ハロウィンのお悩み ~2匹のオバケとO・T・O・3~
───【登場人物(♂3:♀0:不問2)】───
緒方(♂)
轟(♂)
大清水(♂)
おばけA(♂♀)
おばけB(♂♀)
───【本編】───
おばけA
「トリック・オア……あっ、待って!」
おばけB
「お菓子をくれなきゃ……ああ、行っちゃった……
ねえ……こんなので本当にニンゲンからお菓子をたくさんもらえるわけ?」
おばけA
「そのはずなんだけど……なんだかニンゲンたち、
他のニンゲンたちのヘンテコな恰好に夢中でボクたちのこと全然気にしてくれないね……」
おばけB
「いっぱいお菓子を食べられるって言うからここまでついてきたのに……
あーあ! お腹すいたなあ! お菓子たべたいなあ!」
おばけA
「そ、そんなこと言われても……ボクだって、こんなことになるなんて思わなくて……
ど、どうしよう……ボクもお腹減ってきた…… 」
緒方
「お困りですか、子どもたち!(子どもたち)(こどもたち)」
おばけA
「うわっ!?」
おばけB
「な、何!?」
轟
「お困りならば、いざ行かん!(いざ行かん)(いざゆかん)」
おばけA
「どこ!? どこから聞こえてくるの!?」
おばけB
「……あ、あの人たちじゃない!? こっち来る!」
(おばけB、指をさす)
大清水
「ベロベロバァァアー!」
緒方
「お菓子が食べたい子どもたち!」
轟
「イタズラしちゃう子どもたち!」
大清水
「ならば我らがプレゼント!」
緒方
「オー!」
轟
「ティー!」
大清水
「オー!」
轟
「トリック!」
緒方
「オア!」
大清水
「大清水!」
緒方
「三人組ッ!」
轟
「略して我ら!」
緒方・轟・大清水
「
おばけA
「……どこ向いて叫んでるんだろ」
おばけB
「ね。近くには来たけどあっちは壁だよね」
緒方
「……うーむ。」
轟
「確かにこのあたりからお助け波動を感じたのだが。なあ大清水」
大清水
「うむ。私の直感でもこのあたりに居ると感じたが」
おばけA
「……なんだか様子がおかしくない?」
おばけB
「なんだか、ボクたちのこと見えてなくない?」
緒方
「そうは言うが、誰もおらんではないか!」
おばけA
「いるよ! ここに!」
おばけB
「こっちだよこっち! おーい!」
大清水
「気のせいだったか……。ハロウィンの熱気で直感がにぶったか」
おばけA
「……あっ! もしかしてこれ、ニンゲンに見えてないやつだ!」
おばけB
「見えてないならそりゃあ気づかれないわけよ!
せっかくここまで来たのに全部ムダじゃん!」
轟
「いや待て二人とも! ……確かにこのあたりにお助け波動を感じる!」
おばけA
「あ、見えるニンゲンかな!?」
緒方
「本当か轟」
大清水
「いるのか轟」
轟
「おそらく……むむむ……ぬぅん…………っ!!
そこ!!!」
おばけB
「惜しい! 1メートル右!」
おばけA
「こっちからも呼びかけてみようよ!
おーい! 見えますかー! こっちこっち!」
緒方
「見えぬ!!」
おばけB
「えっ!? あ、でも、返事した!? え、じゃあ、声は聞こえるってこと!?」
大清水
「聞こえぬ!!」
おばけA
「じゃあなんで返事したの!? 偶然!?」
轟
「いや、でも……たしかに……かすかに……きっとこのあたりにいるはずだ!」
緒方
「大丈夫か轟」
大清水
「気を確かに持て轟」
轟
「私は正気だぞ二人とも」
おばけB
「全員ちょっと狂ってるように見えるけど」
おばけA
「うーん……でも何とかしてこっちからも気づいてもらいたいなあ……」
轟
「そうだなあ……」
おばけA
「やっぱり聞こえてない? 偶然?」
轟
「……そうだ! 丁度良いものがあるぞ!
ゴソゴソ……ゴソゴソ……テッテレー!
