バレンタインのお悩み ~手作りチョコとO・T・O・3~

───【登場人物(♂3:♀1)】───

緒方(♂)

轟(♂)

大清水(♂)

女性(♀)


───【本編】───

女性

「……よしっ!

 今年のバレンタインこそは手作りのチョコレートを彼にプレゼントするぞ!

 お母さんが買い物に行っている間に台所も借りれたし、

 あらかじめ材料も揃えたし、

 気合十分! 準備万端!

 ……でもなあ……手作りチョコ……難しいんだよねえ……

 これまで何回も頑張ったけど、結局うまくいかなくて

 市販のチョコレートになってしまったこと数知れず……

 ここまで失敗続きだと、いざ完成したときに

 彼に美味しく食べてもらえるかどうかも不安だし……

 ……いっそ最初から市販のチョコレートにしようかな?

 高いの選んでさ。千円ぐらいの。

 ……いや、いやいや! 頑張れ私! 作る前から折れるな!

 今年こそは! 手作りのチョコを! 彼に!

 頑張るぞー! おー!

 ……でもなあ……。

 はあ……やっぱりお母さんにサポートしてもらった方が良かったかなあ……?

 でもお母さんも忙しそうだからなあ……。

 うーん……」


緒方

「お困りですか、お嬢さん!(お嬢さん)(おじょうさん)」


女性

「!? 何!?」


「お困りならば、いざ行かん!(いざ行かん)(いざゆかん)」


女性

「どこ!? どこから聞こえてくるの!?」


(玄関のチャイムが鳴る音)


女性

「えっ、宅配かな……? はーい、どちら様でしょう?」


大清水

「どうもこんにちはお助けキャラです!!」


女性

「ひっ!?」


緒方

「手作りチョコを作りたい!」


「彼のハートを射止めたい!」


大清水

「ならば我らが手伝いましょう!」


緒方

「オー!」


「ティー!」


大清水

「オー!」


緒方

「カカオ!」


「ココア!」


大清水

「大清水!」


緒方

「三人組ッ!!」


「略して我ら!!」


緒方・轟・大清水

O・T・O・3おとうさん!! 」


女性

「……えっ誰ですか?」


緒方

「チョコを作っているのだろう」


女性

「えっ。まだ作ってないけど、てかなんで知ってるの。怖っ」


「チョコづくりをサポートしてほしいのだろう」


女性

「いや誰? ちょっと知らんおっさん3人は怖いんだけど」


大清水

「なんでもやりますO・T・O・3おとうさん。ご自由にこき使ってくれ」


女性

「帰ってください。」


緒方

「まあまあそういわず」


女性

「宗教勧誘か何か? うち間に合ってるんで」


緒方

「そうそう、こちら私の手作りチョコケーキである」


女性

「えっ超凄い。美味そう。

 いやでも、知らん人から知らん物貰うな、って。常識だし。

 ヤバイ薬とか入ってるんじゃないの?大丈夫?」


「では4等分して一緒に食べようではないか」


大清水

「よいではないか。お嬢さんから最初に選んでよいぞ」


女性

「後から金取ったりしない? 詐欺とかでしょ?」


緒方

「ぬぅん……」


「そんなに悲しい顔をするな緒方! 我らが食べるぞ!」


大清水

「そうだぞ緒方! 私と轟が一緒に食べてやるから! な!」


緒方

「感謝するぞ二人とも! ではこちら4等分して……

 ハッピィー! ヴァレンタイィーン!!」


(3人、仲良くチョコケーキをほおばる)


