場の近くの公園で待ち合わせて、公園をゆったりと歩いた。


 交互にしたい事をやっていこう。

 そう言って、じゃんけんで順番を決めて、最初は千田さんになった。

 最初は落ち着いた大人の男性という印象だった千田さんだったけど、やっぱり五回会ってもその印象は変わらない。


 じっと、ぼくを穏やかに見つめてくれる。

 その目に映るぼくは光っているのか。

 全然視線を逸らさないんだ。

 聞いてみたくて、聞けなくて。

 だって、光ってないって言われたら。


(千田さんにとって、ぼくはイケメンじゃないのかな?)


 切望していた事だった。

 目を逸らさず、背を向けず、まっすぐに見つめてくれる人を。

 とても望んでいたはず、だったのに。




(………ぼく、もしかして)




 本当はイケメンじゃないんじゃないか?











(2023.9.25)



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