雛祭りのお悩み ~雛壇と映えとO・T・O・3~

───【登場人物(♂3:♀2)】───

緒方(♂)

轟(♂)

大清水(♂)

娘(♀)

母親(♀)


───【本編】───

「ママー」


母親

「何ー?」


「もうすぐ雛祭りじゃん。ウチ、アレあったよね。雛人形。わりと立派なの」


母親

「えー? あー……あったわね。まだ残ってたかしら」


「えっ」


母親

「だってアンタ、何年か前ぐらいから去年まで

 『雛人形とかダサいから別に飾らなくていいよ』って言ってたじゃない。

 もうそんな年になっちゃったかーって感慨深かったわ」


「あーまーそうね? そういう年頃もあったね?」


母親

「去年の話よ。

 だからもう出番もないかなーって思って、押入れの奥の方にしまったとは思うんだけど……もしかしたら、大掃除の時に捨てちゃったかもね」


「ええー!?」


母親

「というか、なんで急に雛人形なのよ。それこそ去年までダサいとか言ってたくせに」


「それがさあ聞いてよママ。

 クラスの友達とそろそろ雛祭りだって話になってさー、

 みんな雛人形持ってるみたいで写真見せてもらって、

 それがさー、えなの。 パなく映えてるのよ。

 それでウチにも確かあったよなー雛人形、って思って

 飾って写真撮ってデコってSNSにアップして映えたいなー、って思って。」


母親

「へえー……時代ねえ」


「えー、でも無いのかー。無いかー。」


母親

「まあ探してないから何とも言えないけど」


「じゃあ買う? 買お? あれぐらいのやつ」


母親

「簡単に言うけどねえ。結構高いのよ? 雛人形。」


「じゃなんでうちにあったの? 買ったんじゃないの?」


母親

「あれは貰ったのよ。アンタがうちの親戚の中で初めての女の子だったから、

 父さん……あんたのじーさんが奮発して買ってきたのよ。かなり豪華なやつ。

 だからアンタの期待するような雛人形はちょっとうちでは買えないと思うわ」


「えー……ショックー……まじぴえん

 この際安いのでもいいかなあ……でもなあ……映え……」


緒方

「お困りですか、お嬢さん!(お嬢さん)(おじょうさん)」


母親

「!? 何!?」


「お困りならば、いざ行かん!(いざ行かん)(いざゆかん)」


「どこ!? どこから!?」


(玄関のチャイムが鳴る)


母親

「あら、お客さんかしら。 どなた──」


大清水

「きょーうも楽しく人助けー!!」


母親

「ヒッ!!」


緒方

「あかりをつけましょぼんぼりに!」


「あかりをつけるぼんぼりがない!」


大清水

「ならば我らが助けましょう!」


緒方

「オー!」


「ティー!」


大清水

「オー!」


緒方

「お内裏だいり!」


「お雛!」


大清水

「大清水!」


緒方

「三人官女!」


「五人囃子と!」


緒方・轟・大清水

O・T・O・3おとうさん!! 」


母親

「……え?」


緒方

「失礼ながら、上がらせていただく!」


「失礼いたす!」


大清水

「失礼ッ!!」


母親

「え、ちょっとちょっと!?」


(三人、ドカドカと部屋に入る)


大清水

「ボンボリオン!」


「うるっさ! 何!?」


緒方

「雛人形が欲しいのだろう?」


「え、まあ」


「雛人形で映えたいのだろう?」


「そう、そうなのよ!」


大清水

「しかしお金が無いのであろう?」


母親

「はっきり言いますね」


「そうなのよ……せっかくの年に一回の映えチャンスなのに」


緒方

「落ち込むでない」


「そんなお嬢さんのために我らがいる」


「まじで!? 新しいの買ってくれるの!?パパ! パパなの!?」


大清水

O・T・O・3おとうさんである!!」


「おとーさんなの!? パパじゃん! で、買ってくれるの?」


大清水

「買うこともできる! が!

 買わぬ!」


「は?」


大清水

「ぬぅん……」


緒方

「そんなに凄まないでくれお嬢さん」


「新しく買わずとも『える』雛人形は用意できるのだ」


母親

「もしかして、うちにあるのを探してくれるのですか……?」


大清水

「それもありだが、今回は別の方法をを取るぞ」


母親

「別の方法……?」


緒方

「D・I・Y!」


「映える雛人形を!」


大清水

「我らの手で作り出す!!」


「は? めんど」


緒方

「ぬぅん」


母親

「でも実際のところ、どうやって作るんです?

 簡単に作れるようなものじゃないと思うんですけど」


「そこでこちらを使うのだ」


母親

「こっ……これは……!」


大清水

「そう! すべての主婦の料理の味方! その名も卵!!」


緒方

「今回は10パックの物を用意させていただいた」


「卵? なんで?」


「この卵で雛人形を作るのだ」


母親

「あー、見たことあるわね。卵の殻で雛人形作るやつ」


「何それ知らない」


大清水

「こちら完成品のイメージ画像である」


「んー……? ……へー! かわいいじゃん! いいかも!

