8件目のお悩み ~オヤジ狩りとO・T・O・3~
───【登場人物(♂5:♀0)】───
緒方(♂)
轟(♂)
大清水(♂)
不良A(♂)
不良B(♂)
───【本編】───
不良A
「なあ聞いてくれよ」
不良B
「あん? どうしたよ」
不良A
「この間入った臨時収入あんじゃん」
不良B
「あー、あれね」
不良A
「ゲーセン行ったら全部無くなっててさ」
不良B
「ウケる。
お前あの金で欲しい服あるとか言ってなかったっけ」
不良A
「そうなんだよ。
せっかく入った臨時収入なのにゲーセンが全部持っていきやがったの。
はーマジクソ」
不良B
「まじウケる。自分のせいじゃねえか」
不良A
「お前の臨時収入余ってねえの? くれよ」
不良B
「ふざけんなよ。俺はちゃんと全部ファッションに使ったからよ」
不良A
「はークソ。マジふざけんな」
不良B
「お前だよ」
不良A
「っつーことでさ」
不良B
「おう。……やるか?」
不良A
「また臨時収入をさ」
不良B
「狩りに行くか?」
不良A
「狩りに行こうぜ」
不良B
「いいね。それじゃあとりあえず、そこらへん探すか」
不良A
「おっけ。よさげなオヤジいたら連絡頼むわ」
不良B
「うーぃ。
……お。おいおい、おいおいおい」
不良A
「あいあいあい」
不良B
「あれ。あのくたびれたリーマンのおっさん。どうよ?」
不良A
「お? ……あー、いいねえ。持ってそうだねえ」
不良B
「よっしゃ、じゃあゴーするか」
不良A
「おっけ」
(二人、道行くサラリーマンに声をかける)
不良A
「すいません、あの」
大清水
「? はい、何か」
不良B
「あの、僕ら、ちょっと困りごとがありまして」
不良A
「ちょっと協力してほしいことがあるんですけど、少しだけ、僕らに付いてきてくれますか?」
大清水
「それは、それは。私にできることであれば、協力しましょうぞ」
不良A
「ありがとうございます! 助かります!」
大清水
「ところで、付いてくる、というと?」
不良B
「ああ、ちょっとここでは話しづらいことなので、場所を変えてお話したいな、と思って」
大清水
「なるほど、そういうことでしたか」
不良A
「ささ、それじゃあさっそく移動しましょう」
大清水
「であれば、少しだけ連絡をさせていただきたく」
不良B
「連絡?」
不良A
「ああはいはい、どうぞどうぞ」
(大清水、スマホを取り出す)
大清水
「……あ、もしもし。私だが──」
(AとB、ひそひそ声で)
不良B
「連絡って、どこに連絡?」
不良A
「妻とか家族だろ。ちょっと人助けするから遅れるー、とかいうやつ」
不良B
「あー、なるほどね」
不良A
「それぐらいは分かれよ」
不良B
「いやー、でも俺たちそういうので親に連絡しなくね?」
不良A
「それもそうだわ」
大清水
「──ということで、よろしく頼む。」
(大清水、スマホをしまう)
大清水
「お待たせをしましたな」
不良A
「ああ全然! 大丈夫です! じゃあ行きましょうか!」
不良B
「行きましょ行きましょ! そうですねー……あそこの路地裏あたりで」
不良A
「そうしましょうそうしましょう! さ、さ」
大清水
「おっと、っと。」
(大清水、二人に連れられて路地裏へ)
大清水
「ふうむ。確かにここならば、周りに人が居ない」
不良B
「そうなんですよー。で、困ってることなんですけどー。」
不良A
「実はァー……俺たちィー、お金がなくてェー。」
不良B
「そーそー。んでね、おっさんの財布を俺たちに渡してくれねえかなあ、って。」
大清水
「な、なんと」
不良A
「ハッハァー! ビビってんの!」
不良B
「悪いねぇおっさん。でもねえ、俺たちも痛い目にあわせたいわけじゃないんだわ」
不良A
「そうそう。別に財布ごとじゃなくてよくて、中にあるお金だけ全部渡してくれればいいからさ」
不良B
「逃げようったって後ろは行き止まりだし?
人通りは少ないから助けは来ねえし?
