第39話 人には触れちゃいかん傷みが…(以下略

高校の1学期の終業式が終わり待ちに待った夏休みへと突入するのだが…まだまだ北海道へ行く前にやらねばならない事があるらしい。


いい加減に素直に北海道へ行かせて欲しいところだ。


今俺の通っている高校は生徒の個人活動を尊重する方針で運営をされている。俺や一花などの芸能活動を行っている者に対しては活動に支障が無い様に夏休みの宿題は非常に少ない。


学生とはいえ仕事ある者への優遇措置である。


その話を終業式に聞いてテンションが上がりっぱなしの俺だったが水を差す様に所属プロダクションからの呼び出しが入る。


なんでも顧問弁護士からのご指名なのだそうだ。


初めて会うのだが弁護士と聞くと悪い事はしてないのに躊躇してしまう。しかしこちらには呼ばれる心当たりは無い、一体何の用件なのか。


「弁護士ね…まあ用事って言ったらアレしかないから気楽に行きなよ。」


「アレって何だよ…アレって。」


一花に弁護士について聞いてみたがどうやらアレの用件らしいがアレとは何か分からず俺は首をかしげる。


ただ一花の話す感じを見る限りどことなく用件は理解している様子だ。


終業式で学校は午前様なのでバイクは学校へ置かせて貰い、変装セット装着した上で制服のまま電車で所属プロダクション本社へと向かう。



本社ビル会議室─


本社ビルに到着するとマネージャーの佐竹と饗庭あえばが待ち構えていた。


「ハルさん終業式お疲れ様でした、北海道まで後少しですね。」


佐竹が笑顔で出迎えてくれるが目が笑っていない、どことなく怒りのオーラを感じる。


「佐竹さんお疲れ様です、何か私に用事があると伺ったのですが。」


「ええ、ここで話すのも何ですから、これから一緒に会議室へ向かいましょう。」


佐竹と饗庭が会議室へと向かうので一緒に歩いて行く。


会議室の入り口の前に青いスーツに身を包んだ、とげとげの髪を後ろに流すように固めた金髪の髪型の濃ゆい顔の青年らしき人物が立っている。その胸には弁護士バッジが取り付けられている。