「んん!! 絶品!!」


大清水

「さすがだな緒方! これは美味い!」


緒方

「そうだろうそうだろう! 自慢の一品である!!」


女性

「美味そうなのは良いけど、人んちの前で騒がないでください」


緒方

「おぬしもどうだ?」


女性

「うっ…… じゃ、じゃあ……ちょっとだけ……

 ……あ、美味い。マジで美味い」


緒方

「イエス!!!」


「やったな緒方!」


大清水

「やってやったな緒方!!」


緒方

「ということで、こちらのチョコケーキを作れる私がおぬしのチョコ作りをサポートしようではないか」


女性

「ほんとに手作りなの?」


緒方

「ぬぅん……」


「そんなに悲しい顔をするな緒方!」


大清水

「お嬢さん、こちら作成中のシーンを録画した映像である」


女性

「……うわ、ほんとに作ってる。キモ」


緒方

「ぬぅん……」


女性

「あっ馬鹿にしたんじゃないです、大丈夫です。すいません。

 ……じゃ、じゃあ……手伝ってくれるっていうなら……」


「何かあったら110番を呼んでくれたまえ」


女性

「もう呼びたいんですけどね」


大清水

「まあまあそういわず」


緒方

「それでは失礼ながら上がらせていただく」


「失礼いたす」


大清水

「失礼ッ!」


女性

「後ろの2人は何で居るのよ」


緒方

「我ら、三位一体さんみいったい


「例えば小間使いとか得意」


大清水

「なんかその他の雑用とか得意」


女性

「はあ……まあいいけど……」


(間。キッチンへ移動)


緒方

「立派なキッチンではないか」


女性

「立派なんですね。他のキッチンを見たことなくて」


「コンロが3口あればよい」


大清水

「食洗器完備ではないか。奥様もさぞや大喜びだろう」


緒方

「さて改めて。チョコの作り方は大丈夫か?」


女性

「……知ってるような、知らないような……」


「ぬぅん?」


大清水

「どのようなチョコを作ろうとしているのだ?」


女性

「そりゃあ彼のハートを射止めるためなんだから、なんかこう、パァァーって、ドドン! って感じでトロトロって、フワフワって、甘くて、美味しくて、チョコレートと一緒に彼のハートも表情も溶けていくようなそんな?」


緒方

「喝ッ!!」


女性

「えっ何で!? だっておじさんさっきのチョコケーキ超美味かったし、できるっしょ!?」


「緒方は長年頑張ってるからな」


大清水

「最初から同じものが出来ると思わないほうが良いぞ」


女性

「えー……つまんないなあ」


緒方

「最初はシンプルなものから作ればよいのだ。なあに、プレゼントたるもの心がこもっていればよい」


女性

「そういうもの?」


「何事も一歩ずつだぞ」


大清水

「ぶっちゃけて言えば、男たるもの女性からプレゼントを貰えれば何だってよいのだ」


女性

「そういうもの……?」


緒方

「ということで、簡単にチョコを作っていこう。なあに、やることはいたって単純」


「溶かす!」


大清水

「固める!」


緒方

「ハイ完成!!」


女性

「手抜きじゃん」


「ぬぅん」


大清水

「それは言ってはならぬ発言だぞ」


緒方

「よーし、そう思うなら早速作っていこうではないか。まずはチョコを溶かしていくぞ」


女性

「溶かすってどうやって?」


「よし大清水! 我らの胸でチョコを挟んで溶かしていくぞ!」


大清水

「合点! 我らの胸と熱き体温に挟まれたチョコレートがどんどんと溶けていくであろうよ!!」


女性

「胸に……挟んで……!?」


緒方

「まずお湯を沸かすぞ」


女性

「えっ、あ、はい」


緒方

「念のために言っておくが、人肌などで温めてはいけない。

 不衛生だし、そんなに溶けないし、べとべとするので百害あって一利なしだ」


「チョコを溶かしてくんずほぐれつ」


大清水

「くんずほぐれつ」


女性

「あれは」


緒方

「気にしなくてよい。さて、お湯が沸いたのでチョコを溶かすぞ」


「お湯にチョコを投入!!」


大清水

「ダッパーン!!」


緒方

「コラーーーーッ!!」


「ぬぅん」


大清水

「熱湯とチョコといったらそういうことではないのか」


緒方

「お前ら湯煎ゆせんを知らんのか!!」


女性

「えっ違うの!? もう入れちゃったんだけど!」


緒方

「あああーーーっ!! ほら轟と大清水が変なことするから!!

 このチョコ湯はお前らが飲むのだぞ! 責任をもって!」


「ぬぅん」


大清水

「ココアと言えココアと」


緒方

「さて。チョコを溶かすときは、このお湯にボウルを浮かべてゆっくりとかき混ぜていくのだ」


女性

「ええー……それで溶けるの……?」


緒方

「百聞は一見に如かず。まずはやってみるとよい。

 あらかじめチョコを砕いておくと、溶けやすくてよいぞ」


「見よ我が板チョコのような腹筋!!」


大清水

「いよっ! 砕く前からバッキバキ!」


緒方

「お前の腹筋で板チョコを砕いてやろうか!!」


「バッチコイ!!」


緒方

「食べ物で遊ぶな!!」


大清水

「今のは緒方だぞ」


女性

「そろそろいいですか?」


緒方

「おっとすまない。ここにあらかじめ砕いておいたチョコレートがある」


「私が砕いた」


緒方

「ちゃんと衛生的に砕いたので大丈夫である。これをボウルに入れてお湯に浮かべてみるのだ」


女性

「えーっと…………おお……思ったより早く溶ける……」


緒方

「しっかりチョコレートが溶けたら、次は型に流し込むぞ。」


女性

「型ならあります! 見てくださいこの立派な大きいハート型!