諦めてくれたほうが楽だと思うけどなあ?」
不良A
「なあおっさん……俺たち『困ってる』んだよ……! 」
緒方
「お困りですか、若人よ!(若人よ)(わこうどよ)」
不良A
「は!? 何!?」
轟
「お困りならば、いざ行かん!(いざ行かん)(いざゆかん)」
不良B
「どこ!? どこから!?」
大清水
「おおーい! こっちだー!!」
不良A
「は!?」
不良B
「お、おい! 後ろ!」
(不良二人の後ろに立つ緒方と轟)
緒方
「お金が少ない若人よ!」
轟
「小遣いが欲しい若人よ!」
大清水
「我らがなんとか致しましょう!」
緒方
「オー!」
轟
「ティー!」
大清水
「オー!」
緒方
「緒方!」
轟
「轟!」
大清水
「大清水!」
緒方
「三人組ッ!」
轟
「略して我ら!! 」
緒方・轟・大清水
「
不良A
「このおっさん、いつの間に仲間呼びやがった!?」
不良B
「さっきじゃねえのかよ! ほら電話してた」
不良A
「ハァ!? じゃああの時にバレてたって言うのかよ! ふざけんなよ!」
緒方
「待たせたな大清水!」
轟
「遅くなったな大清水!」
大清水
「全く問題ないぞ! ちょうどこの二人の若人の悩みを確認していたところだ!」
不良B
「……ん?」
緒方
「お金が無いのか若人よ」
轟
「小遣いが欲しいのか若人よ」
不良A
「なんか、雲行きが怪しくない?」
大清水
「両親から十分な小遣いも与えられず、毎日毎日その若さにしては寂しい生活を強いられているのだろう若人よ」
不良B
「飛躍したなあ」
不良A
「ただの遊ぶ金欲しさなんだけどなあ」
大清水
「しからば!!!」
不良B
「うわびっくりした」
大清水
「この我らが! なんとかしてしんぜよう!!」
不良A
「え、あれ? 結果オーライ?」
不良B
「ま、まあ? あれ?」
緒方
「大清水がよいのであればよいだろう」
轟
「よいではないか、よいではないか」
大清水
「困った者の頼れる味方、それが我ら
不良A
「えっへ、いいんすか」
緒方
「だがしかし!」
轟
「ただ与えるだけでは味が無い」
大清水
「少しばかり、趣向を凝らそうではないか」
不良B
「は?」
不良A
「落ち着け。機嫌取っとけばあっちから金くれるんだぞ」
大清水
「今回お送りするのは我が社の幻の宴会芸!
その名も!『財布の中身は何だろなゲーム』!!!」
緒方
「ヨッ!!」
轟
「太っ腹!!」
不良A
「……え、何?」
緒方
「説明しよう!
まずは回答者が、財布の中身に入ってそうな金額を答える!」
轟
「その金額が財布の中に足りていたら、財布の中から回答者へのお小遣いになるのだ!」
大清水
「1万円と答えて1万円入っていたら財布の中から回答者へ1万円が移動するわけだ」
不良B
「やっべ何それ、楽しそう」
緒方
「だがしかし!」
轟
「財布の中身より大きい金額を答えてしまうとその回は獲得賞金0となる!」
大清水
「1万円入っていなかったらと言って、財布の残り全てが貰えるわけではないのだ」
不良A
「はーん。ギリギリを狙うゲームってわけだな」
大清水
「ということで、だ。まずは誰の財布で遊ぶか選んでもらおうか」
不良B
「え、財布を選ぶって、こっちの
緒方
「緒方!!」
不良B
「うわびっくりした。名前じゃねえよ見た目だよ。
こっちの土方のおっさんと、そっちのキャラもののエプロンした」
轟
「ジャスティスヒーローウォリアーである!」
不良B
「知らねえよ!」
不良A
「知らねえの!?」
不良B
「知ってんのお前!?」
轟
「園の子供たちに大人気である」
不良B
「知らねえよ。ジャスティスなんたらのエプロンしたおっさんと、あんたの3人の誰かの財布ってこと?」
大清水
「いかにも」
緒方
「財布選びからゲームは始まっているのだ」
轟
「お金持ちそうな人物から財布を選択するのだ」
不良B
「それはもう、そこのサラリーマンの」
不良A
「待て。ここはだな……
ねえおじさんたち、財布見せてよ」
不良B
「いや見なくても分かるっしょ」
不良A
「バッカおまえ、財布の種類とか、パンパン具合とか色々あるだろうが」
不良B
「あー、ね」
大清水
「良かろう。それでは財布のご紹介タイムだ!」
緒方
「緒方の財布はがま口財布!」
轟
「轟の財布はマジックテープ! ジャスティスヒーローウォリアーグッズだぞ! ビリビリー!」
大清水
「そして私が大清水! 財布は本革」
不良A
「お前だーーーー!!」
不良B
「お前だーーーー!!」
緒方
「緒方か?」
不良A
「違う!」
轟
「轟か?」
不良B
「違う!」
大清水
「まさかこの大清水ではあるまいな」
不良A
「お前だーーーー!!」
不良B
「お前だーーーー!!」
不良A
「サラリーマンでおっさんで本革財布なんて間違いようがねえだろうが!!」
大清水
「よーしそれでは私のこの本革財布がターゲットだ!
回答権はそれぞれ2回ずつ!