「やあやあーよくいらっしゃいました!ハルさーん!噂はかねがね聞いております。」


金髪の外人の様なスーツの男が俺に話掛けてくる。


「どうも初めましてガービー隆一りゅういちです。よろしく。」


「こちらのガービーさんにはウチの顧問弁護士を担当して頂いています。」


ガービーが自己紹介をすると佐竹が役職の説明をする。どうやら俺を呼んだのはこのガービーという弁護士らしい。


「初めまして、結城ハルと言います…あのそれで私が今日呼ばれた用件は?」


「おっと!それを失念していました。それは追い追いとしまして!とりあえずハルさんのファンが部屋にいますのでまずは挨拶を!」


ガービーが会議室の扉を開き俺に入るようにわざとらしく手招きをする。俺のファンが居ると言っていたので笑顔で入室する。


会議室に入ると長机の椅子に横一列で10人の男女が座っている、年齢は下が学生服を着ている者から上は40代位の女性まで千差万別だ。


「どうも、初めまして結城ハルです!会いに来てくれてありがとうございます。」


俺はニコニコとしながら1人1人に声を掛けて握手をしていくが嬉しくないのか1を除き全員この世の終わりの様な顔をしている。


「えっと…佐竹さん?この方達は何か特別なファンの人なんですか?」


「え、えーと…ガービーさんもう茶番はそれくらいにして本題をお願いします。」


俺がファンについて佐竹に確認すると観念した様に佐竹がガービーに声を掛ける。


「はっはっはっは!いやーすみません!僕の言葉足らずでした!ファンはファンでもを失念しておりましたー。」


「へっ?アンチ??」


「簡単に説明しますとSNSでハル個人に誹謗中傷をしていた人達を集めました。」


どうやら俺のSNS(会社管理)のフォロワー数増加に伴い、誹謗中傷が行われていたらしい。あれだけ警告していたのにだ。


運が良いのか悪いのかGWツーリングの時に位置を特定されて以降、マネージャーの佐竹や饗場あえばにSNSの管理を任せっぱなしで俺は全然見ていなかった…。


「こう見えて僕はサイバンチョとも仲が良いので開示請求が速攻で通りました。そこでここに居る皆さんに示談に応じる気があるならここに来いとお願いした次第です!」


サイバンチョと仲の良い弁護士って普通に考えてダメだろ…。だが、現実にそれが通って加害者が並んでいる訳なのだが。それにここに来いはお願いじゃない命令だ。


「え、えっと…どんな誹謗中傷を。」


「本当はお見せしたくないですが…これにまとめておきました。」


俺がどんな事を書かれていたのか気になると饗場がそれをまとめたレポート用紙を渡してくる。


【死ねよブス…乳だけが取り柄の乳牛女。】


「は、ははは…乳牛女…。」


一行目からもう酷い内容だ、俺は乾いた笑いしか出ない。


【枕営業で大河ドラマを勝ち取る卑しい女】


「…。」


これはあながち間違っていないので複雑な心境だ…今はハル洗の名に変えて絶賛営業中だ。


【こんな○女を生んだの低学歴の両親だろ。親の顔が見たい。】


(よくもまあここまで辛辣な言葉を他人にぶつけられるもんだ。)


まじまじと見ているとガービーが声を掛けてくる。


「それを書いたのはそこの大学生の男ですね。残念ながら…ハルさんのご両親の方があちらの大学生のご両親様より学歴と偏差値が上ですがねー!!はっはっはっは!」


「…うっそ。」


加害者の身辺調査も実施済の様で大学生を煽るようにガービーが衝撃の事実を告げる。今思えばハルの体になってから両親の学歴について聞いた事が無い。


だが心当たりがある、高校の授業内容がスラスラと頭に入って行く感じがしていたのだ、もしかしてハルは頭脳明晰なサラブレッドなのだろうか。


ちなみにおっさんの俺自身はいわゆるバカ田大学と揶揄される卒業生だ。


【ハルが交通事故で○○○○○○になったニュースまだー?】


「…っはあ。」


大きい溜息を付く俺、バイク好きを公言していたのでこの手の奴はあるなって思っていたが本当に言ってくる奴が居るとうんざりしてくる。


「それを書いたのは主婦のこの方ですねー。旦那さんはトラックの運転手をしているそうですが、よくもまあこんな事が平気で書けるとは世も末ですなー!はっはっは!」


このガービー、加害者達を徹底的に煽っている。加害者達も顔を真っ赤にして堪えているが身から出た錆というものだ同情の余地は一切無い。


【ハゲ死ね!ちょっと有名になったからって頭に乗るなハゲ死ね!】


「ははは、ハルさんそれは誹謗中傷の中でも比較的軽い方で…。」


ガービーが誹謗中傷の中でも軽い部類に入ると説明しようとするがそんな事は関係ない。人には触れてはいけない事があると以前にも言ったがまさにこの事だ。


俺はレポート用紙を力強く握り込み、顔を真っ赤に青筋を立てて体を思いっきり震わせる。怒りメーターという物があればまさに振り切った怒髪天モードである。


「誰がハゲじゃあ!ゴラァ!!誰だコレ書いた奴ぁああああ!!」


「「「えっ?」」」


部屋に居た全員が俺の豹変振りに驚いている。俺がガービーの襟を掴み詰め寄る。


「おい!誰だ!ハゲって書いた奴!」


「ちょ、ちょっと落ち着いて下さいハルさーん、そ、そこのTシャツの青年です…。」


「てめぇかあ…。」


指をさされたTシャツの青年を俺の野獣の眼差しで睨みつけると気迫に驚き席から立ち後退りしている。後退りしているTシャツの青年を追いかけて襟もとを掴む。


「いいか世の中のハゲはなあ!他人に自分の優しさを与えているからハゲてるんだ!」


「自分を押し殺して皆の思いを紡ぐ為に必死で頑張った結果ハゲてるんだよ!」


「それをなあ!人前でハゲっつったら戦争なんだよ!ワレー!全世界のハゲと戦争する気あんのかっ!コラっ!!」


堅気では無い言葉で顔を近付けて凄むとTシャツの男が半泣きになり謝罪をしてくる。


「す、すみませんでしたぁ…。」


(((ハルさんの前でハゲは禁句だな…。)))


