第172話 エルフと物々交換
川辺でキャンプして、またエルフの里の近くの泥沼を通りかかると、ビオラちゃんが穴掘りしてその罠にかかった魚を必死でつかみ取りをしていた。
出口をまた泥で塞いで逃げ場を無くして。
2箇所の罠でなんと15匹の収穫! なかなかのものだ。
捕れていたのはナマズっぽいやつとかソウギョっぽいやつ。
ビオラちゃんは魔法で泥まみれの体を自分で綺麗にしてた。
俺はカゴに入った魚を見て言った。
「ビオラちゃん、それ、自分で食べるんじゃなくて大人に預けて売るって話だったよね?」
「うん」
「じゃあ俺が買い取ろうか?」
「いいの?」
「うん、人間の使うお金と交換するのと綺麗な布やアクセサリーだと、どちらが嬉しい?」
「布とアクセサリー!」
やはり女の子だな。
俺はキャンプ道具のテーブルを魔法の風呂敷から出し、テーブルの上に品を並べた。
「ほら、好きなのを選んで」
「わあ! このレース、とても綺麗! こっちのすみれの髪飾りもかわいい!」
「お目が高いね」
ビオラちゃんは目をキラキラさせて俺の並べた商品を見てる。
「……この布はとても肌触りがいいけど、柄はこちらの花柄がかわいい」
「このレースとこれとこれにアクセサリーをつけようか?」
「そんなにいいの? この魚、わりと大きいけどたいして美味しくはないと思う」
「いいよ、美少女が頑張って取ったってとこに価値があるんだ」
「ふうん」
お外で大人エルフが換金に行ってなんかあるといけないからな。
大人の男エルフでもとても美しいから、少し心配。
「あ、ここにいたのね。ビオラったらまた泥まみれになって遊んでたの?」
大人の女性のエルフだ! 美女!!
イメージ通りスレンダーだな、胸はあまりない。
手にはサンダルを3つほどぶら下げている。
「ナディアだ! 私はお魚獲ってたの!」
「その布とかは?」
俺がテーブルの上に並べた商品を大人のエルフさんが見た。
ナディアさんと言うのかな?
「このニンゲンがお魚と交換してくれるって!」
「まあ!」
女性なので綺麗なものに目がいくようだ。
「ここに私の作ったサンダルがありますけど、こういうのは交換できるかしら?」
「もちろんですよ! エルフの美女の手作りサンダルだなんて、素晴らしい!」
「ところで何でサンダル持って歩いてたんですか?」
カナタが素朴な疑問をぶつけた。
「このサンダルを物々交換に出そうと思って村を歩いてたら、そのビオラの親にそろそろお昼の食事の時間だと呼んで来てほしいと頼まれたの」
「あ、お昼!」
「じゃあビオラちゃんの方はこのお品と魚を交換でいいかな?」
「うん!」
俺はテーブルの上に新しく商品を補充した。
「まあ、増えたわ!」
「このスモーキーな花柄の布、人気ですよ、大人っぽくて」
カナタがセールストークをはじめた。
「そうね、花柄だけど派手すぎずいい感じね」
「生地も軽くて不思議」
「伸縮もします!」
「今ならワンピースの型紙もつけましょうか?」
「私は今、手持ちがサンダル三つしかないのよ」
「そのサンダル三つでいいですよ!
あと、写真いいですか!?」
「シャシン?」
「このように魔道具で撮影を」
俺は写真の現物を見せつつざっくりとカメラの説明をした。
「まあ、生き写し……別に魂を取られてるわけじゃないわよね?」
昔の人みたいな事を言われた。
「もちろんです! ここのミレナやカナタもジェラルドも写ってますが、元気にしてますよ!」
「なるほど……なら、いいわ」
ナディアさんも元気にしてる三人を見て納得したようだ。
俺はスモーキーな花柄の布と金木犀のイヤリングと藤の花のかんざしを差し出してサンダル三つとナディアさんのお写真を撮らせていただいた!
そしてホクホク顔でナディアさんはビオラちゃんと共に村に帰って行った。
「さて、俺達も帰るか!!」
「おー」
「「はーい!」」
俺達は徒歩、チャリ、馬車、船等を乗り継ぎ、地元の伯爵領に帰った!!
「さて、次は仕入れしてから神楽舞のステージだな!」
「あー、そういうのもあったわね」
「ミレナ、忘れないでくれよ!」
「ソフトクリーム仕入れて来てよ、そこそこ暖かくなってきたし、あるでしょ?」
「ああ、分かったよ」
「翔太、神楽舞の時にも何か売るの?」
「ああ、せっかく人が集まるからな」
「そっか、資金もいるし、動画編集も頑張るね」
「ありがとうカナタ! そんでミレナは俺達が仕入れに行ってる間は神楽舞のおさらいでもしててくれよ」
「ハイハイ」
「じゃあ俺はまたしばらく森の賢者の家に帰っているからな、良ければ充電がてらドール達も預かろう」
「ありがとう、助かるよジェラルド」
「私はじゃあラッキーを預かってあげる」
「お、ミレナもありがとう!
二人ともと、ラッキーもいい子にしてるんだぞ」
「ワフ!」
「「はい!」」
また日本で、カナタと仕入れを頑張ろう。
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