第2話 レーヴァって呼んで♪
なんかいま、変な言葉が聞こえなかったか?
永遠に一緒、とか。
恋人、とか。
聞き間違いかな?
いやいや、頭の中に直接声が響いているんだ。
聞き間違いなんてあるのだろうか。
「ええと、ごめん。よく聞こえなかったんだけど」
ひとまず聞こえなかったふりをしてみる。
『聞こえなかったんですか? もう、マスターったら』
うふふ、と笑う声が頭に響く。
『恋人として永遠に一緒にいましょう、と言ったんですよ♪』
「?????」
もう一度聞いたけど、やっぱり意味が分からなかった。
何を言っているんだ、いったい。
恋人?
この際、君は剣であって人じゃないから恋人というのはおかしい、ということは指摘すまい。
そんな揚げ足とりをしている状況ではない。
もっと指摘すべき別のことがある。
「なあ。レーヴァテイン」
ひとまず彼女――彼女でいいよな。女性で合っているんだよな?――の名前を呼ぶ。
『マスター!』
すると急に頭の中に大声が響き渡る。
え、なに。
なんか急に大声出してきた。
頭の中に直接声が響いているんだから、あんまり大きな声を出さないで欲しい。
『私とマスターはもう恋人同士になったんですよ。レーヴァテインなんて他人行儀な呼び方はやめて下さい! わたしのことはレーヴァと呼んでください』
「いやレーヴァテイン。ふざけてないで――」
『レーヴァって呼んで?』
「レーヴァテイ――」
『レーヴァって呼んで?』
「……」
『レーヴァって呼んで?』
何度も何度も同じ言葉を繰り返される。
「わ、わかったよ。レーヴァ」
俺は諦めてレーヴァと呼ぶことにした。
彼女の勢いに負けたわけじゃない。
ただそう呼ばないと話が進まないと判断しただけだ。
決して負けたわけじゃないからな!
『えへへ。レーヴァ、なんて。さっそく恋人らしく愛称で呼んでくるなんて、マスターったらそんなに私のことが大好きなんですね♪』
無理矢理に愛称で呼ばせておいて何を言っているんだ……。
と、そう言いたくなったが、今は我慢しておいた。
話が進まないから。
「一つききたいんだけどさ。さっきから言ってるその、恋人ってなに?」
『なに、とは?』
「いや、俺たちって別に恋人じゃないよねっていう話」
『…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?』
思った以上に長い沈黙の後に、ただ一言「はい?」ときかれた。
はい、とは?
どういうこと?
「え、いや俺たちは別に恋人ではないというか。ただの魔剣とその所有者というか」
『え? 何を言っているんですか? ちょっとよく意味が分からないです』
なんで意味わからないの?
俺はレーヴァの言っていることがよくわからない。
「いやだから、俺たちは別に恋人ではないじゃん」
『ごめんなさい。私、マスターが何を言っているのかよくわからないです』
「恋人じゃな――」
『何を言っているのかよくわからないです』
「あの」
『ナニヲイッテイルノカヨクワカラナイデス』
「…………」
あれ?
あれー?
なにかおかしいぞ?
どうしちゃたのかなこれ?
いやふざけてる場合じゃないなこれ。
レーヴァの様子に、その言動に、何か恐ろしいものを感じて不安になる。
なにかがおかしい。
絶対おかしい。
俺とレーヴァの間で、何かがかみ合っていないことを感じる。
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