さあどちらから回答するかね!?」
不良B
「貰った金は財布から減るんだよな……じゃあ最初に回答した方が多くの金を貰える……?」
不良A
「どっちでもいいだろ。どうせ山分けするんだから。な?」
不良B
「え?」
不良A
「え?」
不良B
「え?」
不良A
「……え? お前、まさか」
不良B
「ハイハイ俺一番! 俺!」
不良A
「ちょ待てお前! おい! 聞け話!」
不良B
「俺オレ! 俺から! 10万!」
不良A
「なーちょっまお前!! ふざけんなマジで!!」
大清水
「ファイナルオトーサン?」
不良B
「えっ」
大清水
「10万円、ファイナルオトーサン?」
不良B
「ええ……ふぁ、ファイナルオトーサン」
大清水
「ぬぅん……」
不良B
「……」
大清水
「……」
不良B
「……」
大清水
「残念!!」
不良B
「ああああああ!!」
不良A
「ッッッッシャ!!! よっしゃ次は俺だな。じっくり考えよう」
大清水
「なお公平にするために2回目と3回目は同じ回答者とする」
不良A
「ヨッッッッシャ!!」
不良B
「はああああ!? 先に言えよそれ、ふざけんなよ!」
不良A
「それじゃーあー、ゆっっっくり考えようかなーー」
不良B
「山分けだろ?」
不良A
「ハァお前さっきの態度見せた相手にそれ言う?」
不良B
「チッ」
不良A
「あのナリ……あの財布……さすがに10万は無かったとしても……
……よし! 5万!」
大清水
「ファイナルオトーサン?」
不良A
「当たってれば少なくとも半分以上は貰えるしな。ファイナルオトーサン!」
大清水
「ぬぅん……」
不良A
「……」
大清水
「……」
不良A
「……」
大清水
「残念!!」
不良A
「んなぁくっそ!」
不良B
「はっ、ざまあ」
不良A
「いいし、まだあと1回あるし。
……5万もダメ……3万……いや2万……もしかして万以下ありえるか……?
回答あと1回だし……ああー、しゃあねえ! 堅実に行く! 5千円!」
不良B
「チキンじゃん」
不良A
「うるせえな別にいいだろ。そんなん言うならお前この後大金行けよ」
大清水
「ファイナルオトーサン?」
不良A
「ファイナルオトーサン!」
大清水
「ぬぅん……」
不良A
「……」
大清水
「……」
不良A
「……」
大清水
「残念!!」
不良A
「はあああ!?」
不良B
「ええ5千円も持ってねえの!? 嘘ついてない!?」
緒方
「ゲームが終わった後に財布の中身は公開しよう」
轟
「これは健全なゲームなのである」
不良A
「金賭けてる時点で健全もクソもあるか!」
不良B
「5千円もねえのか……なんかもうつまんねえな。じゃあもういいよ500円で」
大清水
「ファイナルオトーサン?」
不良B
「はいはいファイナルファイナル」
大清水
「残念!!」
不良B
「はええな!!」
大清水
「回答終ーーー了ーーーー。なお答えは0円。財布の中身はカードと名刺。時代はキャッシュレスである」
轟
「おそらく現金で最も多く持っているのは緒方である」
緒方
「私は現金主義なのでな」
不良A
「はーーーー? クソやんクソクソ。クソゲー。」
不良B
「言ったじゃん。最初から力づくで良かったんだって」
不良A
「そうだなー。じゃあおっさん俺ら今からその財布の中身のカード全部貰うから。無理やり。」
大清水
「暴力行為に出るというのか?」
不良B
「おっさんがつまらんことするのが悪いんだよ」
緒方
「我らも居るが?」
不良A
「あ」
轟
「我らの同胞に危害が加わるのであればだまって見ているわけにはいかぬ。」
緒方
「普段の業務で運ぶ重量物で鍛えられたこの腕力! そして脚力!」
轟
「子供二人を腕にぶら下げて3周以上回転できるこの腕力! そして脚力!」
大清水
「そして若人よ。スーツ姿の私を甘く見ているが私も脱いだら細マッチョ」
轟
「こんな我らと相手をできるというのか!?」
大清水
「正当防衛待ったなしだなあ!」
緒方
「年頃の若人とくんずほぐれつくんずほぐれつ」
不良A
「チッ! 逃げるぞ!」
不良B
「いや囲まれてるだろ! どこに!」
轟
「何もせずに逃げるというなら追わぬが」
不良A
「ほら優しい! 畜生! 覚えてろよ!」
不良B
「あ、待て! おい! ち、ちくしょう!」
(二人、街に消えてゆく)
緒方
「これにてこれにて一件落着」
轟
「我らが仕事も一件落着」
大清水
「おっと最後に一言を」
緒方
「若人よ!」
轟
「小遣いが欲しいのであれば!」
大清水
「まずは社会に出るといい!」
緒方
「聞こえておらぬがもしれぬがな!」
轟
「なあに、心には届いているだろうよ」
大清水
「二人とも、仕事場から駆けつけてくれて感謝する。」
緒方
「気にするでない。我らの仲ではないか」
轟
「我らはいつでも三位一体だからな」
大清水
「そうだな。よおし、それではこのまま飲みに行くとするか!」
(三人、街の雑踏に消える)
──────────
緒方
「
轟
「それは悩める人の前に!!」
大清水
「助けを求めるあなたのそばに!!」
緒方
「いつでもどこでも駆けつける!!」
轟
「次に我らが現れるのは!!」
大清水
「あなたのお家かもしれない!! それではこれにて!!」
緒方・轟・大清水
「失礼!!!!!」
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