クリスマスのお悩み ~少年と母とO・T・O・3タ~

───【登場人物(♂3:♀1:不問1)】───

緒方(♂)

轟(♂)

大清水(♂)

母(♀)

息子(♂少年)


───【本編】───

「ねえ、今年はサンタさんに何をお願いしたの?」


息子

「……何もおねがいしてない」


「え? サンタさんからプレゼント欲しくないの?」


息子

「いらない」


「またまたー、そんなことないでしょー? だってアンタ、1ヵ月前までは

 『ママー! この最新のゲーム買ってー!』ってうるさかったじゃない?」


息子

「……」


「……どうしたの?」


息子

「サンタさんはね、いないって」


「……えっ!? そ、そんなことないわよー!

 去年だって、朝起きたらサンタさんにプレゼント貰って──」


息子

「友達がね、

 『サンタって実はお父さんとお母さんなんだぜー!

  いまどきサンタを信じてるとか、だっせー!』

 って言ってたの」


「ええ……」


息子

「だから、いらない。サンタさんにはプレゼントをお願いしない。」


「そんなこと言わないの。ホントにサンタさん来なくなっちゃうよ?」


息子

「だからサンタさんはパパとママなんでしょ!?」


「うーん……」

(これは……どうしたものかしら……。

 サンタの正体を知るにはまだちょっと早い年齢だし、

 かと言ってここから何をどうすれば

 サンタのことをまた信じてくれるのかしら……?

 うーん……困ったわね…… 」


緒方

「お困りですか、奥様よ!(奥様よ)(おくさまよ)」


「!? 誰っ!?」


「お困りならば、いざ行かん!(いざ行かん)(いざゆかん)」


「どこ!? どこから聞こえてくるの!?」


大清水

「(遠くの方で)シャンシャンシャンシャン……」


(チャイム音)


「あら、パパが帰ってきたのかしら? ほら、出迎えにいきましょう。

 おかえりなさいパパ──」


大清水

ジンゴベェゥジングルベル!!」


「ヒッ!!」


緒方

「ウィーウィッ!!」


「シュアメリ!!」


大清水

「クリッスマース!!」


緒方

「オー!」


「ティー!」


大清水

「オー!」


緒方

「サンタ!」


「トナカイ!」


大清水

「大清水!」


緒方

「三人組ッ!!」


「略して我ら!!」


緒方・轟・大清水

O・T・O・3おとうさん!!! 」


「……は?いや、えっと……どちら様でしょうか?」


大清水

「見てわからぬか!」


緒方

「この真っ赤な服と白い髭、そして大きな白い袋!」


「立派な角と真っ赤なお鼻!!」


大清水

「そしてこの鍛え上げられた完璧な肉体美!!」


息子

「もしかしてサンタさんとトナカイさん!?」


緒方

「その通り!!」


「ご明察である!!」


大清水

「賢く育っているのだな! いい子だ!」


「最後の人は本当に誰ですか!?」


緒方

「何はなくともメリークリスマス!!」


「クリスマスにはみんなで一緒にケーキとごちそうに限る!」


大清水

「ということで我らからケーキとごちそうのお裾分けである!」


息子

「ケーキ!? やったあ!」


「ちょちょちょ、ちょっと待ってください! 見ず知らずの人からそんな、困ります!」


大清水

「(小声で)大丈夫である奥様よ。事情は分かっているし、旦那には話を通してある」


「あ、え、そうなんです? ……あの人、知ってたなら連絡くれればいいのに……」


緒方

「それではケーキのご開帳!!」


「本日のケーキはこちら!」


大清水

「モンブランケーキである!!」


息子

「やったあ! ケーキ大好き!!」


「……モンブラン?