多くの誹謗中傷の中で一番効いたのがハゲだ…今は艶々フサフサだが俺は忘れてはいないハゲの半分は優しさで出来ている事を。



俺が誹謗中傷内容を確認し終えるとガービーが加害者達の前に立ち今後の話を始める。


「…一通りお目通りが出来た所で加害者の皆さんに選択肢を差し上げます。」


ガービーが会議室のホワイトボードに選択肢の内容を書き出していく。


1.こちらの提示する示談金を支払う。

2.本名でお笑いグループ「誹謗中傷ズ」を結成してM漫談-1優勝を目指す。

3.弁護士を雇い徹底的に争う。


何だこの選択肢は…特に2は無理がある。誹謗中傷をしている過去がある時点でお笑いにならない。


「もちろん僕のお勧めは1番ですねー、まっ相場より高いですが皆さまの親族を巻き込めば支払えない金額ではないです。一番お勧めしないのは3番ですね。」


「僕はこの手の裁判で負けた事が無い事と、弁護士費用の面についても財力が無いと続きません。何年でも争い続ける気がある方は3番をどうぞ。」


ガービーの顔から笑みが消えている、先ほどまでニコニコと親しみやすさがあった分真剣に話すと説得力が増す、しかも何年でも付き合うという宣戦布告付きだ。


「2番ですが…これはちょっとした冗談ですー!誹謗中傷をしてる時点で笑えないですよねー!はっはっは。」


2番目の選択肢を笑いながら説明するがすぐに真顔に戻る。


「…やるって人が居るなら死ぬまでやって貰いますけど。」


遠まわしに死という言葉をガービーが使っているが言葉で人は死ぬ、前例も何件か起きている。それがあっても誹謗中傷は無くならない。


日本は法治国家だ、ガービーの様な法を遵守する弁護士は匿名だからと言って好き放題言って良いと思い上がっている加害者アウトローに我慢ならないのだろう。


「では…皆様1番という懸命な選択をして頂きまして僕は感謝の念に堪えません。後日郵送で請求書を送らせて頂きますので期日までに納付して下さいねー。」


ニコニコとガービーが加害者達1人1人に選択肢を与えた上で忠告を行い今回の件は終了したが、人の性とは業が深いと思わせるには十分な内容だった。


「では皆さん良い夏休みをー!」


最後の最後まで煽りまくるガービー、この日を狙って加害者達を呼んだ様だ。徹底的に心をへし折っていくスタイルだ。加害者達が肩を落として退室していく。


全員が出て行ったと思ったら…まだ会議室に1人の少女が残っている。


「えっとハルさん、その子なんですが…扱いに少し困ってまして。」


ガービーが腕を組んで先ほどのレポート用紙の一番下の行を指さす。


【ハルはアイドルとして不完全、これを見て喜ぶ奴は浅ましい、真のアイドルとはこの私が相応しい。】


「うーん…なんだコレ。」


誹謗中傷と言うよりは中二病全開の挑戦的な内容だが、よほど自分の素質に自信があるのだろう。しかも自分から連絡を入れてこの場に来たのだと言うから物凄い行動力だ。


「…えっと…君、何歳かな?」


「はあ…これだから三流アイドルは、あなたより若い15歳です。名前も君じゃなくて赤城あかぎ サヤです!」


俺が年齢を聞くと赤城という名と15歳だと言うがどう見ても中学1年生だ、身長も150cm前後か一花より一回り低い…顔はどう高く見積もっても普通だ。


「もう皆から可愛い可愛いって言われて仕方なくここに来てやった訳!ほら!アイドルとして雇われてあげるから契約書持ってきなさいよ!」


態度だけは超一流アイドル級だが、実力が伴っていないのは明らかだ。ガービーもこの子の扱いだけは少し困っている様子だ。


ただこういう行動は誰かにはやし立てられた物だと相場が決まっている。


「赤城さん、もしかしてSNSでアイドル活動なんかもしてるのかな?」


「当たり前です!フォロワー数だって1000人居るんですよ!地元のサヤを応援するライングループだって100人以上は居るんですからね!」


「少し見せてくれるかな?」


「ふん、アイドルとしての格の違いを知るといいわ!」


その少女が自信ありげにスマホを差し出すと俺が受け取り内容を確認してみる。言葉はそれと無く応援している様に見えるが…かなりがある言い方が多い。


おっさんともなると文面や話し方で相手がどう考えているか分かるものなのだ。


「ちょっとライングループに居るこの子達と会話してもいいかな赤城さん。」


「私のファンを引き込もうとしても無駄ですから構わないですよ。」


赤城が了承すると俺は早速スマホを使い比較的、好意的なメッセージを送る子に通話をしてみる。


『はい、○○です。』


「こんにちは、グラビアアイドルのハルという者なんですけど。」


『はい…えっ?あのハルさんですか!』


「はい、今赤城さんのスマホを借りて通話してるんですよ。」


『えー!本当に行ったんだサヤ…ちょっとやり過ぎたかな。』


「その件について少しお話を聞きたいんだけどいいかな?」


『は、はい…。』


ライングループの子に話を聞いてみると赤城は昔からアイドル志望である事を公言して学生生活を送っていた。だが女子グループのボス的存在に疎まれて褒め殺しでヨイショされていた様なのだ。