 でもこれって中身入ってるの? 結構しっかり殻の形してない?」


緒方

「殻だけである」


「まずはその殻を作るところからである」


大清水

「この作業が一番難しいところなので、ドキドキである」


「へえー……どうやって?」


母親

「卵の底を割るのよ、確か」


緒方

ゴメィトゥご名答である」


「このタメィゴゥの殻の底部分だけを割るのである」


大清水

「割った後にナカァミィ中身だけ取り出すのである」


「えー、器用」


緒方

「取り出した中身は後ほど私が調理するので問題ないぞ」


「それでは早速やってみよう」


大清水

「5人いるので一人2個ずつだな」


「えっ私もやるの!?」


母親

「いいじゃない、楽しそうだし」


緒方

「自分で作ることで愛着も湧こうというもの」


「えー……まあいいけどさ……」


「さて、卵の底を割る時はスプーンなどを使うとよい」


大清水

「スプーンの裏で卵の底を、トントントン、トントントン」


「あっ!! 超割れた!! 全部割れた!! もう失敗じゃんコレ」


緒方

「そんなこともあろうかと、もう1パック買っておいた」


母親

「用意周到ですね……」


緒方

「もちろん失敗した卵も調理して美味しくいただくので問題ないぞ」


「うーん、けっこう難しい……」


(間)


「やったー! できたー!」


緒方

「ついに10個揃ったな!」


「やってやったな!!」


大清水

「犠牲になった卵たちのためにも完成させたいな!!」


母親

「全部で17個……」


緒方

「これらの卵の殻に、さっそく顔を書いて着物を着させるのだ」


「せっかくなのでお嬢さんの割った2つの卵をお内裏様とお雛様にするとよい」


大清水

「おぬしのメイクテクニックでバチバチに映えるお内裏様とお雛様を作るのだ」


「マジで? 面白そうじゃん。んじゃーお内裏ぴっぴとお雛っぴは任せて!」


緒方

「それでは我らは残りの三人官女と五人囃子をやろう」


「我らが三人官女と五人囃子を一人ずつ担当するので

 奥様は五人囃子の残り二人を頼んでもよいか」


母親

「はーい。」


大清水

「それぞれの力が合わさった雛人形、完成も間近である……!」


(間)


「よーっし完璧! マジ映えお雛ぴっぴじゃんコレ!」


緒方

「全員そろったな! それではこの雛壇に飾っていくぞ!! みんな持ち寄れぇ!」


「うおおーっ!!」


大清水

「うおおおおーっ!!!」


「そんなに気合要らんでしょ……」


緒方

「よーし三人官女と五人囃子は飾った!

 あとはおぬしのお内裏ぴっぴとお雛っぴだけだ!」


「え、あ、うん。それじゃあ……よいしょ、よいしょ」


「お見事!! これにて!! 卵の雛人形! 完成である!!」


大清水

「ドンドンパフパフー!」


母親

「あらー、良い感じにできたじゃなーい!」


「豪華な感じの映えじゃないけど、まあアリよりのアリかなー……って言うか、

 三人官女の顔がおとーさんたちそっくりなの、ウケる」


緒方

「頑張って似せたぞ」


「何と言っても我らは三人官女だからな」


大清水

「それではさっそく写真を撮ろうぞ」


緒方

「それではこの雛人形の周りに我らが並んでポージング!!ぬぅん!」


「ふぅん!」


大清水

「むぅん!」


「邪魔。」


緒方

「ぬぅん……」


母親

「ママも入っちゃダメ?」


「あ、じゃあママ一緒にとろーよ。ちょっと誰か」


「承ったはいそれでは雛人形を中心に並んで並んでー、はい!ポーズ!」


緒方

「ぬぅん!」


大清水

「むぅん!」


「ウザ。」


大清水

「ぬぅん……」


「しかし良い写真は撮れたぞ。確認してくれ」


母親

「どれどれー?……あらー! 良いじゃない!」


「おー、いいじゃんいいじゃん。これはまだアップしないけど」


母親

「あら、そうなの?」


「とりま雛人形だけ撮ってアップするー。……うーん……どこから撮ろうかなあ……ちょっと誰か、ライト」


大清水

「合点承知の助! たとえばこのあたりから、こういう角度でどうだろうか」


「えー? ……おー、いいかも! んじゃ撮ってこ」


緒方

「撮った写真を盛ることもできるぞ」


「すべすべ卵肌の雛人形にも出来るぞ」


「元から卵じゃん! えーでもどうしよう、うーん……まあこのままでもよく撮れてるし、このままアップしよ。

 よーし、どんなタグ付けようかなー……

 #雛祭り」


母親

「#久々に飾った」


緒方

「#自作の雛人形」


「#すべすべ卵肌」


大清水

「#卵めっちゃ割った」


「めっちゃ出てくるじゃんウケる。せっかくだしもっと出してよ!タグはいくらあっても困らないんだし!」


(間。出したい場合はアドリブでタグ出ししてください)


「はー! めっちゃタグ付いた! ウケる」


緒方

「これでバズバズのバズ間違いなしだな!」


「これにてこれにて一件落着」


大清水

「我らが仕事も一件落着」


「いやま楽しかったからおけまるー! おつかれ!」


母親

「どなたか分かりませんが、ありがとうございました」


緒方

「例には及ばぬ、奥様方よ」


「やるべきことをやったまで」


大清水

「おっと最後に一言を」


緒方

「奥様方よ!」


「今回使った卵の中身は!」


大清水

「錦糸卵のちらし寿司とだし巻き卵にしておいた!」


母親

「えっ!? あ、ありがとうございます!」


「結構な量あったよね……?」


緒方

「それではこれにて失礼する」


「また雛人形作ろうな!」


大清水

「ひしもち!!」


(3人、ドカドカと玄関から去る)


「……いやー、誰だったんだろうね」


母親

「そうね……で、どうなの? 雛人形。それでよかったの?」


「これはこれで映えるからいんじゃない? また来年も作る? ママ」


母親

「あら、それもいいわね」




──────────


緒方

O・T・O・3おとうさん!!!」


「それは悩める人の前に!!」


大清水

「助けを求めるあなたのそばに!!」


緒方

「いつでもどこでも駆けつける!!」


「次に我らが現れるのは!!」


大清水

「あなたのお家かもしれない!! それではこれにて!!」


緒方・轟・大清水

「失礼!!!!!」

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