第188話 春のイベントらしく演出準備


「さーてと」


 俺は体をほぐす為に一つ伸びをして、アイスクリームの冷蔵庫も魔法の風呂敷から取り出して設置した。

 電力はソーラーパネルのでなんとかなるだろ。

 なると信じたい。


 ふと、周囲を見渡すと、七分咲きの桜の間、公園内に塔が建っている。

 鐘を鳴らせるやつかな?

 などと考えていたら黒板の看板を用意してるカナタが声をかけてきた。


「翔太、今回の目玉商品とかなんかある?」


 ちなみにカナタは本日は女装をしてない、神殿関係者に会うからだ。

 性別をなんのために偽っているのですか? とか問われたら趣味ですとか言いにくいもんな。


「桜……ピンクフラペチーノとアイスとエルフの美女の手作りサンダル三つとか?」


 他はいつもの雑貨や弁当などがある。


「でもそのサンダルは特殊効果とか別にないよね?」


「美女エルフが作ったってだけで価値があると思うんだよ」

「そ、そう? じゃあそれだけオークション形式にする?」

「そうだな、一番値段つけてくれた人に売ろう、エルフマニアの人とかが買うかも」


「翔太氏、テーブルに敷く敷布は商品ごとに変えるのでござるか?」

「あ、うん、弁当とかパンとかの食べ物が赤い敷物、アクセサリーは光沢のあるベロアみたいなピンク色のやつ」

「了解でござる」


 猿助さんも準備を手伝ってくれている。

 一旦布を敷いて箱も置いても本番は三日後なのでホコリなどがつかないよう、上からビニールシートもかける。



「聖者様、準備は順調ですか? 何かお手伝いすることはありますでしょうか?」


 急に神官が、声をかけてきた。


「あ、えーと、あ、あそこに塔がありますね」


 俺は公園内に塔があるのをさっき見つけて少し思いついた事がある。



「はい」

「あそこは私どもが登ってもいいものですか?」

「はい、問題ないです」

「では花を、集めていただけますか?」

「はい? なんの花をですか?」


「あの塔の上から神楽舞を見に来てくれた人たちに花を撒きたいと思いまして、私が祝福した花を。花の種類はなるべく丈夫な花なら何でも良いです」


 上から投げた時に花びらが全部取れたら残念な事になるから。


「おお、それはいいですね。皆、喜ぶでしょうし、すぐに花の手配をいたしましょう」

「あ、それと、花を配る時に鐘も鳴らしてもいいですか?」

「はい、聖者様のお望みのままに」


 神官は嬉しそうに笑った。

 こういうイベントごとがわりと好きなのかもしれない。

 普段は修行的なことばかりなのかな?

 知らんけど。



 そして俺達は地道に準備を進めていった。



「ところで翔太、今夜の宿は?」

「神殿に泊まっていいらしい」

「ぼく達も?」

「そう、皆だよ」


「食事は?」

「内容は分からんが、精進料理みたいなのが出るかもな」

「まあ、たまにはデトックスみたいな食事も良きかと」

「そうだね~」



 などと話していたが、神殿が用意してくれた食事は普通にお肉も出てきた。

 パンとワインと鹿肉と果物など。


 大きく長いテーブルに白いテーブルクロスがかけられて、蝋燭も立ってるし、中世の食卓な感じが絵になる。

 しかし流石にここでカメラを回すのは雰囲気ぶち壊しなので諦めた。



 食事中はここの神殿の一番偉い大神官が俺に話しかけてくる。



「鹿は適度に間引かないと森が死ぬので猟師が供物として神殿に捧げに来てくれるのですよ」

「なるほど、そうなんですねー」


 などという会話をしつつ和やかに会談。


「花の他にもお手伝いすることはありますか?」

「当日は販売や会計を手伝ってくれる方もいますか?」

「はい、巫女を数人手配します」


「ありがとうございます。売上の三分の一は神殿に寄付しますので何かに使ってください」

「それはそれは、ありがとうございます」



 神殿って言えば寄付だもんな。

 これで機嫌が取れるなら良いだろう。


 そうして和やかに神殿での食事を終えた。


 ミレナやジェラルドや猿助さんやカナタも同席していたが、皆緊張していたのか、一言も喋らなかったけど。


 食事の後にそれぞれ寝る部屋に案内されたが、皆何故か俺の部屋に一旦集まった。


「あー、拙者食事のマナーが分からずに緊張したでござる」

「だねー、ぼくもだよ」

「食べた気がしないわ」


「ミレナさん、夜食いる? 菓子パンかおにぎりで良ければあげるよ」

「ありがとう、カナタ」


 カナタはミレナの為に魔法のカバンからパンやおにぎりを出した。


「狐娘、ベッドで食べてパンくずなど落とすなよ。そんな事をすれば聖者一行の品位が下がる」

「分かってるわよ」



 ジェラルドがミレナに親のように注意してる。

 そしてミレナは女の子なので当然別の部屋で一人で寝るので、夜食だけもらって自分に割り当てられた部屋に戻って行った。


 それから風呂の準備が整いましたと神官が部屋に告げに来た。


 でも俺だけ一人、特別なとこで湯浴みらしい。

 ちょっと淋しいが仕方ない。


 神楽舞の本番は三日後。

 ジェラルドの天気予報によると、神楽祭が終わるまでは晴れのようでよかった。


 神楽舞の話は世間にも既に広まってるので、貴族達も続々この地に集まって来ているらしい。

 経済効果も出てるとか聞いた。

 さり気なく経済を回していたので、俺、多少はえらいかも。










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