女子グループと一部の男子もこれに参加して今回の件に至ったという訳だ。SNSのフォロワーもそれを面白がってフォローさせていた手の込みようだ。


「今回の件は首謀者が居るみたいだけど、もしその子が今後、赤城さんに何かしてきたら私がそっちに出張ると言っておいてくれる。」


『は、はい分かりました。伝えておきます。サヤには謝っておきます…。』


「うん、それが良いよ。若い内は善悪の区別もし難いからね。」


俺が通話を終えるとスマホを赤城に返す。


「どう?私のファンは…ってなんかフォロワーが減ってる気が…。」


俺の話した内容をライングループで共有したのだろう、一気に話が広がり者達が離れて行っている。


「なんで!皆、私の事、応援してくれてるんじゃ!なんで謝ってくるの!」


最近の悪意ある子供のSNSの使い方は大人顔負けのいやらしさがある。もちろん全員では無いが文字だけでも人を傷つけるのは簡単なのだ。


「頼まれてフォローや応援をしていただけって…何よ…。」


「…うっ…う…。」


「さすがにこれは僕の範疇を超えてるかな…。」


ガービーが赤城の涙する姿を見て切なそうな顔をしている。マネージャーの佐竹が赤城の元へ行く。


「赤城さん…アイドルになるという夢は一朝一夕では上手く行きません。皆その為に1日1日を必死に努力をしているんです。」


俺にも刺さる言葉だ、完全にハルの素質だけ頼ってる俺は何か努力している訳じゃないと思っている。自主トレはしているけど…それもバイクの為だ。


「人と書いて夢で儚いという言葉がある通り、夢を叶えるのはほんの一握りです。赤城さんはまだ若いのですから違う道を考えてみて下さい。」


泣きじゃくる赤城に厳しい現実を優しく諭す佐竹。しばらくすると赤城も落ち着きを取り戻してきた。


「私…おだてられてたんですね…。」


「赤城さんも大人になれば分かると思うけど、他人を陥れる事を生き甲斐してる人も居れば助けてくれる人も居る。」


「それに全員が応援を止めた訳じゃないでしょ?その人達が本当のファンじゃないかな。」


「ハルさん…。」


最近の学校ではSNSの教育も始まっている、SNSなどの不特定多数の人が参加するツールは勉強だけ出来ても上手く利用は出来ない。


大事なのは人間力だと俺は考えている、この部分について精神的優位は子供でも大人を凌駕できるという事だ。


ただSNSに依存しなくても人は生きていける事を念頭に置けば上手く付き合っていけるのだと思う。


「…色々とご迷惑をお掛けしました。」


最初と打って変わって反省し落ち込んだ赤城が席を立って俺達に謝罪をする。俺がガービーに目配りすると分かっているという目をしている。


「OK、OK、今回の赤城さんは自分で来ただけですし何もお咎めはありません。騙されているなら仕方ないですね。」


「ガービー先生ありがとうございます。」


俺も改めてガービーに頭を下げてお礼を言う。


「おっと、トップアイドルに先生と言われると嬉しいですね。」


ガービーが先生と言われ頬を指で擦り照れ隠しをしている、少し嬉しかったのだろう。


こうして事が一段落して会議室から赤城が出て行くと一緒にマネージャーの佐竹や饗場も赤城に付き添い会社出口まで見送る。


俺も用件が済んだので帰ろうとするとガービーから話があるから残る様に言われて会議室で二人きりになる。


