第171話 動画クリエイターとして
俺達は目覚めてテント設備などを回収し、スノードロップの群生地からやや離れて川に来た。
「石川のガス海老の石焼きってのがさ、確か熱々の焼いた石の上に置いて半生で食うのが美味いっていうやつがあったんだよ。
まあ、今もあるとは思う。
そんでこのエビの尻尾引っ張ると三十分かけて尻尾を石の上に置いておくとカラカラになって尻尾も食べられるっていう」
「つまり、翔太が何が言いたいかと言うと、
川エビを採って焼いて食う?」
そう、俺達は朝食を食べに川に来たのである。
しかも食材を採るとこから。
「それ! まあ、あれとは違うエビだから半生じゃなくてしっかり焼こうと思う」
流石にカナタは察しがいい。
まあ、俺がエビ取り用の網を魔法の風呂敷から出したとこでなんとなく察せると思う。
「あ、あそこ! クレソンとセリを見つけた!」
「でかした!」
カナタが川でクレソンとセリを発見した。
「根っこは残して上だけ採るんだぞ」
通りすがりの銛を持つジェラルドが一応注意する。
「はーい! 他の人が採れるよう根っこは取りません!」
カナタも元気よく返事をした。
「でもフライパンじゃなくて石を使うってことなの?」
ミレナもガサガサで使う網を構えてエビを探してくれてる。
「そう、なんかやってみたいから。普通にフライパンでエビ焼いても絵面が面白くはないし」
「絶対に普通に焼いたほうが早いけど」
「ミレナ、速さは求めていないんだ」
「しょーがないわねー、あー、水が冷たい!!」
早春の川の水が冷たいと嘆きつつもガサガサと草の下の網をツッコミ、獲物を捕るミレナ。
カナタがザルを抱えてガサガサしつつエビを探す俺の元に来た。
クレソンとセリがしっかり収穫されている。
「そういや漁師飯も石を焼いて岩の窪みで食べるって奴があるんだよな」
「岩の窪みは洗浄がいるんじゃない? 煮沸しても微妙な感じしない? 道具が足りないサバイバル時なら仕方ないけど」
「やる時は岩もしっかり洗うよ!」
「すっかり動画用の絵面の面白さ優先の人みたいになってる〜」
「大丈夫、岩からすするのは俺だけでいい、皆はちゃんと鍋から食っていい」
「謎に頑張るね」
「謎ではなく、お金の為、あちらの方がお金稼ぎ大変だし、家だの車だの大きな買い物を立て続けにしたし、あの伝説のえちちCG集がいつまで売れるかも分からんし」
「もはや伝説なんだ」
「凄く売れたから、絵がリアルだし。実は実写の画像加工だからリアルなのは当然なんだ」
「ねー、川エビは石で焼くほど大きくないわよ!!」
「……仕方ないなぁ、じゃあ川エビは油で揚げる料理にしよう!」
「じゃあエビの石焼きは諦めるのね!?」
「石焼きはスーパーで買ったブラックタイガーっていうエビを使う!!」
「!? ショータちょっと! この冷たい川に入ってわざわざ川エビを捕る意味はあったの!?」
ミレナは今日は川に入るのでエプロンドレスではなく、いつものショートパンツ姿である。
「ミラが撮影してくれてるから川エビを探す動画になる」
ミラは今もカメラマンをしてくれてる。
ドールボディはなるべく水に浸けたくないからな。
そんで俺も一応冷たい川に一緒に入っているんだよ。
動画の為に網を手にしてさ。
「んもー!」
川の水の冷たさもあって憤慨するミレナ。
怒ってても顔がかわいい。
「後であったかいホットココアを淹れるから許してくれ!」
「むー、しょーがないわねぇ!」
なお、ジェラルドは銛でなかなかのサイズの魚を獲っていた。
優秀。
種類はヤマメみたいな魚だった。
その後、春の川辺で鳥の囀りを聞きながら朝食ピクニック。
ホットココアを飲んだり、川海老を揚げたり、ブラックタイガーを石で焼いて美味しく食べたり、ジェラルドが銛でついた魚を塩焼きにして食べたりした。
そしてワカメおにぎりも一緒に食べた。
あの学生時代のワカメご飯を思い出す。
とても美味しかった。
給食はワカメご飯と唐揚げが美味しかったんだよなぁなどと過去の思い出に浸りつつも、食事中の動画とかもしっかり撮った。
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