 もっとこう、いちごのショートケーキとか、ブッシュドノエルとか、そういうのではなくて……?」


緒方

「クリスマスだからこそ! モンブランなのである!!」


「多分もっと別の良いケーキあると思いますけど!?」


「そしてこちらには、ます寿司!!」


「なんで!?」 


息子

「お寿司!? お寿司なの!わーい! おすし大好き!!」


「いや待って!? なんでわざわざます寿司を!?」


大清水

「これには深い訳がある」


緒方

「モンブランとは栗のケーキ」


「栗のケーキとますの寿司、栗のケーキと……鱒の寿司……」


大清水

「そう!! つまり!!栗と鱒クリとマス!!(※クリスマスのような発音で)」


「ダジャレ!?」


緒方

O・T・O・3おとうさんギャグである」


O・T・O・3おとうさんギャグである」


大清水

O・T・O・3おとうさんギャグである!!」


「3回言わなくていいから!」


緒方

「ぬぅん」


「お気に召さなかったようだな」


大清水

「そんなあなたにこちらの栗のちらし寿司」


「なんで!?」


大清水

「これには深い訳がある」


緒方

「ちらし寿司とはつまり酢飯」


「栗の入ったちらし寿司、栗の入った……酢飯……」


大清水

「そう!! つまり!!栗酢飯クリすめし!!(※クリスマスのような発音で)」


「また!?」


緒方

O・T・O・3おとうさんギャグである」


O・T・O・3おとうさんギャ──」


「それはもういいから!!」


大清水

「ぬぅん」


息子

「ママ! 今夜は豪華だね!」


「そ、そうね……」


緒方

「ときに少年よ」


息子

「なに?」


「サンタさんからプレゼント、欲しくないか?」


息子

「欲しい!! ……あっ、でも……お願いしてない……」


大清水

「そこは抜かりなし!」


緒方

「私はサンタであるがゆえ、少年の欲しいものはすでに分かっている! 安心するがよい!」


息子

「ホント!? やったあ!! プレゼントちょうだい!!」


「その前に!」


大清水

「少年が今年1年よいこであったかどうかをチェックさせてもらう!」


緒方

「サンタたるもの、よいこにしかプレゼントを渡せぬのでな」


息子

「よいこ……」


「それではここで、少年のよいこチェーック!!」


大清水

「ドンドンパフパフ~~!!」


「何か始まったわ……」


緒方

「少年よ! 学校は楽しいか!?」


息子

「えっ!? あの……えっと……」


緒方

「正直に答えてよいぞ! 嘘でごまかしたところで、サンタさんには全てお見通しである!!」


息子

「あっ……うん……正直……正直に言うと、勉強が難しくてあんまり楽しくない……」


緒方

「つまり勉強が難しくて楽しくなくても、頑張って学校に通っているということ!!

 つまり少年、よいこである!! よいこポイント1点!」


息子

「え、やったあ!」


緒方

「学校は勉強をするためだけのところではない。休み時間に友達と遊んだり、好きなことをして楽しむがよい」


「次である!

 少年よ! 宿題はやっているか!?」


息子

「えっ……と……、やってる時もあるけど……遊びすぎたりしたときは、ちょっと忘れることもあって……」


「よく遊び! よく学ぶ! その姿勢!今の時代を精一杯生きている証!

 つまり少年、よいこである!! よいこポイント1点!」


息子

「わ、わーい!」


「人間だれしも忘れることはある!  少しずつ改善できればよい! 頑張っていこうな!」


大清水

「次である!

 少年よ! 母の手伝いはしておるか!?」


「それはですね──」


大清水

「シーッ」


「えっ、あ、はい」


息子

「手伝い……は……できてない……です……

 遊んだり、勉強したりしてて……ごはんの時に呼ばれるから、

 みんなでご飯食べてる……」


大清水

「……」


息子

「おふろも洗ってないし、食器も片づけてないし、そうじも……」


大清水

「母の大変さを分かっており、手伝いをできていないことを反省できている!

 さらに、母の呼びかけに応えることができている!!

 つまり少年、よいこである!!

 よいこポイント1点!」


息子

「……ありがとう、ございます」


大清水

「今すべてを出来る必要などはない。少しずつでよい。自分なら何ができるか、ゆっくり考えよ」


緒方

「最後に!!」


「これまで9年間、立派に生きて成長してきた!!」


大清水

「多くの事を経験し、多くの事を学んできた!!」


緒方

「父と母の愛情を受け、すくすく育ってきた!!」


「つまり少年!!! まごうことなきよいこである!!!」


大清水

「よいこポイント3おくまんてん!!!」


「桁!」


息子

「やったあ!! 3おくまんてん!!」


緒方

「ということで、我々3人から少年へクリスマスプレゼントを贈呈しよう」


息子

「わーい! ありがとう!」


緒方

「まずはこれ! 今の少年にジャストフィット! 純白のブリーフである!」


「次はこれ! 5年後の少年に向けて! 黒のボクサーパンツである!」


大清水

「最後にこれ! いつか訪れる人生の勝負のために! ブーメランパンツである!!」


「何てものプレゼントしてくるんですか!? ああ息子がショックで固まっている!」


緒方

「3おく3点賞である!」


「これにてこれにて一件落着」


大清水

「我らが仕事も一件落着」


「ほら目を覚まして! サンタさん帰っちゃうわよ!」


息子

「あー、サンタさん、ありがとござます」


緒方

「礼には及ばぬ、少年よ」


「やるべきことをやったまで」


大清水

「おっと最後に一言を」


緒方

「少年よ!」


「プレゼントが欲しければ!」


大清水

「リビングの、こたつの上に置いてある!!」


「えっ……えっ!?」


緒方

「それでは我らは失礼する」


「来年もよいこにしていたら、その時にまた会えるだろう」


大清水

「アイムソーリー!!」


(3人、ドカドカと玄関から去る)



「……あ、最後の人……もしかしてO・T・O・3おとうさんギャグ……」


(息子、リビングから)


息子

「ママー! こたつの上にプレゼントある!!」


「はっ!? いや本当に知らないけど、なんで!?」


息子

「ママー! 最新のゲームあった!! サンタさんがプレゼントしてくれたんだ!!」


「ええ……!? 私たちはずっと玄関にいたから誰もいないはずだけど……

 ……本当に、サンタだったの……?」


息子

「サンタさーん! トナカイさーん! おおしみずさーん!

 プレゼントありがとー!」


(間。家の外にて)




緒方

「ハッピーメリークリスマス……」


「それでは我らも、それぞれのクリスマスといこうか」


大清水

「聖なる夜は家族団らん、家族で一緒にクリスマス」


緒方

「ホッホッホッホ…… 」


(3人、クリスマスの夜に消えていく)



──────────


緒方

O・T・O・3おとうさん!!!」


「それは悩める人の前に!!」


大清水

「助けを求めるあなたのそばに!!」


緒方

「いつでもどこでも駆けつける!!」


「次に我らが現れるのは!!」


大清水

「あなたのお家かもしれない!! それではこれにて!!」


緒方・轟・大清水

「失礼!!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る