「いやーハルさん、残って貰ってすみません。別件でお話が。」


「別件ですか?」


会議室の机に対面になって座りガービーから話が始まる。


「えー…例の男性、借金もチャラになり執行猶予が付いて人生をやり直していますよ。」


「例の男性?」


「ハルさんが三角絞めで落とした男性と言えば解りますか?」


「…あっ!」


ガービーの話を聞いて思い出した、1日署長の時の強盗犯だ。人質解放の際に借金について相談を受けてガービーの電話番号を伝えたのだ。


「いやーその彼から電話を貰いまして、その縁で弁護する事にもなりましてね、もう反省しか無い態度もあり初犯で被害もほぼ無し早期解決と無計画性…。」


「相手検事も僕と仲が良くてこんなしょぼい事件で実刑にする意味が無いと言ってましてサイバンチョもそれに同意して無事に執行猶予となりました。」


「ふう…それは良かった。って検事と仲が良いっていいんですか!それ!」


「いやー仕事ではダメですねー!はっはっはっは!」


もう無茶苦茶な弁護士だガービー、相手検事とは幼馴染という事だが人の縁で執行猶予とはあの強盗犯、相当に運が強いのではないかと思う。


「後はヤミな金融会社ですが…ぶっ潰しておきました。」


「そんなにさらりと言う事ですかっ!」


違法な取立、法外な金利がブラック判定を受けて警察と一緒にガービー本人立会の元、潰して来たらしい。


「ヤミな金融会社の社長があのウシ○マくんみたいで笑いましたよ。いやー法律を武器に暴れまわるのは楽しいですねー。」


ガービーと話をしていると正直、ぶっ飛びすぎていて付いていけない事がある。ただこの弁護士相手に喧嘩をしてはいけない事は嫌でも解る。


「むしろヤミな金融会社の方が警察にとって手柄になったみたいで喜ばれましたよ。」


「そ、それは良かったですね。」


「それも全てハルさんのお陰ですよ。」


「わ、私のお陰ですか?」


「もし彼がお金を持って逃げたり、事件が長期化してたら執行猶予は無いですし、盗んだお金もヤミな金融会社に流れて被害者が増えていたでしょう。」


確かに俺があの時にいなければ罪が重なりもっと重罪になっていただろう。ヤミの金融会社にもお金が流れて悪だけが得をしていたはずだ。


「佐竹さんから色々聞いてましたがハルさん、あなたは人の運命を変える事の出来る人だ。もし困った事があれば殺人以外は無罪にしますから頼って下さいね。」


「…なるべく頼らない様に努めます。」


さらりと怖い事を言うが事実、やってのけそうなので怖い。


「それと…この件は会社には内緒で…。」


「もちろん僕はこの会社が好きですから。その点については異議無し!です。」


ガービーが片腕の人差し指を突き出す様な決めポーズを取る。


夏休み初日の内容としては濃密な1日だったがSNSの誹謗中傷も力技だが解決したし、あの強盗犯の男も真面目にやり直していると聞いて安心している。


この件以降、SNSでの誹謗中傷は全く来なくなった。加害者達の悲痛な叫びがSNSで知れ渡りこの件を担当したガービー弁護士が界隈で有名となったらからだ。


全ての禊は済んだ。後は心置きなく北海道へ向かうだけだ。

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