おばけハンドパペット! 両手分!」
緒方
「かわいいではないか轟」
大清水
「そんなものを持ち歩いているのか轟」
轟
「今日はハロウィンなのでな。両手にはめて子どもたちと遊んでいたのだ。
これを……このあたりに置いて……」
おばけA
「……これ、動かせって言ってるのかな?」
おばけB
「ボクたち、仮にもおばけなんだしそれぐらいはできないとね」
おばけA
「そうだね。 それで驚いてくれるかもしれないし」
おばけB
「そうだね。 それでお菓子をくれるかもしれないし」
おばけA
「よーし、それじゃあ── おばけ!」
轟
「轟!」
おばけB
「おばけ!」
轟
「三人組ッ! 我ら揃って! 」
おばけA・轟・おばけB
「
おばけB
「って、何してんの!?」
おばけA
「はっ!? なんだか体が勝手に……」
緒方
「ぬぅん!? パペットが勝手に動いた!?」
大清水
「これはいかなることか!?」
おばけA
「あ、驚いてる!」
おばけB
「もっと動かしちゃえ! こう、こう、えい!」
緒方
「おぉお、おぉおお」
大清水
「摩訶不思議! 摩訶不思議である!」
おばけB
「驚いてる! 楽しい!」
おばけA
「それじゃあボクらの言葉も聞こえるのかな? おーい! おーい!!」
轟
「(裏声)オーイ! オーイ!」
緒方
「お、どうした轟」
大清水
「突然変な声を出すな轟」
轟
「これはこのパペットたちの代弁である。
おそらく、ここにいる困った何者かが、このおばけパペットを動かしているのであろう」
緒方
「つまり腹話術ということか!」
おばけB
「直接聞こえてるわけじゃないってことね……」
轟
「(裏声)チョクセツ キコエテル ワケジャナイッテコトネ」
おばけA
「そこまで喋らなくてよくない?」
轟
「(裏声)ソコマデ シャベラナクテ ヨクナイ?」
おばけA
「あ、キリがないやつだ」
大清水
「さっきから様子が変だぞ轟」
緒方
「おばけに取り付かれたか轟」
おばけB
「うーん……このままだとおじさんも大変だし、要件だけしっかり伝えよう」
轟
「そうしてくれると助かる」
おばけA
「このおじさんには聞こえてるのかなあ……」
轟
「聞こえぬ」
おばけB
「じゃあどうやって会話してるのさ!?」
轟
「お助け波動を感じ取れればこれぐらいたやすい!」
おばけA
「お助け波動って何……。まあいいや、それじゃあアレだね」
おばけB
「そうだね、アレだね。せーの、」
おばけA・おばけB
「トリック・オア・トリート!!お菓子をくれなきゃ」
轟
「ひとりずつにしなさい!!」
おばけA
「ええ……」
おばけB
「ま、まあ、おじさんの口はひとつしかないし……それじゃあ順番に…… 」
おばけA
「トリック・オア・トリート!」
轟
「(裏声)トリック・オア・トリート!!」
おばけB
「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!」
轟
「(裏声)オカシヲ クレナキャ イタズラスルゾ! 」
(緒方と大清水、拍手する)
緒方
「すごいではないか轟。腹話術にパペットまで動かして」
大清水
「大道芸大会に出れるぞ轟」
轟
「そうだろうそうだろう」
おばけA
「ちょっと待って、おじさんの大道芸扱いになってる?」
おばけB
「ボクたちもいるよ! ここに! そのパペット動かしてるの、ボクたち!」
緒方
「いやしかし、何かと思えばハロウィンだったか」
大清水
「それならば我らに見えぬおばけも出ることだろう」
緒方
「轟も体を張ってくれたことだし、これは我らも応えねばならぬな」
大清水
「そうだな。それではここに、このお菓子たちを置いていこう」
おばけA
「やったあ!」
おばけB
「お菓子だ! ここに来て初めてのお菓子だ!」
轟
「彼らも喜んでいるようだな」
緒方
「これにてこれにて一件落着」
大清水
「我らが仕事も一件落着」
おばけA
「お菓子おいしー!」
おばけB
「ありがとー!」
緒方
「礼には及ばぬ、おばけたちよ。おばけ、すなわち幽霊、そう霊だけに!」
轟
「寒くなって来たな」
大清水
「季節の変わり目だしな。夜の冷え込みもあろう。おばけのいたずらかもしれぬ」
緒方
「ぬぅん……」
轟
「ともかく、我らはやるべきことをやったまで」
大清水
「おっと最後に一言を」
緒方
「おばけたちよ!」
轟
「そのパペットをプレゼントしよう!」
大清水
「思う存分、トリック・オア・トリートするがよい!」
おばけA
「えっ……あっ! そうか!」
おばけB
「これまではニンゲンに見えてなかったけど、このパペットを動かせば驚かせられるかも!」
緒方
「それでは我らは失礼する」
轟
「他の子どもたちにもお菓子を配らねば」
大清水
「ハッピーハロウィーン!」
(3人、ドカドカと雑踏に消える)
おばけA
「……よーし、ボクらも驚かしにいこう!」
おばけB
「おー! 待ってろよーニンゲン!せーの、」
おばけA・おばけB
「トリック・オア・トリート!!」
──────────
緒方
「
轟
「それは悩める人の前に!!」
大清水
「助けを求めるあなたのそばに!!」
緒方
「いつでもどこでも駆けつける!!」
轟
「次に我らが現れるのは!!」
大清水
「あなたのお家かもしれない!! それではこれにて!!」
緒方・轟・大清水
「失礼!!!!!」
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