第194話 旅の準備
「あそこはわりとゴツい岩があるからサンダルを履いたまま入る方がいいぞ」
「はーい、俺が人数分用意するよ」
「ミレナさん、ごめんなさいだけどあの子達の水着を大人サイズからリメイクで作るからサイズを測ってくれる?」
「分かったわ」
「カナタ氏! お優しい!」
「あの子達だけマッパで露天風呂に入れる訳にいかないから」
「やや事案っぽくなりますな」
「カナタさん、何かお手伝いはいりますか?」
「私も」
「ミラちゃん、ユミコさんありがとう、でも多分小人出るから大丈夫」
「あ、そういえば小人がいましたね」
とか何とか、賑やかに楽しくプチ旅行に行く準備をする俺達。
遠足も準備が楽しいからな。
「ところで昼食はどうするの?」
「そばかうどんでいいか?」
「じゃあソバー」
「ならソバでいい」
「ぼくも〜」
「拙者も!」
海老天を揚げて、薬味はネギと柚子胡椒でざる蕎麦を食べた。
つるりとした喉越しの美味しい蕎麦だ。
皆も美味しそうに食べていた。
あ、犬耳っ娘の二人は箸に慣れてないからフォークで頑張っていた。
パンもあるよと言ったけど、頑張って皆と同じ蕎麦を食べてた。
デザートはソフトクリーム。
うまうま。
「なにこれ、おいしい!」
「甘い、美味しい、溶ける……! なくなる!」
「それは口の中で溶けてなくなるものだから」
これもやはり犬耳っ娘達には初体験の味なので、すんごく驚きつつ、美味さに感動してた。
そして食後もカナタは新しく水着を二着仕上げる為、布を切ったり、紐を切ったりと忙しくしてた。
猿助さんの水着は大人用男物の未使用の予備があるから大丈夫。
普通よりやや痩せ型だし、普通に入るのがある。
俺はミレナと子供たちを連れて子供用のサンダルと服を近くの店に買いに行った。
猿助さんは宿で留守番というか、せめて少しでも労働をすると言って、動画編集をしてくれるそうだ。
俺達は買い物を終えて帰った。
夕食は焼き肉。
宿の裏庭を借りてバーベキューだ。
「このネギ塩上タン、最高でござるな! 厚みがたっぷりありながらも、簡単に噛み切れるし、塩胡椒のシンプルな味付けなのでもりもり食べられるでござる」
「ほーん、なるほど、いい肉なのね」
もぐもぐと、ミレナもよく味わって美味しく食べているようだ。
そして最近ゲットした氷スキルも使って冷やしたビールをも堪能する。
「何しろ上でござるゆえ」
そうなんだよ、俺はいい肉を買っていた。
犬耳っ子達もヒレ肉を口に入れた途端、目を見開いて、
「こんな柔らかくておいしいお肉はじめて」
「おいしい」
と、シンプルな感想だったが、とても幸せそうだった。
ちなみにこの子達の名前だけど、ステラとスピカと言うらしい。
偶然なのか星の名のようだ。
いい名前である。
夕方には宿の近くにある風呂屋に行って、ゆっくり温まった。
今回は女風呂の方に犬耳っ娘の二人もいるからミレナも淋しくはないだろう。
風呂から上がったら魔法の風呂敷から俺は定番商品を出した。
「どちらを飲みたい?」
「俺は茶色いの」
「ぼくもコーヒー牛乳」 「拙者も」
「私はフルーツ、この子達もフルーツで良いでしょ」
そんな訳で男達はコーヒー牛乳、女性陣はフルーツ牛乳を美味しく飲んだ。
様式美だよ。
* * *
翌日の朝には犬耳っ娘二人の水着も完成していた。
黄色と水色のビキニタイプの水着だ。
サイドが紐のやつが一番楽に作れるらしいので。
それにしても、予備の新品水着を持ってて本当によかった!
あ、カナタも水着は流石に男物を着る。
おっぱ◯がないもんな。
パットを入れるって手もあるけど。
犬耳っ娘はジェラルドとミレナがルルエに二人乗りで運ぶ事にしてる。
ラッキーはカナタの背中に器用に張り付いて乗ってる。
ミラは俺のリュックの中、ユミコさんは猿助さんのリュックの中に入って、皆で春風が心地良く吹き抜ける中、ルルエの背に乗り、しばらく山や野を移動し、しばらくして海辺の港町に到着した。
そこには冒険者や商人、船乗り達が集い、大きな帆船が悠然と海に佇んでいた。
「そろそろ出港でーす!」
ルルエから降りて近くの土産物屋で買い物をしていた俺達は手綱を持ち、ぞろぞろと乗船する。
「イカリを上げろ〜」
船乗りの声が周囲に響き、帆船は風を受け、白波を立て進んで行く。
甲板では神楽舞を見た人達がいて、ミレナが囲まれたりしてた。
「あの、先日の神事を見ました!」
「舞手の方ですよね!」
「とてもキレイでした! あ、今もキレイですけど!」
「見たこともない衣装を着られてましたね! とても優雅で綺麗で、ファンになりました!」
「ああ〜それはどうも……」
ファンができてる!
ミレナも邪険にはできなくて、珍しく何かタジタジしてる。
俺はフードを目深に被って口元も布で覆ってから乗船し、一般人のふりをしてるからセーフ。
そして潮風に吹かれながら船は目的地まで進んでいく。
神楽舞の効果か何かは知らないが、魔物の遭遇は無かった代わりに、イルカがいた。
「白イルカがいるわね」
何とかファンの囲いから出て来たミレナが海を指差して言った。
「おお! 白イルカでござるか! これは幸運!」
イルカ遭遇ではしゃぐ猿助さんを見て、船旅を楽しめてて俺は良かったと思った。
カメラでのイルカ撮影も忘れてないしな。
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