 これで彼のハートを一撃必殺しようかなって」


緒方

「おすすめはできない」


女性

「なんで!?」


「大きいハートを一つ用意するのも良いが、割れたら大変だ」


大清水

「彼に渡す前からブロークンハートになってしまう」


女性

「それは……まあ……気を付けたいけど……」


緒方

「とはいえ大きいものは割れがちなので、私は小さいハートをたくさん用意するのをおすすめしたい」


女性

「小さいハート……なるほど……それはそれでかわいいかも……?」


「ひとつ砕けても分からぬ」


大清水

「失敗してもダメージは小さい」


緒方

「ということで、こちらにシリコンのハート型を用意した。今溶かしたチョコを流し込んでいくぞ」


女性

「えーっと、チョコを……流し込む…………めっちゃボウルにチョコくっついてるんですけど」


「もっとこう、遠心力でブゥンって!」


大清水

「ブゥン!」


緒方

「気にしなくてよいぞ。そういうときは、こちらのゴムヘラを使うのだ」


女性

「……おお、キレイに取れていく……!」


緒方

「型に流し込むことが出来たら、あとは冷やすだけで完成だ」


女性

「……手抜きじゃない?」


「カカオ豆からやるか!?」


大清水

「カカオ豆持ってきたぞ!!」


緒方

「返してこい!!」


「ぬぅん」


大清水

「仕方ない、カカオ豆で豆まきでもするか」


緒方

「ちゃんと片づけるのだぞ! ……まあ、これが最初の手作りチョコというものだ」


女性

「そういうものかあ……立派な手作りチョコはまだまだだなあ」


緒方

「何事も一歩ずつである」


「少しぐらいデコレーションしてもよいのではないか?」


大清水

「砕いたナッツとかドライフルーツとか色々持ってきたぞ」


緒方

「なるほど、それぐらいなら大丈夫だろうか。珍しく仕事をしたではないか!」


「我らは三位一体さんみいったいだからな!」


大清水

「緒方の手柄はみんなの手柄」


緒方

「それでは試しに、この型に入れたチョコレートに好きなナッツやドライフルーツを入れてみるとよい」


女性

「えー、何それ楽しそう!それじゃーあー……ここはナッツで……こっちはブルーベリーで……」


(間)


女性

「……できた!」


緒方

「素晴らしい!」


「おしゃれチョコレートの完成だな!」


大清水

「チョコレートたちも皆楽しそうで何よりである!」


女性

「最初思ってた、パァァーとか、ドドン! とかいう凄い感じじゃなかったけれど、これはこれでありかな?」


緒方

「そうだろうそうだろう。これが手作りの楽しさである」


「これにてこれにて一件落着」


大清水

「我らが仕事も一件落着」


女性

「いやほんと、ありがとうございます。結局誰だかわからなかったけど」


緒方

「礼には及ばぬ、お嬢さん」


「やるべきことをやったまで」


大清水

「おっと最後に一言を」


緒方

「お嬢さん!」


「手作りチョコを極めたければ!」


大清水

「いつでも我らを呼ぶがよい!」


女性

「緒方さんだけでよくない?」


緒方

「それでは我らは失礼する」


「チョコを作るならすぐに呼べ」


大清水

「デリシャス!!」


(3人、玄関から去る)


女性

「……何だったんだろう……。

 でも、初めて手作りチョコを完成させた……!

 彼、喜んでくれるといいなあ……」



──────────


緒方

O・T・O・3おとうさん!!!」


「それは悩める人の前に!!」


大清水

「助けを求めるあなたのそばに!!」


緒方

「いつでもどこでも駆けつける!!」


「次に我らが現れるのは!!」


大清水

「あなたのお家かもしれない!! それではこれにて!!」


緒方・轟・大清水

「失礼!!!!!」

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